●私の中のアリス

ルイス・キャロルの書いた「不思議の国のアリス」を、また読み直してみました。
私はアリスの不思議の国やピーターパンのネバーランドのような不思議な世界が子供の頃大好きでした。
何度も読み直したものです。
子供時代の私は体が弱く入院生活もありました。
退院してからも家で一人遊びをすることが多く、仕事の片手間に母が私の世界に付き合ってくれていた記憶があります。
楽しみと言えば本を読むこと、小さなオルガンで遊ぶこと。こう書くととても寂しい子供時代のようになってしまいますが、5歳ごろには外で弟や近所の近い年頃の友達と遊びまわっていました。
身体の影響で行動に制限があったのですが、崖のぼりをしたり子供だけの秘密の基地を作ったり…今では面影もないくらい開発されていますが、当時住んでいた辺りはまだまだ自然がたくさんあって、自分の身体を忘れるくらい元気に遊んでいました。
子供の目の高さで見ると、雑草の茂みだって森のように感じます。
アリスが何かを食べたり飲んだりすると身体が伸び縮みするのとは違うけど、今の私たちには見えない物がきっと見えたに違いありません。見えているものは同じでも、感じ方・受け止め方が違うのでしょうね。ただの土管が基地になったり教室になったり、私たちは頭の中で色んなものを創っていました。
そう、ドラえもんが道具をのび太君に出してあげるように、私たちの頭の中は宝庫でしたね。
子供の頃、怖かった思い出なんかありますか?今から思うとなんでもないものを怖いと感じていたことはないでしょうか。友人は、チャルメラの音を子供に「子取りの笛」と教えました。
彼女の子供たちが小さいときには、チャルメラの音が鳴るとササーっとお布団にもぐりこんでいたらしいですよ。大きくなって真実がわかったときに、子供たちからブーイングが出たらしいですけどね(笑)。
怖い、と言うのではないのですが、私はあるうっそうとした空き地にある祠(ほこら)にとても興味がありました。
お地蔵さんが安置されているのはそうでもないのですが、ずっと扉が閉まったままで、興味津々でした。
だって、私には小人さんの家に思えたんです。
石で出来た台の上に乗っかった祠は空き地を囲ってある有刺鉄線に囲まれ、位置的にも高く、当時の私には届きませんでした。
だから余計に興味をそそられたんですね。でも、私以外に関心を持つ仲間はいなく、いつのまにか忘れていました。
随分経ってそれを思い出したのは、その空き地が病院になっていたからで、少し場所を変えて祠がありました。
何だか懐かしく、子供時代に一瞬戻っていました。
さて、あなたは人と話すときに眼を合わしているでしょうか。眼は心の窓、と言う言い方がありますが、ちょっとした動揺や驚き、喜び、怒り、悲しみ、色んな感情が瞳には宿ります。
でも、おそらく見る角度によって違うのではないかな、と思いました。
つまり、同じ優しい眼で見ても上から見下ろすのと、大体似た高さで見るのとでは相手からの印象が違ってしまいます。
能面をご存知でしょうか?能面はつける角度を変えると笑顔にも泣き顔にもなるといいます。
それと似ているかもしれません。
幼稚園や保育園では、先生は必ずかがんで子供と話しています。
目線の高さを合わせるためなんですね。大人の私たちがいくら身長に個人差があっても倍、と言うことはあまりないですよね。でも、子供たちから見ると大人はすっごく大きな存在です。
だから、腰をかがめて目を合わせてあげるんです。
違う見方をすると、子供の目から見た世界、と言うものも見えてきそうな気がします。
となりのトトロのアニメ映画でも、はじめお姉ちゃんの方はトトロの居場所がわかりません。少しだけ、大き過ぎたのかもしれませんね。
でも木のトンネルをくぐろうとしたとき、木が広がってあたかも道を造ってくれたかのようでした。
見えていないものを子供たちが見ているのではなくて、実は子供たちの目線からは見えているものを、私たちの成長が見えなくしているのかもしれません。
そう言えば、アリスは大きくなりすぎて自分の足元さえ見えなくなったことがありました。
それに、扉のサイズよりも大きかったのでお庭にも初めはいけませんでした。
でも身体のサイズが小さいときにはテーブルの上の鍵が取れなかったり、子犬に追いかけられたり。やっぱりいいことばかりではありませんでした。
今の私たちには、身体を伸び縮みさせる飲み物もケーキもありません。でも、誰かを見るときにその人の目の高さや、位置や、おかれている状況になることは出来ますね。その人自身になることは難しいけれど、こういった視点を持つことは出来るし、そんな目で見てみよう、という意欲があれば本当に視野が広がり人としてのキャパシティが広がるような気がしました。
頭ではわかっていても本当に難しいことです。
「不思議の国のアリス」「ピーターパン」「ハリーポッター」「となりのトトロ」「ドラえもん」…
それに最近私の周りではガンダムなどのフィギュアを持っている男性が多いんですが、同じなんですよね。大人になっても子供の頃の夢や、感性を忘れないでいるのは、優しく柔軟になれますよ。子供の視点から色んなものを学べるように思います。
それよりも何よりも、楽しいので、こういう世界で一度楽しんでみてはいかがですか?
 
中村ともみ

この記事を書いたカウンセラー

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