カウンセリングの時に、時々こんな質問をさせていただくことがあるんです。
「今日、言いたい事の何割くらい言えてると思います?」って。
その答えの多くは2、3割なんですよね・・・。
でも、実際はもっと低いのかもしれません。
終わった後に、あれをいい忘れた、これを言えば良かった等々、もっと色んな気持ちが出てくるでしょう。
なんせ、僕がカウンセリングやセラピーを受けたときはいつもそうだったから(笑)
今でもカウンセリングや講座の後、メルマガを発行した後などに時々同じことを感じることがあります。
今は言いたいことの7,8割は表現できるようになってきてるかと思いますが、それでも、「あの話をしてあげればよかった」「この質問すればよかった」と思うこともよくあります。
ホームページに掲載されるようなネタであれば、後から思いついたことは追加したり、書き直したりすることができます。
(だから、僕の書いた記事は時々後から修正されます)
でも、声に出して伝えたり、メルマガとして発行してしまったりした後には、ほとんど取り返しが付かないんですよね。
特に電話カウンセリングは45分と短いですから、その限られた時間の中で、できるだけお話を伺って、その後で、お伝えしたいこと、知っておいて欲しいことなどを伝えようとすると本当に苦労するんです。
お客さまは話したいことをどれくらい話せただろうか?
次にどんな質問をさせていただこうか?
僕から何をお伝えしようか?
を色々思慮するだけで、どっと疲れてしまうことすらあるくらい。
最近では2時間の面談カウンセリングでさえ、そういう思いをすることがあります。
時々、最初にお話を伺った後で「このテーマでしたら、明日の朝までお話しを続けたいくらいです(^^)」と冗談めかして言うときがあるんですけど、これは案外本音だったりするんです。
だから、そういうときには考えても埒があかないので最近はより直感を使うようにしました。
その時、口をついて出てくる言葉に任せよう・・・そんな感じ。
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言いたい事を言葉にして表現することも難しいですが、それを自分が意図した通りに相手の方に伝えるのはもっと難しいかもしれません。
カウンセリングの中では“悪気”として捉えられることは、さすがにほとんどないのですが、言葉のあやで誤解を与えてしまうことも時々あります。
僕は時に話を茶化したり、ちょっと大袈裟に表現したりすることがあるので、そういうときは自分の意図したことと違うように取られてしまう可能性がありますよね。
それを後からメールなり、次回のカウンセリングの時などに伝えていただければ、フォローのしようもあるのですが、そこで気分を害されたとすると、もう二度とお話することが無い場合もありますものね。
だから、すごく怖いなあ・・・と思うのと同時に、この悪い癖を何とかしなきゃな・・・といつも思います。
僕のカウンセリング後の一人反省会で一番多いのが実はこの手のことなんですよね。
「きついこと言っちゃってないかなあ?気分害してないかなあ?ツッコミすぎていないかなあ?しゃべりすぎていないかなあ?」という風に。
そういえば、昔から(特に女の子に)「根本君って、時々、ドキッとするようなこと、平気な顔して言うよね」とか言われることがあって、そのたびにこの怖さを痛感したものです。
相手の痛いポイントを付いて傷つけてしまったり、言わんでもいいことを言ってしまったりするんでしょうね。
本当に申し訳ないなあ・・・と思うと同時に、すごい自己嫌悪に襲われていました。
自分でもその時は気付かずにやってることが多かったですから・・・。
(最近はそれでもだいぶマシになってきたと思ってはいますが・・・)
だから、こうして文章にするときには何度も推敲を重ねるんですね。
「これを読んだ人はどう感じるだろう?」って何度も考えて、書き直すようにしています。
でも、声に出して伝える場合には、そうもいきませんよね。
カウンセラーというのは特に言葉を使う商売だから、なおさら、重みがあるんですよね。
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さっき「言いたい事の7,8割は表現できてると思う」って書いたんですけど、昔からそうだったわけではありません。
あんまり信じてもらえないんですけど、僕って元々はすごく口下手な方じゃないかと思うんです。
昔は言いたい事の2,3割どころか、1割、いや、5%も表現できてないように感じてました。
時には、言いたいことどころか、言いたくないことばっかり言ってしまって、マイナスやん・・・と思うことも。
そうは思っていても、きちんと伝えたいことを伝えなきゃいけない場合、表現しなきゃいけない場合ってありますよね。
だから、とにかく文章にすることにしてましたね。
言いたい事を一度、実際に文章にして書いてみる、それを読み返してみる、書き直す、そんな作業の繰り返しでした。
僕が大学院に入る頃はちょうどインターネットが流行り出した頃で「Eメール」を学生達が頻繁に使い始めた頃でした。
僕にとってはこのメールというのが本当にいい表現の練習になりました。
友人と長い長いメールを交換したり、ネットで知り合った女の子と色んな話をしたり。
普通、文章といえば文語体で、どっちかというと堅いものが多いですよね。
でも、メールというのは手紙よりももっと気軽で、口語体が普通ですよね。
それまで話し言葉にコンプレックスを持ってた僕は、メールでそれを練習することにしたんですね・・・。
もちろん、意図的に練習しよう!って思ったわけではないんですが、少なくともメールという存在が出てきたことは僕にとってはチャンスだったんです。
レポートやプログラムを書かなきゃいけない事情もあって、ブラインドタッチは問題なかったですから、なおさら幸いでした。
そこで、言いたい事を何度も見直して、書き直して、送信する、そんなことを何度も繰り返してきました。
特に気持ちを表現するときは困りました・・・。
何度書き直してみても「これはちょっと違うなあ・・・」と思ったり、この気持ちはなんて言葉で表されるんだろう?ってすごく悩むことばかりでした。
今でも時々やりますが、辞書を引きながらメールを書いたことも何度もありますね。
調べる言葉はほとんど形容詞、副詞の類だったと思います。
こういうカウンセリングや心理学についても、その頃からネットを通じて色んな場で関わってきたんで、カウンセラーになった頃は電話よりもメールの方がずっと得意だったんですよね。
だから、僕がボランティアカウンセラーになった頃はお話を伺って、一度、頭の中で「メールだったらどう返事するかなあ?」なんて考えてからお話してたりしました。
元々電話が苦手・・・というのもありましたけど、僕にとってはそれくらいメールの方が話しやすかったんですよね。
でも、そのうちメールの持つ難しさにも気付いてきたんです。
何の気なしに「それって○○って意味ですか?」みたいなことを書いたんですね。
そしたら、相手から「どうしてそういうことで怒るんですか?」なんて返ってきて。
え?なんで?
一瞬、頭の中がパニックになりました。
僕の書き方が怒ってるように相手に伝わっちゃったんですよね。
実際はむしろ優しく質問するようなつもりで書いたんですけど。
「それって○○って意味なのかなあ?」とか「○○って意味なんでしょうか?」って書いてれば、そんな誤解を与えることもなかったと思いますが、当時の僕には分からなかったんです。
それがまた学びになりました。
メールでは柔らかい表現が大事なんだな・・・と。
今でも毎日日記のようにミニコラムを書いていますし、講座やコラム、はたまた、カウンセリングの紹介など、カウンセリングサービスのホームページには僕の書いた文章があちこちに掲載されてるんですけど、そこで一番こだわってるのが「柔らかい表現」という奴なんですよね。
それでも誤解を与えることはあろうかと思いますが、できるだけ読みやすく、分かりやすく、柔らかく表現するように心がけてます。
もうそれが今では癖のようになってますから、そんなにしんどいことじゃないんですけど、最初の頃は本当に苦労しましたね。
ホームページを作るとき、うちの先生から口を酸っぱくして「これを読んだ人がどう感じるのか?それを徹底的に考えろ」と言われてましたから、そこでもまた色んなことを学びました。
幸い、僕の文章を優しい、柔らかい、分かりやすいとおっしゃってくださる方も多くて、すごく嬉しい気持ちになるんですよ。
自分の狙いが伝わってるんだなあ・・・と感じて。
そして、それが話し言葉にも反映されるんですよね。
時に僕の言葉や文章はくどかったり、何度も同じことを話してたりすると思うんですけど、それは出来るだけ分かりやすく、誤解を与えないように伝えたい、と思うからなのかもしれません。
まあ、でも、それでもくどすぎるような場合は教えて下さいね。
それもまた学びになると思いますから。
そうして、口語体の文章ベースで“言葉”を使うことが多かったので、カウンセリングや講座の中で言葉を使うときにも、伝わりやすいような言葉を選ぶことや、気持ちを表現することはだいぶ平気になったと思います。
それで7,8割なんて自己評価ができるんでしょうね。
僕がコミュニケーションをテーマに講座やコラムなどをよく書くのも、僕がそこに苦労して、自分なりにノウハウを積み重ねてきたからなんです。
でも、元々はとてもコンプレックスを感じていたジャンルです。
まあ、それでも誤解を与えたりすることがあるわけですから、言葉って本当に難しいものなんだな、と思いますし、まだまだ学ぶことがあるんだなあ・・・と素直に謙虚になれるのもまた不思議な気持ちがします。
根本裕幸