涙の成分~~プロラクチンが多いんですって!?~~

 先日、別れた夫の家に久しぶりに行きました。
とは言っても、もと夫に会うことはなく、まだ残っていた荷物を取りに行ったのですが。
 家を出る準備を始めたのが、1996年の終わりごろ。家を出たのが、97年の春。1年半くらいの時間が私には必要で・・・、つまり、もと夫からの連絡を実は待ちながら、業を煮やし離婚の調停を始めたのが、98年8月。あれよあれよ、と離婚が決定したのが、その年の12月16日。
 家を出ようとしてから、丸2年もあったのに、そしてそれからも10年以上の時間が経っているのに、まだ置いているものがありました。
それは、結婚前に私が集めていたレコード(なんと、LPですよ!!)や書籍、そして・・・もと夫が結婚してから買ってくれたもの・・・何着かの洋服やバッグ、もと夫がどこかにしまいこんだままになっていた、母が持たせてくれたお雛様、私の子供時代のアルバムなど。
 離婚当初は、私はまだフルタイムで仕事をしていたし、息子たちは小学生・中学生。さらに、心理学の勉強を始めたところ。色んな意味で私の方に余裕がなかったこともあるのだけど、今から思うと、もと夫の方は、もっともっと準備が出来てなかったんだ、と思います。
 いずれにせよ、そんな全てを精算しなければいけないことが、いつかは来るわけで。とは言うものの、捨ててくれているとずっと思っていたのもあるんですが・・・、今回もと夫の事情で、共に住んでいたマンションを引き払うことになったのです。
 なので、残っている荷物を、この手でばっさりと・・・と、息子を伴い、家を留守にしてもらって荷物を取りにいきました。
取りに行く、というより完全撤収という感じ。
 でも何で、ずっと置いたままにしていたんだろう、お互いに。私は、どうぞ捨ててください、と思っていたし、どこか、他力本願だったんですね、お互いに。
 あの住み慣れた部屋に入った時に出てきた、そこに滞留していた当時の感情・・・悲しくて、苦しくて、絶望的で。色んなところを見るのが嫌で。もと夫にお願いしてもなかなかしてもらえなかったことには、事情もあるし、それ以上に苦しかったのは、向き合ってもらえなかったこと。
 
 ドアを開けたら、そんな感情が一気に胸に飛び込んできたようで、涙が止まらなくなってしまいました。
一緒に来ていた次男は見ないふり、してくれたけど。
 一生懸命だったな、私。まだまだやれることはあったかもしれないけれど、力尽きていたな。最後の力で、子供たちと話をして、家を出る決意をしたんだった。
 子供たちと暮らす中で、父親不在の人生にはしたくなかったので、いつでも会えるように、と思ってきたし、現に今も3人で出かけたり、次男に至っては毎週会いに行っているんですが、ほんと、すごいヤツだ、と私は思います!
 私がどうしても家を出なければいけなくらいに、追い詰められていた「オトナの事情」については、今年に入りようやく全て、話せるようになったのですが、彼らなりの人生哲学を以って、成長してくれたのは、それでももと夫がいてくれたからでもあって・・・。
 なんてことが頭の中にぐるぐると廻り出し、ワークショップ以外でこんなに泣いたことは久しぶりではないか、というくらいに涙が。
 ああ。泣いてなかったな。離婚に際しては。それまでは、いっぱい一人で泣いてきたけど。トイレの中、お風呂の中、夜中のバルコニー、お布団の中、一人になれる場所を見つけては。
 散々涙を流したら、ほんまにすっきりしたんです。
涙って、流すことに意味があるって何かに書いてあったか聞いた気がするよな~、と取り戻しも早い、昨今の私。
 で、持ち帰っていなかった本の中に、発見したのが、「NHK サイエンススペシャル 驚異の小宇宙・人体2 脳と心」の全巻(NHK出版)、いわゆるオトナ買いしてあったもの。
 おおっ!!これ、持ってたんやぁ!!捨てずにずっと置いてくれていた、もと夫に感謝。いろんなことがあったけど、こう言うことは認めてくれていたな、って思って。
 そんなことをしていたら、ここに転居してきた時はまだお腹にいた次男が、
「お母さん、これっ!」
 と嬉しそうに見せてくれたのが、保育所の修了アルバム。
 自分で描いた絵を表紙に装丁して貰い、当時の写真が貼ってあり、中には5年前に夭逝した幼馴染の顔もあるもので、ずっとずっと見つけたかったらしいのです。
「これ、探しててん!!やっと見つけたっ!!」
 彼の20年の人生の中で、保育所での時間がそんなに大切だと私には気づかなかったなぁ。でも確かに、中学校の卒業式に、私がカメラを持っている前に、保育所仲間が(亡くなった子を入れると6人いたのですが)集まってきて・・・男の子も女の子も関係なく・・・満面の笑顔でピースをしてまた散らばっていったこと、思い出しました。
 亡くなった友達の通夜に参列した次男は(私は泣き過ぎて行けず)、叩いたら起きてくれそうな顔してた・・・としょげて帰ってきて、さらに学年全体で葬儀に参列した夜は、一晩眠れずにいたらしく、・・・翌朝息子が出かけたものと思って出勤した私に、先生から電話がかかり、大慌てで探したら、部屋で寝ていたことがありました。
 次男は、通夜・葬儀共に泣けなかったらしいのです。
泣いたら崩れてしまう、と思ったのか・・・。長男は、泣いたらええのに、って言っていたな。
 
 撤収する荷物を片付けながら、そんなことを考えていたのですが、帰ってから「人体の小宇宙」のうちの1冊を手に取り見てみたら、「人はなぜ愛するか 感情」という第4巻。
 そうなのよ、何で人は誰かをすごく好きになるのか、自分にも起こることではあるんやけど、誰か上手に説明してくれへんかなぁ~と思っていたところ。
 その中でも、涙の成分を調べた人がいるらしく、涙の成分についてほんのちょっと触れてありまして。
 その結果・・・プロラクチンという女性に多いホルモン、脳内物質エンドルフィンの「仲間」・ロイシン・エンケファリン、そしてマンガンが多く含有されていることがわかったと書いてありました。
 この番組や本が出たのが、15年ほど前なので、今はさらに解明されているのかもしれないのですが、要は、男性より女性の方がよく泣く、ということ、エンドルフィン(とその「仲間」)の作用にはストレスや不安などの緩和があること、マンガンは神経伝達物質の統合をコントロールしているので過剰になると異常行動の出現があること・・・。
 そういったことから推察するに、涙を流す(いわゆるエモーショナル・ティア)ことは、ストレスに対処するために必要で重要な生理的作用である、と。
 感情を抑え、涙をこらえることは身体にも心にも良くないこと、って言うのは体験的に知っているのですが、化学的な分析結果を見ると、納得せざるを得ないなあ、って思ってしまいました。
 そこで。
 男子たるもの、人様の前で泣くな、と教えられてきた男性諸氏。
職場で泣くなんてっ!!って後輩を叱っているお姉さま方(はい、かつての私ですっ)。
 いい涙を流しましょう。そしてさっぱりしたら、堂々と次へ進みましょう!
 泣くことは、恥ずかしいことじゃありません。化学物質以外に、もっともっとたくさんのものが含まれているんです。
思い出や、優しさや、愛情や・・・誰かの気持ちを感じてあげられる、柔らかな感性や。
 涙を大切にしましょう。誰かのために流した涙。自分のために流された涙。どんな宝石よりも、美しい、と私は思うのですが、皆さんはどうお感じになりますか?
 そしてまた今日も、美しい涙に出逢える仕事に、感謝。
※(NHK出版 「NHK サイエンス スペシャル 驚異の小宇宙・人体2(ローマ数字の2)脳と心 人はなぜ愛するか 感情 4」 を参考にさせていただきました。

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