●素直になること

「いいです、いいです」と言うのが僕の口癖だった頃だったころがあります。
遠慮の言葉として「いいです、いいです」という言葉をよく使っていました。
例えば、夏の暑いとき汗だくになって友人の家に遊びに行った時、
「咽が乾いたでしょ、なにか飲む?」と聞かれると
「いいです、いいです。

と言って飲み物をいただくことを遠慮して断っているような感じです。
本当に咽が乾いていても遠慮して断っていました。
「ください」とか「欲しい」ってうまく言えなかったんですね。
この遠慮というのは、仕事、恋愛、プライベートいろんな場面ででていました。
遠慮することが癖になってしまっていたんですね。
僕の遠慮というものが癖のようになってしまったのは父親の死に大きく関係していました。
僕は8歳の時に大好きだった父親を病気で亡くしたんですね。
それは、小学校3年生に入ったばかりの時でした。
大好きだった父親を亡くし、子供ながらに死というものを理解したり、そのことで悲しい気持ちや、寂しい気持ちになったりしながら日常生活を送っていました。
父親の死は悲しく、寂しいものでしたがその気持ちをもちながら、乗り越えようとしながら小学校に通っていました。
小学学校にいくとお友達と一緒に遊んだり、仲良く話したりするので、
その悲しさや、寂しさはまぎれるのですが、時々友達の話の中にお父さんの話が出てくる時は、まぎらわせていた気もちが揺さぶられます。
「昨日、お父さんにキャンプに連れて行ってもらった。」
「お父さんの車で、九州のおばあちゃんところまで行ってきた。」
「日曜日はお父さんとキャッチボールするから遊べやんねん。」
こんな話を聞くとまぎらわせていた気持ちは大きく揺さぶられます。
そして、小学校では父親参観という行事があります。
この日も僕の心を揺さぶる日です。
それは、お父さんが参観に来ていないことじゃなくて、参観が終わってからのことが僕の心を揺さぶります。
学校が終わると、お父さんと手をつないで帰るお友達をたくさんみます。
そうすると僕の気持ちはまた揺さぶられます。
子供の心理としてはお父さんと手をつないでお家にかえるお友達をみた時、「いいなー」「うらやましいな」とは思わないんですね。
なぜならば、うらやましいなんて思ったら余りにつらくてやってられないからです。
お友達を見て僕はどういうふうに感じていたと思いますか?
僕が感じていたことは、
「いいもん、いらないもん、そんなの欲しくないもん」
と感じていました。
この時、心理的にはどんなことが起こっているかと言うと
自分の本当に欲しいものや、愛する人を「いらない」って我慢して、禁止するという抑圧的なパターンが作られていったんですね。
大人になってからもこのパターンというのは残っていきました。
本当に欲しいものや、愛する人があらわれた時、遠慮した、我慢したり、いらないって言ってみたり、
「いいです、いいです」
の口癖もそのパターンが表れたものでした。
僕はカウンセリングや、セラピーというものに出会ってこのパターンに気づき、
昔、欲しいものを、愛する人を「いいもん、いらないもん、そんなの欲しくないもん」って我慢した自分、禁止した子供時代の自分を癒していくことに取り組みました。
大人になっても、心の中は「いいもん、いらないもん」って言っている子供から変わっていなかったんですね。
そして、「欲しいものは欲しい、好きなものは好き」と言える自分になれるようにしていきました。
でも、こんなことみんなやっちゃうんですよね。
本当に欲しいものや、愛する人を「いらない」「嫌い」「欲しくない」って、自分に禁止して我慢してしまうことっていっぱいやっちゃいます。
そして本当に欲しいものや、愛する人を、まるでつまらないもののように扱ってしまったりしてしまいます。
そして、僕たちの心の中は禁止だらけになってしまいます。
失恋した時に傷ついた時自分は幸せになれないんだと思い幸せということを禁止したり、無条件で自分を愛されることをあきらめていたり、お父さんとお母さんが仲が悪いという姿を見て育ってきたのでやさしい家族は自分には手にはいらないんだ無理だと諦めて禁止している自分がいたり、助けてもらいたい時に助けてもらえかった人は助けてもらうことをあきらめて禁止したり
いっぱい禁止しちゃいます。
でも、本当に欲しいものや愛する人を
「いいもん、いらないもん、欲しくないもん」って言ったり、
好きなものを嫌いって言ちゃったり、つまらないものを扱うようにしてしまったり
しても幸せは手に入らないんじゃないかなと思います。
「俺、この仕事したい。」
「私、こんな人生おくりたい。」
「私、この人と幸せになりたい。」
欲しいものをほしい、好きなものを好きって素直に言えるということって幸せになるために大切なんじゃないかなと思います。
   
原 裕輝

この記事を書いたカウンセラー

About Author

若年層から熟年層まで、幅広い層に支持されている、人気カウンセラー。 家族関係、恋愛、結婚、離婚、職場関係の問題などの対人関係の分野に高い支持を得る。 東京・名古屋・大阪の各地でカウンセリングや心理学ワークショップを開催。また、カウンセラー育成のトレーナーもしている。