大学時代、とても理屈っぽかった僕は、大学にもいかず引きこもって、「人間って何?」「どうして世の中から争いごとはなくならないの?」なんてことを真剣に悩んでいました。
今思えば、それは自分の殻に閉じこもって「自分の城」を構えていただけだったな、と思うのですが、その頃に感動して読んだのが「宇宙からの帰還」という本でした。
この本は、ジャーナリストの立花隆さんが、アメリカのアポロ計画などの宇宙飛行士が、宇宙に行く前と後では心の内面的な変化を起こしている人が多く、地球に帰還してから、全く別の人生、例えばビジネスで大成功する、上院議員なる、キリスト教の伝道師、はたまたESP研究家にまでなってしまった人がいることに着目し、彼らに直接インタビューを行ったルポルタージュです。
もう20年以上も昔に書かれた話なので、日本人を含めた民間人がスペースシャトルで宇宙に行ける時代からすると、宇宙飛行士の歴史を読んでいるように感じるかもしれないですが、アポロ計画当時の宇宙飛行士が胸に秘めていた本音のメッセージを伝えた、という内容は、今でも十分インパクトのあると思います。
この本の中では、彼らには共通した認識があることがわかってきます。
それは、宇宙に行ったものにしか体験できない「何か」であり、スペースシャトル時代から考えると、当時の時代背景が作り出した特殊性が生み出したと思われる心的影響も多分に見受けられますが、それを差し引いても、彼らには偶然とは思えない「人間の存在の本質」「この世界の存在の本質」に関する共通認識がみられるというものだった。
僕のまとめでは本書の内容が正しく伝わらないかもしれませんが、ざっと書くとこんな感じです。
関心のある方は、実際にこの本を読んでいただくとして、今、改めて読み直して感じるのは、宇宙飛行士というのは、人類の中で唯一、肉眼で「外から地球を見た人」なのだ、ということです。
今の僕達は、映像でも写真でも宇宙から見た地球を見ることができます。
あまりに普通に目にするので、丸くて青い地球の姿というのはありふれたものですらあります。
けれど、この本のインタビューに答える宇宙飛行士たちは、様々な価値観をもちながらも、この点だけは誰もが共通しているもののようなのです。
「地球は本当に美しい」そして「地球はひとつ」であること。
宇宙船地球号、という言葉があります。
世界は一家であり、人類は兄弟なんだという言葉もあります。
環境を考える上で、平和を考える上で、似たような言葉はたくさんあり、これも僕達にとってはありふれた言葉です。
それを「実感」する機会はなかなかありません。地上に暮らしている以上、ある意味、それは当たり前の話です。
けれど、それを「実感」した人達がいる。
それが宇宙から地球を見た人達です。
それは理屈ではなく、文字通り目に入ってくる「実感」です。
彼らが語ってくれるこうした話は、実は、僕達が普段暮らしていく中でもとても役に立つのではないでしょうか。
「木を見て森を見ず」という言葉もあるように、僕たちは、普段、問題や争い事が起ると、そのことにとらわれてしまいます。
相手にも事情があるのではないか、この状況が起こったのも仕方ない何かがあったのではないか。少し大きな視点で見ることで、心に余裕ができ、相手にも親しみを持てるようになったりします。
そのお手伝いをするのがカウンセラーの役割の一つであるように僕は思っています。
これは飛躍するようですが、「みんな一緒に地球に住む仲間」という思いもまた、何かしらその手助けをしてくれるような気がするのです。
宇宙、地球というのは大きすぎる話かもしれません。
でも、時には、もし自分が宇宙に行って地球を見たとき、今の自分の苦しみや問題を、自分の取り巻く状況を、自分の今の幸せをどんな風に感じるのだろう。
そんな風に思いをはせてみるのもいいかもしれません。
その悩みに悩んだ大学時代から20年。やっと今になって、この時の経験が、今の僕自身の基礎であり、糧になっているんだと思えるようになりました。
今、僕も想像の旅にもう一度出てみようと思います。
あの時の自分のように。
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2件のコメント
こんにちは。
>相手にも事情があるのではないか、この状況が起こったのも仕方ない何かがあったのではないか。少し大きな視点で見ることで、心に余裕ができ、相手にも親しみを持てるようになったりします。
相手の発言、行動が私を苦しめたりするのが目的じゃあないことは、なんとなく想像できても、上手に相手を苦しめたり傷つけたりしないで伝える自信がないと関わりを持ってくれない感じがして(ちょっとでも傷つけると私から遠ざかってしまう。。)そうされると自分が傷ついてしまう。。(無価値感っていうのが刺激されるんですね、きっと。。)
遠ざかって、自分の心持が変わるならそれも有効だろうけど、遠ざかったまま(人全般から)近づけない自分がとてもさみしいです。
(コラムへの感想ということからかけ離れた書き込みだったらすみません!)
こんばんは。まさに自分のことが書いてあるかのような文章にびっくりしました。
私は23歳頃相田みつをさんの「宇宙ロケット」という詩に出会いました。
「宇宙ロケットの中から地球を見ると人間なんかひとりも見えやしませんよ ガガーリンは言いました 空は暗く地球は青いと コセコセスルコトハアリマセンヨ まあゆっくり飲んでください」
とういう詩に出会い、行き詰まりまくっていた自分の存在がとても小さいのだとちっぽけでしかないんだと思えたとき、自分の悩みに囚われていた心がとても小さく思え、どんなにあがこうと、ほんのちっぽけな自分でしかないのだと思えたことで、心がふっと軽くなったことを鮮明に覚えています。
空は暗く地球は青いという感覚も、自分の見る世界とさかさまのような価値観もあるのだといわれたかのようで悩みごとも捉えようによって真実は変わって見えるんじゃないかなとか、ふっと驚かされ、衝撃を受けました。
今でもその衝撃的な詩との出会いが忘れられずつい最近題名に惹かれ手にしたのが「宇宙のかけら」(竹内薫著)とういう絵本でした。
最後宇宙の命と同じように猫や人間にも死が訪れても、私たちが生きること一瞬一瞬が輝かしくあるということ、またその一瞬の輝きをわかち合える事実を思い知らされ、生命のありのままを感じ、泣きました。
本当につい最近偶然読んで、友達にもその絵本のことを紹介していたら、今日このコラムに出会い感激しています。