「60点で100点満点と同じに認めてあげてね。」
これは、僕が昔、サラリーマン時代に悩みを抱えた時、ある人から教わったこ
とでした。
僕は、学校を出たての頃、ある宿泊施設に入社しました。
配属されたのは、フ
ロントで、沢山のパートやアルバイトの人たちが働いてました。
「非常勤のパート・アルバイトさんたちから見たら、正社員で入ったあなたは
上司として見られますから、そのつもりで自覚を持って、がんばってください
ね。」
当時は、仕事を覚えるだけでも大変な上に、上司として自覚を持てと言われて
も、戸惑うばかりでした。
でも、頼りないと思われることを怖がって、わから
ないことを自分から聞く勇気もなかった僕は、体裁をつくろうだけの人になり
ました。
仕事の流れをつかんだ頃には、日常業務の流れに支障のない、人の失敗でさえ
も、重箱のスミをつつくがごとく怒ったり、責めたりする、イヤな人と化して
ました。
今、思えば「今度から気をつけましょうね。」と、穏やかに言えばす
むことなのに。
わからないことを聞かれたら「そんなもの自分で考えてから、こっちへ伺いた
てろよっ!」と突き放したり、、、。
そんな僕を見て、バイトさんたちやパートさんたちは、ただ怖がるばかりでし
た。
しかし、そんなある日、ひとりのパートさんがついにキレました。
「100点満点のテストで99点なら、0点と同じみたいな態度をとられたら
気が張り詰めっぱなしで、やってられないわよっ!!」
「、、、。」
僕には、かえす言葉がありませんでした。
悩んだ末にたどりついたのは、同じような悩みを抱えた人の集まりでした。
そ
こで、ある年配の方が次のように教えてくださいました。
「ムカイさん、あなたは御自分に100点満点の完璧さを求めてませんか?御
自身に完璧さを求めすぎたら、御自身以外の方にも、その完璧さを求めてしま
うものなんですよ。で、あなたは人に求めるほど、御自分が完璧にできるんで
すか?」
「アルバイト・パートさんたち、つまりあなたの下で働いてる人たちの御仕事
ぶりを見る時は、100点満点のテストなら60点でOKにしてあげたらどう
でしょう。60点で100点満点と同じように見てあげてはいかがですか?い
わば、60点満点です。
」
「60点の目安は、日々のお仕事の切り盛りに、必要なポイントをおさえるこ
と。つまり日常業務が滞りなくすすめば、それでいいじゃないですか。もし、
残りの40点分を求めるなら、それは余裕があるときにお願いすればいいじゃ
ないですか。」
当時の僕は、体裁をとりつくろう内に、100点の完璧な人でいようとして、
それがいつのまにか、周囲の人たちにも完璧さを求めて、、ギスギスした感じ
を与えていたとは、、、思わなかったんですね。
完璧を求めることだけはやめようと決めたら、まわりの人たちは、はじめはビ
ックリしたようです。
しかし、次第にビクビクしながら僕に接していた人たち
の雰囲気が穏やかになったのは、驚きで、貴重な体験でした。
100点を求めるよりも、60点でもいいと思えたら、その気持ちでゆとりを
持って、人に接することができるんですよね。
さらにそこで「よくがんばったね。」ってひとこと言ってあげられたら、ほめ
てもらえた人は「さあ、また次もがんばろう」って、意気に感じるんじゃない
でしょうか?
リーダーシップをおとりになる立場の方で「つい、相手の人に完璧さを求めて
しまいがちで上手くいかない。」とおっしゃる方には、この「60点満点」の
視点を取り入れられてみてはいかがでしょう?