近所のパン屋さんのお話。

今住んでいる、岐阜の各務原市というところは、仕事の為に昨年引っ越しをしてきたのですが、家の近所に、「どんぐりの森」というパン屋があります。
そのパン屋さんは、家から職場に行く途中にある、本当に小さなパン屋さんで、その名前のように、とてもかわいい外観をしています。
仕事帰りに初めて立ち寄った時、店内は、狭いながらも、雑貨で飾られた店内に、玄米パンやクルミパンと言った、とても体にも良さそうなパンが並んでいました。
数はそんなに多くありません。夕方付近になると、ほとんど売り切れるからだそうです。
そのお店の店主は、なんとも品のいい奥さんで、エプロンをして、三つ編みを冠のようにした髪型なのですが、その風貌は、まさにこのお店のメルヘンチックにぴったりだなという感じだと思いました。
お店の外観から、店内、そして店主まで、何から何までメルヘンチックに統一され、とても素晴らしい感じです。
けれども、そんなお店だからこそ、何故かちょっとした違和感を感じるものがありました。
玄米パンと発芽玄米パンに棚に付けられたポップです。
「玄米パンと発芽玄米パンの違い。玄米パンをサイア人だとしたら、発芽玄米パンは、スーパーサイア人ちゅうことや。どや、わかりやすいやろ!」
吹き出し型のかわいいポップに、あの品の良さそうな奥さんが書いたとは思えない、なんとも個性的な説明書き。。。
でも私は、人の内面は、外見とはだいぶ違っている場合もよくある事は知っていますから、特に気にしないで店を出ました。
店を出るとき、出入り口の柱に、こんなポップがありました。
「明日も来てや!いいパンは、いつでもあると思うなよ!」
これもまた、個性的なポップだな、と思い、その店を後にしました。
またしばらくしてそのお店に行ったのですが、そうしたら、今度は、この間の品のいい奥さんでは無く、なんと、大柄で、がたいが良く、坊主頭のいかつい店主が出てきました。
メルヘンチックのかわいらしい店の雰囲気には全く合っていません。
私は、なんとなく、違和感のあるポップの正体がわかった感じがしました。
パンを買うと、「おおきに!また来てな!」と言われ、私は確信しました。
それ以来、何故かそのパン屋に行くと、お店のレジは、品のいい奥さんでは無く、そのがたいのいい旦那さんばかりでした。
そして、だんだんと話しかけるようになってきて、「兄ちゃん、おや、今日は休日なのにスーツなん?仕事?ご苦労なこったなー。」とか、あれこれと話しかけるようになり、しばらく行かないと、「兄ちゃん、久しぶりやん!もっと来てやー!」なんて言うようになってきました。
そしてなんとある時は、「兄ちゃん、そのパン買うか!それ正解やで!そのパン食べられる兄ちゃんは幸せ者や!」などと、パン屋とは思えない恩着せがましい言い方もしてきました。
そして、レジを済ませ、私が帰ろうとすると、その人は、何故か耳打ちするようにしてこう言いました。
「兄ちゃん、そのパンな、一気にペロッと食べても、わしは笑わへんで。。。それっくらいうまいからな。誰でも一気に食べてまうんよ!」と。
私は、そんな事全く気にしてないのにと思いながら、「は、はい。ありがとうございます。
」と伝え、店を出ました。
正直なところ、「普通に売ってくれたらいいな。」と、よく思っています。
でも、久しぶりにその店に行くと、珍しくその日は、奥さんがレジに立っていました。
このメルヘンチックなお店によく似合う、三つ編みを冠にしたような髪型で。。。
そして、店をよく見たら、玄米パンの説明のポップも、成分や、栄養価を表す、すごく普通な感じのポップに変わっていました。
さすがにサイア人の例えでは、あまりにもわかりにくいので、奥さんがちゃんとしたものに書き換えたのかもしれません。
私は、レジの人が、いつもの坊主頭の旦那さんで無い事が、ちょっと残念でした。
ええ、もちろんほんのちょっとだけですが。。。
ところでなんですが、この二人って、きっと夫婦だと思うのですが、あまりにも個性が違いすぎる二人だなと思うんです。
でも、こんな組み合わせって、心理学を学んでいると、不思議でもなんでもなく、人は、自分に持っていない資質を持っている人を好きになる性質があるようなので、むしろ、本当に惹かれあったカップルかもしれないなと思いました。
本当にロマンあふれた、素晴らしいカップルなんだろうなと思いました。
もしかしたら、ポップの書き方など、個性の違いで喧嘩する事もあるかもしれませんが。。。
今回は、近所にあるパン屋さんを例に、「夫婦」というもののあり方について書いてみました。
でも、そんなたいそうな事を言いたい訳では無く、ちょっと「くすっ」としてもらえたら嬉しいです。
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この記事を書いたカウンセラー