数々ある思い出の中で、皆さんにとって特に印象に残っている思い出は何ですか?
これから夏がやってきますが、「夏の思い出」と言えばどんなものがありますか?
先日実家に数日帰る機会があって、ふと子供の頃の思い出に思いを巡らせていたんです。
そして思い出した夏の光景は、少し涼しい風がレースのカーテンをゆらしながら部屋に入ってきていて、窓辺につるした風鈴を静かに鳴らしていたこと。
そして、机の上の飲み残しのカルピスのグラスからは水滴がしたたっいて、私は母と並んでせみの声を少しうるさく思いながら、心地よくうとうとしている・・・そんな光景を思い出しました。
何故かその光景をとてもはっきりと覚えているんです。
他には、夕暮れ時、夕飯の支度を終えた母と、すっかり涼しくなった外にブラブラと散歩がてら出掛けて、ボール遊びをしたこと。
その時の空はピンクやオレンジや紫に美しく彩られていて、こんな時間に遊びに行けるなんて思いもよらない出来事に、うれしくなっている自分。
そんな何気ないある日の1コマを、意外と鮮明に覚えていることに少しびっくりしました。
もちろん、毎年恒例だったた盆踊り大会のことや、家族で旅行に出掛けたこともしっかり覚えているんですが、ふと、懐かしいな・・・と思い出したのは、日常のささやかな光景でした。
この時のこと絶対忘れない!とか、胸に焼きつけておきたい!と思って意識的に光景を心に焼きつけたこともありましたが、案外そいう何気ない光景の方が、自分にとってすごく懐かしいものだったりすのかもしれませんね。
もう一つ気が付いたことは、ある程度大きくなってからのことよりも、自分が子供だった頃のことの方が、鮮明に覚えているということです。
何でなんだろう?と私なりに考えてみると、やっぱりそれだけ子供の頃の方が、一瞬一瞬必死に生きていたからかもしれないと思いました。
大人になると、時間を「今この瞬間」というよりも、もっと大きな長さで捉えている感じがします。
でも、子供の時って違いますよね。「今」というものに集中していて、精一杯だった気がします。
心理的にみれば「感情と記憶はつながっている」と言われているので、それも納得できる気がします。
きっとあらゆる瞬間に敏感に何かを感じていたのでしょうね。
そういう風に考えてみると、今送っている日常生活の何気ないことも、習慣も、今から5年後・10年後には素敵な思い出として、心に残っているかもしれません。
私の父が亡くなった後に思ったことは「あぁ、もう二度と家族4人で暮らした日々は戻ってこないんだな」という事でした。
結婚したての頃思ったのは「実家で過ごした私の”娘”時代はもう終わったんだな」という事でした。
そして近い将来、自分の子供が生まれた時に、夫と二人で暮らした日々を少し懐かしく思うのかもしれません。
家族の状況、自分を取り巻く生活は、刻々と変わっていきます。
それは二度とその頃には戻れないという少しせつない想いと、でも懐かしい、美しい思い出が増えていくことでもあります。
その為にも「今」という瞬間、そして今感じていることを大切にしていきたいと、改めて思いました。
根本理加