父が他界してから十数年、僕は母と二人暮らしをしています。
母は今78歳です。
お陰様で、母はまだまだ元気一杯で、僕と一緒に海外旅行に出かけたり、時には友人と旅行に行ったりしています。
しかしながら、やはりそれだけの年数体を使ってきたのですから、腰痛を持っていたり、高血圧など内科医からも薬をもらっていたりしています。
どんな元気な人間でも、やはり、寄る年波には逆らえないんでしょうね。
一方、僕は母と二人暮らしをしているとはいいながら、実は家にいる時間が少ない日常生活を送っています。
多いときには月のうち半分以上、少ないときでも月のうち1/3は家をあけています。
そんな僕の母に対するせめてもの罪ほろぼしが、年に何度か一緒に行く旅行でしょうか。
僕が家にいないとき、母の年齢を考えるとついつい気になるのが「元気にしてるかなぁ?」という事です。
そこで、僕は家にいないときにはできるだけ毎日母に電話をするようにしています。
逆に母は、僕の邪魔になってはいけないと思っているようで、特別に何か用事がない限り僕には電話をかけてきません。
2年ぐらい前でしょうか、僕が家に何度電話をかけても電話に出ないという事がありました。
丁度僕が電話をかけた時には外出していたり、トイレや風呂に行っていて出られなかったりという事が重なっただけで、結局は何事も無かったんですが、僕はその時凄く母の事が心配になりました。
家に帰って、僕は早速母親を携帯電話ショップに連れて行き、携帯電話をプレゼントしました。
母は最初「使い方がわからないから、いい」と言っていましたが、最近は機械に疎い年配の人でも使いやすい電話が出ています。
大きなキーに、簡単なキー操作。そんなユニバーサルデザインの電話機のいくつかある機種のうちから母親に電話機を選んでもらいました。
母は携帯電話を持った事がとても嬉しかったみたいで、大事に使ってくれています。
しかし、大事にしすぎて、外出の時はバッグの中にハンカチで包んで仕舞っているので、呼び出し音は聞こえないわ、取り出すのに時間がかかって電話は切れてしまうわ、といった塩梅です(笑)。
でも、最近は母と電話が繋がる頻度が多くなったので、どこにいても僕は安心していられるようになりました。
僕の知人のお母さんが1年ぐらい前に倒れられました。
80歳を過ぎておられて、一人暮らしをされていたんですが、ストーブのタンクに給油中、ベランダで倒れられて、そのまま意識不明。12時間ぐらい経った時にたまたま訪ねてきた人が見つけて病院へ。石油タンクが倒れており、辺り一面には石油がこぼれていて、お母さんはその石油に長時間さらされていたせいで、顔面をはじめとしてあちこちやけどのような酷い状態に成られていたとの事でした。
幸い、命に別状はなく、今は娘さんの家に同居されているそうです。
僕はこの話を聞いてから、一人の時間を過ごす事が多い母に対してどうすればいいかなぁとずっと考えていました。
倒れる時など、電話をかける余裕が無い事も多いですよね。
インターネットで色々調べてみると、警備保障会社がそんな事態に対応出来るサービスをやっている事がわかりました。
月々千円足らずで専用の装置を貸してくれ、ボタンを押すだけで警備会社が駆けつけてくれるサービスです。
その装置は携帯電話の位置検出サービスを利用していて、その装置の持ち主の居場所を特定します。
だから、外出先でも携帯電話の電波が届く日本国内ならそこに来てくれるわけです。
僕は早速契約を結びました。
僕は母にその警備保障会社のシステムを説明し、装置の使い方を説明し、そして「もし何かあったらこのボタンを押すだけでいいから、風呂に入る時以外は肌身離さずに持っててな」と頼みました。
携帯電話と緊急通報装置、この2つのツールのお陰で、最近は安心しながらあちこち飛び回っている僕です。
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