◇ハプニング万歳!?

彼と食事に出かけたある夜の出来事です。
その日はとても大事な日で、今後の二人のおつきあいについて切り出す
チャンスを私は伺っていました。
そういう気配を察してか彼もちょっとよそよそしい感じ・・
中華料理を食べながらまずはお互いの近況報告。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、帰りの時間が近づいてきました。
時計を見て慌てて切り出そうとしたところ「そろそろ出ようか」との彼の一言。
“昨日の夜の計画では、もっと早い時間に切り出す予定だったのに・・”
「そ、そうね・・」と答えながら頭の中はいつ話そうかといっぱいです。
あまりにも一生懸命考えすぎて緊張していたせいか、店を出て歩いている
途中に足をくじいてしまいました。
1ヶ月前に捻挫したところと同じ箇所をまた捻挫してしまったのです。
“よりにもよって、なんでこんなときに!?
足を怪我するのは前進する怖れであると何かに書いていたっけ・・”
ビンゴ〜とどこかで鐘が鳴るのを聞きながら、痛さに思わず座り込んで
しまいました。
歩こうにも足に力が入らずに引きずってしまいます。
「テーピングをやってあげようか?」
彼がそう言って薬屋さんを探しに行ってくれましたが、シャッターがすでに
降りていました。
コンビニも行きましたが置いているのはバンドエイドだけ。
とりあえず冷やしたほうがいいかもと思い、ハンカチを水に濡らして当てて
みたのですが蒸し暑いせいかイマイチです。
「湿布があったらいいんだけれどな・・」
ひとりごとのようにつぶやいた私に、少し間をおいて
「・・湿布ならある・・」
とボソっと彼が言いました。
「えっ!?湿布持ち歩いているの?」
書類封筒は持っているけれど、カバンは持っていないし?
「どこに?」
「・・ここ・・」と彼が指差したところは腰でした。
そう、彼は腰痛持ちなんですね。
その日は痛みそうな気配だったので貼っておいたらしいのです。
「もう1軒薬屋さんを探してくるから待っていて」
そう言って出かけて戻ってきた彼の手には、腰からはがしてふたつに
折りたたんだ湿布とアルミパック入りの冷凍シャーベットがありました。
その湿布はかなりくたびれていましたが、私にとってはまるでキラキラ光る
宝物のように映りました。
「まだ使えるよね」
「うん、大丈夫みたい。ありがとう」
二人で湿布の匂いを確認して(笑)足に貼り直しました。
凍ったシャーベットも機転が利く彼らしいアイデアです。
足はひんやり、心は彼の優しさにポカポカでした。
彼の性格からいって自分の使い古しの湿布を差し出すことは抵抗があった
かもしれませんが、私を気遣う気持ちを選んでくれたことが嬉しかったです。
足の捻挫というハプニングにどうしたらいいのか二人であれこれ考え、
彼が与えてくれて、私が受け取って・・
小さな共同作業が心の距離を縮めてくれたようです。
緊張していた気持ちがすっかり緩んで「実はね・・」と彼に切り出すことが
できました。
計画にはない予期せぬ出来事が起きるとつい慌ててしまうものですが、
そうなったら計画にこだわらずに流れにまかせて力を抜くと、
目的地へいつの間にか辿り着いているものなのかもしれません。その流れて
いく合間を楽しむことができたら、どれだけ味わい深い時間を
過ごせることでしょう。
人生に起こるハプニングもぜひそうやって楽しみたいものですね。
かといって、ハプニングだらけの毎日はジャングルを冒険するようで、
ちょっといただけないかも・・
適当な回数が人生に散りばめられているほうがいいかな・・
できれば退屈しているときに起きてくれたら・・
あ、今度は“ハプニング”を計画してしまいました(笑)
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