自分を幸せにする覚悟がありますか?
どのような人であれ、ひとりになるよりはマシだと思ってしまうとそうなるのです。
この心理学講座では4回にわたり、執着のメカニズムと手放す準備についてお届けします。今回は第3回目です。
◆あの恋を手放すのが難しい理由その3:次に進むことへの怖れ
執着とは、別れた彼に「どうしてもあなたがいいの、行かないで!」と両手でしがみついているような心理状態です。
実際にクッションなどを彼に見立てて抱きついてみるとわかりやすいのですが、しがみついているときには、彼しか見えない状態になっています。視野が狭くなっているので、どんなに素敵な人が目の前を通っても気がつくことすらできません。
執着はこれしか見えていない状態、これしか選択肢がない状態です。そもそも選択肢などないのです。だって、これひとつ(彼)しかないのだから、他に選びようがない。でも、これを手放してしまうとゼロになってしまうから、何もないよりはマシだからしがみついてしまう。
相手はどのような人であれ、ひとりになるよりはマシだと思ってしまうところが、私たちにはあるようなのです。
◆ちっとも大切にしてくれないのに、なぜ執着をするの?
相手がどんな人であれ「こんな私を愛してくれる人は彼しかいない」と思うと、手放すことができなくなります。彼といる間だけは「私を愛してくれる人がいる」ような気がするので、それを手放したくないのです。
「こんな私を愛してくれるのは彼だけ」という観念を辿っていくと、「親に愛されなかった私」というルーツに辿り着くことがあります。
親に愛されなかったという思いがあると、多いケースとしては「愛してくれない人からの愛情をもらうことに執着をする」「愛しにくい人を愛することに執着をする」という形で出ることがあります。
親に愛されたかったという執着心が残っている分だけ、いま目の前の関係性への執着となって再現されることはとてもよくあることです。つまりは、ほしくてもらえなかったものへの執着があるということになります。
しかし、私たちはどこかで「親に愛されなかったのは、自分が悪いからだ」と思っています。だからこそ「私に悪いところがあるのならば、全部直すからそばにいて!」と、自分を責めながら相手にしがみつくのです。なんともせつない話です。
◆執着があるときには、次に進むことへの怖れがある
もう一度、さきほどのようにクッションを抱きついてみるとわかりますが、しがみついているときには、次の冒険に出かけないで済んでしまうのです。冒険は「次の恋」のこと。いま手元にあるものを手放してしまったら、次の新しいものが手に入るとは限らないので、冒険に出かけられないのです。
ここで知っておいてほしいのは、手放すことの目的は「幸せになること」です。多くの人は、手放すと不幸になると思うからしがみついています。
私たちは、別れるか別れないか、やり直すかやり直さないか、離婚するか離婚しないかなど、目先の相手との関係性に執着をしがちです。しかし、本当に執着すべきは「あなたが幸せになること」なのです。そう考えてみたときに、ときには別れを選ぶことが幸せへの道筋になることもあるのです。
幸せになる方法はいくつでもある。そう思うことが選択肢を作るということです。ここまで男女関係を例にして話してきましたが、すべてにおいて共通して言えることです。
仕事、会社、生き方、考え方など、わたしたちはいろいろなものに執着をします。うまくいっているときにはそれで良いのです。かつてうまくいっていたものだからこそ、私たちは執着をします。
かつてはうまくいっていたものが、状況や環境や時代が変わったことにより、どうにもうまくいかなくなったときに、他の生き方、他の考え方、他の選択肢はないのかな?と視野を広げてみることが手放しなのです。
執着を手放す目的は幸せになること。執着をしているときには「これ一択」しかなくて視野が狭くなっています。しがみついているその手をゆるめて、少し離れてみることで、ようやくまわりをキョロキョロと見回すことができます。
じつは執着があるときには、究極の選択を迫られています。「自分を苦しめる生き方を手放して、自分をちゃんと幸せにする覚悟がありますか?」と。執着を続けることは、幸せになりたくないと思っているのと同じだからです。
(続)
- 失恋、あの恋を手放せない本当の理由はなんだろう?
- 別れた恋人のメールアドレスを消去できる、できない?
- ちっとも私を大切にしてくれない人、なのに執着をしてしまう
- 執着を手放したければ、手放すことに執着しないこと