僕は、カウンセリングサービスの母体である神戸メンタルサービスのカウンセラー養成コースに入り、現在カウンセラーをさせていただいております。
実際のカウンセリングの中や、カウンセリングサービス・神戸メンタルサービスのワークショップ等でクライアントさんや参加者の方から、こんな質問をされることがあります。
「ここに来て得たものは何ですか?」
そうした質問をいただいた時には、僕はすぐにこう答えます。
「子どもを授かったことです。
」
僕達夫婦は、結婚してから7年間、努力はしていましたが子どもができませんでした。
はじめのうちは話をふってきたお互いの両親も、段々と子どもの話題を僕達の前で出さないようになっていきました。
当時の僕は、実のところ、子どもが欲しいと思っていませんでした。
小さい子どもをどう扱っていいかわからなかったし、何より、子どもが生まれると自分や夫婦の時間が割かれてしまう、自由が奪われてしまうのではないかと思っていました。
また、子どもができることで、大きな重荷を背負ってしまい、人生そのものに責任がかかってくるような感覚を感じていました。
そんな中、カウンセラー養成コースに入って心理学のワークショップを受講していくうちに、気がついたことがありました。
今、振り返って思えば、それは僕の中に、また、僕達夫婦の中にそれを止めているものがあったのだと思います。
子どもが欲しくないという思いの下には、別の感情が隠されていたのです。
それは、自分のことが大嫌いだということでした。
小さい頃、忙しかった両親には僕達子どもの面倒をみる余裕がありませんでした。
それを子ども心に「両親に愛されていない自分は、愛するに値しない存在だ」と勘違いしてしまったのです。
けれどもそれは本当に大きな誤解でした。
子どもを愛さない親はいない。
そこにはしかたのない事情があったのかもしれないという、ものの見方は僕にとっては衝撃でした。
愛していなかったのではなく、仕事の忙しさのために仕方のなかったことだった。それどころか、子ども達の幸せのために身を削って働いてくれていたのだ、という事実は、僕の心を大きく揺さぶりました。
実際、カウンセラーとなった今、ごく最近になって、親戚と話をすることがあった時、いかにして両親が少ない時間を使って子どもと過ごすかについて真剣に話し合い、身内にも相談していたという事実を聞く機会がありました。
本当の事実というのは、意外と本人には伝わっておらず、また、子どもが親を愛するがゆえに、子どもは状況さえ自分のせいに感じてしまうのだということを学んだのです。
それをきっかけに、僕の心の中は大きく変わりました。
本当は愛されているのだ、自分には愛される価値があるのだ。
そこで気がついたのです。
子どもが欲しくなかったのは、愛される価値のない人間のコピーを世に送り出したくなかったからなのだと。
その時です。
生まれてはじめて、自分の子どもがいてもいいんだ、と思ったのは。
愛されている僕から生まれた子どもは、愛される存在です。
「愛からは、愛しか生まれない。」
カウンセリングの師である神戸メンタルサービス代表の平社長の、この言葉が胸に深く突き刺さりました。
すると、まさにその月のことです。
子どもを妊娠したと奥さんから報告を受けたのは。
その時のことは今でも忘れられません。
奥さんは電話口で泣いていました。
今振り返れば、彼女もまた、僕と同じように自分を責めていて、僕の思いは知らぬ間に彼女の中に伝わり、夫婦の間にも愛というつながりが生まれたのだと思います。
もし、カウンセリングを学ぶために、この会社の門を叩かなかったら、おそらく子どもを授かることはなかったでしょう。
人は、多かれ少なかれ、誰もが自分のことを責めて生きています。
そして、その思いは時に、様々な幸せへの道を進むことを止めてしまう働きをしてしまいます。
止めている幸せはいろいろです。
パートナーシップ、仕事、夢、お金、中には生きる目的を得られず苦しんでいる方もみえます。
それを止めているのは、自分を取り巻く環境や状況だけなのでしょうか。
心理学を学び、実際のカウンセリングをしていく中で、確信するようになったことは
どんな人も愛される存在である、ということです。
人は生まれながらに誰もが愛される存在なのです。
僕達夫婦は、昨年の12月に二人目の子どもを授かり、今は4人家族となりました。
お互いの実家の家族は、機会あれば集まり、今まで生きてきた中で、最も仲が良い関係が築けるようになっています。
幸せを止めないで下さい。
愛からは愛しか生まれないのです。
池尾昌紀のプロフィールへ>>>