対人関係と自己犠牲の心理 〜関係性を壊さないために〜

人のために頑張っているのに、もやもやすることはありませんか?

『人のために頑張ったり、優しくすることは悪いことではない』と考えながらも、心のどこかでモヤモヤを感じていることはありませんか?
もしそうであれば、あなたは対人関係の中で自己犠牲をしているかもしれません。

自己犠牲とは

自己犠牲とは、目的のために自分の欲望などを捨てて尽くすことを意味します。

自分の幸せや気持ちを後回しにして、損をすることをいとわずに働いたり、労力を費やしたりすること、と言えるでしょう。

例えば、何でもタダで引き受けたり、自分の時間を犠牲にして人に尽くしたり。

このような自己犠牲は、一見すると奉仕・貢献のように見えますし、自己犠牲をしている本人も貢献しようと思っているのです。

ただ、自己犠牲には常に罪悪感が伴います。

罪悪感が伴うがゆえに、「どれだけ貢献しても足りないような気がする」といった気持ちを感じやすくなります。

また、罪悪感があるがゆえに、相手から感謝されてもそれが受け取れません。

対人関係における自己犠牲型と他者思考型の違い

人間関係においては、自己犠牲型の人と他者思考型の人というタイプがあります。

自己犠牲型

他者利益には興味が関心があるが自分の利益には無頓着。人に与える一方で自分の利益を損なってしまいます。

他者思考型

他者利益と自己利益の双方に興味関心がある。受け取るより多く与えるが、自分にもしっかり他者から還元されていきます。

対人関係で自己犠牲しやすい人の特徴

なお、対人関係で自己犠牲をしてしまう人にはいくつかの特徴があると言われています。

例えば、「相手の気持ちを優先しすぎる」「いい人でいたい気持ちが強い」「自分を責めやすい」「断ることが苦手」「共感力が高い」等が挙げられます。

特に、共感力が高い人は、相手の気持ちに深く共感し、その人のために何かしてあげたいという気持ちが強い傾向があります。

この共感力は相手の困り事や相手の支えになるために重要なことなのですが、この高い共感力が「相手に悪いから」「相手が困っているから」と自己犠牲を正当化する理由にもなり得るところがポイントです。

対人関係での自己犠牲は自分自身を傷つける行為

自己犠牲は自分自身を傷つける行為。

しかし、多くの自己犠牲は貢献や奉仕の意識、要は「よかれと思って」という意識を伴うことが多いので、なかなか気づかないかもしれません。

例えば、自己犠牲型の場合、対人関係の中で自分の利益を考えることはありません。

もちろんそれもまた意識としては「良かれと思って」行われているのです。

ただ、それが原因で関係性を壊してしまうこともよく起こることです。

実際の対人関係の中では

「相手からの感謝されても、それでは自分の気持ちは全然報われない」と感じたり

「自ら払った労力の価値をちっぽけに感じる」ことや

「相手が他の人の労力に対してにきちんと感謝や対価を示している様子を見るとモヤモヤ・イライラしてしまうこと」

もあるでしょう。

このとき、自分自身が傷ついているので、うまく自分の感情や言動をコントロールできなくなってしまうのです。

例えば、意識では「相手のために見返りを求めず与えたい」と思っているのですが、実際は、自己犠牲した自分が報われると感じられなくなるのです。

これも罪悪感や自己否定の影響から、相手からの好意や感謝も受け取れないので、気持ちの面で追い詰められてしまうのです。

ときには相手を責めたり、不満ばかり伝えてしまうことにもなるでしょう。

一度、関係性を壊してしまうと、もう元に戻らなかったり、なんであの時こんなことをしたんだろう、という後悔を作ってしまいますよね。

もちろんあなたが自己犠牲をしていると知らない相手にとっても、悲しい出来事です。

あなたの好意を受け取ろうとしたことが、結果的にあなたを苦しめてしまうことになるわけですから、自己犠牲は双方にとってあまり良い結果を導かなくなってしまいます。

つまり、自己犠牲は、一見すると思いやりのある行動のように思えますが、長期的に見ると、心身に大きな負担をかけ、対人関係(恋愛、夫婦、友人関係など)の限界を作ってしまう可能性がある、といえます。

対人関係での自己犠牲から抜け出すために

では、自己犠牲から抜け出すために必要なことをいくつかご紹介していきます。

自分の気持ちを大切にする

自分の気持ちを無視せず、正直に表現することを心がけましょう。

あなたが自分の気持ちを正直に表現することと、相手の気持ちを無視したり、否定することと同じではありません。

相手の気持ちを優先することはときに良いことですが、自分の気持ちもしっかり大切にしましょう。

「NO」を言うこと

すべての要求にYESと言う必要はありません。ムリなことはできるだけ早い段階で「NO」を言う勇気を持ちましょう。

たとえ、相手の要求のすべてを満たさないと相手との関係が悪化するなら、それは対等な関係ではありません。

相手のムリな要求に答え続けることは、相手にとっても良いことではないかもしれません。

<h3>周囲の人との境界線を明確にする</h3>

対人関係の中で癒着しやすい人は、癒着に関して見つめ直し、自分自身の心を自由にすることも大切な視点です。

この癒着は自己犠牲の原因ともなる罪悪感によっても生じることがあります。

よって、自己犠牲のあるところには癒着あり、と考えていいぐらい、双方には密接な関連性があると考えていいと思います。

(完)

 

この記事を書いたカウンセラー

About Author

年間400件以上の面談カウンセリングを行う実践派。「男女関係向上・男性心理分析」「自信・自己価値向上」に独特の強みをもち、ビジネス・ライフワーク発見なども対応。明快・明晰かつ、ユーモアと温かさを忘れない屈託のないカウンセリングは「一度利用するとクセになる」と評され、お客様の笑顔が絶えない。