ちょっと前の事ですが、何気なく見ていたニュースで、
田舎の駐在さんが定年退職する、という話に思わず見入ってしまいました。
そこは、京都市の久多という集落です。
私は以前バイクが好きで、よく京都の山中をツーリングをしていました。
特に、この久多という集落は気になっていて、何度か通りかかりました。
路線バスも通らず、週に1回街から来る生活物資の車が頼り。
通り抜ける府道も狭く、冬は西側の峠は閉ざされるという場所。
京都市内なのにスキー場がある集落から、さらに峠越えをしたところにあります。
そんな山深い集落で、みなさんよく生活されているなぁ、
久多を通るたびに、人間の生活力のすごさに感動したものです。
駐在さんは、昔は交通課に配属され、白バイに乗るなど活躍されてましたが、
窓口業務のストレスで体調を崩してしまわれ、
最後の働き場所にと3年前にこの勤務地を希望して来られたそうです。
75才以上のお年寄りの割合が90%というこの集落に、
少しでも元気を、とがんばっていらっしゃったようです。
白バイ時代のとき、畑で農作業中に倒れてこの世を去られたお母さんが
もし生きていれば、お年寄りのみなさんと同じくらいの年齢ということもあり、
雪下ろしを手伝ったり、駐在所を開放したり、
慣れない料理をしてみなさんにお裾分けをしたり。
お年寄りのみなさんを、亡くなったお母さんと重ねていたのかもしれませんが、
その姿は、画面を通してもとても美しかったです。
いよいよ退任して久多の集落を去る日。
駐在所には、別れを惜しむ多くのお年寄りが集まってきました。
そして、みなさん駐在さんを囲んで涙を浮かべていました。
駐在さんは笑顔で、「元気で」「長生きしてください」との言葉を残して、
奥さんと共に帰路に着かれました。
その途中、集落を離れる道中の橋の上には、
手押し車を押したおばあさんがずっと待っていました。
そこでも車を停めて、おばあさんと手を取り合って・・・
ホロッとしてしまいそうなとても暖かいシーンで、
今でも強く残っている光景です。
駐在さんがご自身の挫折をバネにして、
自分なりのベストを尽くそうとされなかったら、
きっとこんな素敵なお話はなかったんでしょうね。
もちろん、しんどい時に決して無理はなさる必要はありません。
ただ、もし誰かの力になるかもって思うような状況があるならば、
自分のできる事を、できる範囲でやるという事でいいと思います。
行動することで、少なくとも今の問題を考えずに済みますし、
誰かが笑顔になることで、気付いたら自分も笑っていたりします。
自分の痛みを越えて、誰かに手を差し伸べられたら・・・。
これをいざ実践するとなると、誰だって躊躇したくなるでしょう。
それでも、人は誰かを愛する力がありますし、誰かの力になれます。
そのことは心のどこかに留めておきたいなぁって思いました。
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