●日の出と友と温泉と

 長い付き合いの親友と、彼の諸事情によりなかなか会えなくなってしばらくたっていた。
 家族ぐるみの付き合いだったが、彼とだけなかなか会えない。
 そんな折、家族連れ立って温泉に行く話が持ち上がり、スケジュール的に難しそう
だったが、この機会を逃してはならないと、なんとか行くことにした。
 もう23時をすぎていたが、家族も友人達も子ども達も起きていてくれ、
しかも、温泉宿のラーメン屋につれていってくれた。
 せめて、ラーメンくらい食べさせてやろうとの心遣い。
 ラーメンができるまで、我が娘が昼間の時間を取り戻すかのように、
なんども宿のスロープを、手をつないで歩かされた。
 よちよち歩きの娘を心配する友人の娘が、後をトコトコついてきてくれる。
 その様子を妻や友人夫婦が見守る。
 何十回やらされたかわからないが、ずっと昔に感じたような温かい気持ちになった。
 その思いのとおり、ラーメンの味も大変うまかった。
 「日の出を見ながら露天風呂に入る」と言い出したのは、その友人だった。
そんなに早起きはできないだろう、と皆で言っていたし、僕自身が疲れていたから、
とても起きられるとは思っていなかったが、一応、目覚まし時計はかけておいた。
 翌朝、不思議と目が覚めた。
 眠い目をこすりながら、露天風呂に向かう。
 足下もおぼつかないような、状態だったが、浴衣を脱いで、露天風呂に出て行った。
 すると、そこには、空を見上げて立っている友人の姿があった。
 彼は僕を見ると、まるで懐かしい家族に会ったような笑顔で笑い、
「日の出はロケーション、悪いよ」と言った。
 確かに、朝日が昇る方向は、山側で、しかも建物がある。
この宿は、夕日が沈む海が望める露天風呂が見所だったのだ。
でも、せっかく朝起きたのだからと、日の出の時刻を待った。
 その間、友人とは、最近、おもしろいドラマはこれだ、だの、
今一押しの女優はこの子だ、など、たわいもない話を久しぶりにした。
 そのうち、空が明るくなってきた。
 日の出だ。
 我々は、朝日が昇る方向を見た。
 絶景とはいいがたい景色だったが、確かに朝日だ。
 朝日は本当に真っ赤だった。
 みるみるその丸い姿が顔を出し、その色はどんどん、真っ赤から金色になり、
見ていられないほど光輝きだした。
 「確かに日の出だったな!」
と当たり前のことを、二人で妙に納得して露天風呂を後にした。
 部屋に帰り、今度は妻と交代。今度は奥さん同士で風呂へ向かった。
 家族といっていい友人達との久しぶりに過ごす旅は、
僕にもう一度「つながり」を感じさせてくれる貴重なひとときを与えてくれた。
家族や友人と、こんな時間を持つことの大切さを感じた1日だった。
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この記事を書いたカウンセラー

About Author

名古屋を軸に東京・大阪・福岡でカウンセリング・講座講師を担当。男女関係の修復を中心に、仕事、自己価値UP等幅広いジャンルを扱う。 「親しみやすさ・安心感」と「心理分析の鋭さ・問題解決の提案力」を兼ね備えると評され、年間300件以上、10年以上で5千件超のカウンセリング実績持つ実践派。