三島桃子です。
いつもコラムを読んでいただいてありがとうございます!
息子は11歳。そろそろ思春期の入り口です。
今年になってからあからさまに私と距離をとろうとするようになってきました。
ついに「お母さんといっしょ」からは卒業のようです。
息子は小さい頃、母である私の気持ちが不安定だったため、私に十分には甘えられていませんでした。
でも彼が小学校4年生になる頃、やっと私も自分の課題をかなりクリアできて、落ち着いて我が子と向き合えるようになりました。
そのころから息子は私に本格的に甘えるようになりました。
それまでの分も取り戻すかのような甘えっぷりは、周りからは時に批判的な目で見られ、「いや、これにはいろいろワケがあるのですよ、みなさん…」と、内心何度もつぶやいたものです。
こんなに大きい子がこんなふうに人前で母親に甘えるなんて、どういう育て方してるの?と思われてしまうのも仕方ないことだったと思います。
とはいえ、甘えてくれるのはやっぱり嬉しくて、当分このままでいいや、と思っていました。
幼児期に甘えられなかった分を取り戻すには時間もかかるだろうから、と。私もまだまだ「甘えられ足りて」いなかったですから、それはそれでいいという感じだったんですね。
ところが、11歳の誕生日を迎えた頃から、急激に息子の「母離れ」が始まりました。
まだ自分から甘えてはくるんですよ。疲れた時とか、気持ちが苦しい時とか。でも、くっついてくるからといって、こちらが包み込むようにしようとするとピュッと離れるんです。
嫌そうな顔をして。
何度かそんなことがあってから、くっついてきても、私はあえてしらんぷりを装うようにしました。
その時自分がしていることを淡々と続けるのです。
読書であったり、パソコン作業であったり。すると、しばらくすると静かに自分から離れていく息子。どうやらこれが今の彼が求める甘え方のようです。
(やがてこれもなくなるのでしょうけど…)
最近では外出時も、「お父さんと行くからお母さん来んといて」「一人で行く」などと言うのです。
昨年末ごろはまだ、「オレ、お母さんには甘えるけど、お父さんに甘えたことはない」などと言ってくれて、「子どもにとっての母の絶対的地位」を感じさせてくれていたのですが、それも今はどこへやら。
周りの先輩お母さんたちの話を聞くと、これはごく自然な親離れの過程のようです。
「ようです」というのは、自分が経験していないから、はっきりわかっていないのです。
私の母は病気がちでしたし、父もいろいろと苦労を重ねていて、そんな二人を助けないといけないという気持ちが強かった私は、自然に湧き上がる親離れの衝動を、そのまま言葉や行動に出すことはできませんでした。
参観日に「お母さん来ないで」なんて言う娘がいると聞きます。
私にもその気持ちはありました。
でも言えませんでした。
お父さんから露骨に距離をとるのが思春期の女の子だといいます。
私にもありました、そういう感覚。でも、そんなことはないふりをしていました。
そんなことをしたら、両親が傷つく。これ以上あの人たちが傷つく姿は見たくない。そういう気持ちの方が勝っていました。
ま、あと、親離れの衝動をそのまま出していたら、絶対説教されたと思います。
どんなに苦労して子どもたちを育ててきたか、とか、そんな態度をとるなんて、ろくな人間じゃない、とか…。それが嫌だったというのもありますね。
と言いつつ、実は「形だけの反抗期」を演じて見せていました。
「反抗期があること」が「まともな子」の証らしい、と聞きかじっていたからです。
そして、「私は反抗期のあるまともな子どもよ」と、親を安心させようとしていたという…、カモフラージュのうまい、ややこしい子どもだったのです、私は。だから、親は「この子には普通に反抗期があった」と思っているんですよね。
というわけで、「本当の反抗期・親離れ」を、経験していない私は、息子のいたってまともな親離れに戸惑うわけです。
未知との遭遇ですから。
そして、無意識に自分が親にしていたこと(親に気を遣って自分の気持ちを抑える)を我が子にも求めてしまう心理はどうしてもあるようで、ごく自然で自由な我が子の態度を押さえつけたい欲求を感じることもしばしばです。
でも、ここは私が大人の心を立てて、「ま、こんなもんか」と見守るのがベターなのでしょう。
それにしても、息子の親離れが始まった時、自分でもちょっとびっくりするほどうろたえました。
「えええ~!なんか寂しい!なんかすごい一人ぼっちの気分になるやん!」と。そして、すがりつきたいような気持ちも感じました。
心にぽっかりと穴が開いたような気分。これが「空の巣症候群」かあ…とためいきをつく私でした。
少し時間が経って、「これからは自分のやりたいことをもっとやれるんだ!」と気持ちが切り替わってきたものの、「でも、何ができるの、私?」みたいな感じです。
とりあえずしばらくは余裕のある時間をのんびりと楽しみつつ、でもやっぱり内心少々うろたえつつ、これからの道を探っていこうと思います。