父がくれたお財布の話

私が高校生2年生ぐらいの頃。
父が、お財布を買ってくれたんですね。
どういう経緯か分からないのですが、
スーパーの買い物について行った私に、急に
財布を買ってあげるから、選びなさい、って言いだしたんです。
当時の私は、別にお誕生日でもないし、
記念日でもないのに、どうしてなんだろう?って不思議に思いながら
売り場で並んでいたお財布の中から
真ん中ぐらいの値段の、緑色のチェック柄のお財布を選びました。
帰り際、
「いや~、お前の財布の値段よりも、
お父さんの財布に入っているお金のほうが少ないわ(笑)」
ってネタにされたりして、
お金を使わせてしまって申し訳ない気持ちと、
お財布を買ってもらえた嬉しさと、
父の愛情と、きまずさと、ごちゃまぜになって
なんだか、泣きそうな気持ちでお家に帰ったことを覚えています。
そしてそのお財布は、私の宝物となり。
なんと、私は20代半ばまで、そのお財布を使い続けてたんですね。
ところどころ、破けていたり黒ずんでいたりで、正直、ボロボロだったのですが、
なんだか、父とのつながりを切っちゃうような気がして、
買い替える気になれなかったんです。
とくに当時の私は、両親の反対を押し切って
夢を追いかけて上京生活、真っただ中だったので、
せめて、このお財布を大切に使い続けることが、
私から父に対しての愛情表現なんだ、
・・そんな風に、勝手に私は思っていたのですが、
ある日、父に叱られたんです。
「もっといい財布を持ちなさい!情けない!」って(笑)
そんなことを言われると思ってもみなかった私は
びっくりして、言い返しました。
このお財布は、お父さんからのプレゼントだったから、
大切にしたかったんだよ!って。
でも、父は、
自分が買ってあげたものを大切にしてもらうよりも、
私が、もっともっとステキなお財布を買えるようになって、
「ほら、こんなにステキなお財布を買ったよ!」
って、自慢してもらった方がよっぽど嬉しい!
それが、親孝行ってものだ!!って私に言ったんです。
当時の私は、なんだか複雑な思いが入り混じり
父の想いを、素直に受け取りきれなかったのですが、
その後、心理学を学んだり、ワークショップに通うようになり、
自分の持っている「娘視点」だけではなく、
「親視点」のお話をお聞きするようになり・・・
なるほどなぁって、当時の父の愛が、腑に落ちるようになってきたんです。
父が子供の頃は、戦後のまだまだ物が足りてない時代で、
欲しいものがあっても、手に入れることが出来ない時代だったと聞きます。
だからこそ、自分の子供たちには
なにか買ってあげたい、豊かさを手に入れて欲しい、
恥ずかしい思いをして欲しくない、という願いは強かったんだと思うんですね。
でも、私はずっと、
そんな、大変な思いをして育ててくれた両親に遠慮して、
私だけが、良い思いをしちゃダメだって思っていました。
だから実は、お財布だけではなく、
食べ物も、着るものも、旅行や、趣味など、
とにかく自分にお金をかけることが出来なかったんです。
それはそれで、娘の愛に違いないのだけれど
でも、本当は・・遠慮なく人生を楽しんで、
いっぱいいっぱい、幸せ自慢をして
「私を育ててくれて、ありがとう」
「私はこんなに、豊かに過ごせていますよ~」
って、姿でみせてあげるとこが、
一番の親孝行なのかもしれないなって、思ったんですよね。
そこからの私は、
すこ~しづつですが、自分のためにお金を使えるようになっていったんですね。
それに伴い、父との関係も良好になっていきました。
・・・実は今年のお正月に、財布を買い替えたのですが、
父も一緒に選んでくれたんですね。
そのときに「そういえばこんなこともあったなぁ」って思い出して
胸が温かくなったので、コラムでご紹介しようかなって思いました。
もしみなさんの中にも、「親孝行したい」という思いがあって、
それが「遠慮」という形で表現されているとしたら
もしかすると、遠慮を手放して、あなたが幸せ自慢話をしてあげたほうが、
あなたの大切な人を喜ばせるかもしれませんよ?^^
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
服部希美のプロフィールへ>>>

この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛、対人関係の改善、自分が本当に望んでいる人生へのシフトチェンジへのサポートを得意とする。 特に「さびしさを笑顔に変えるカウンセリング」をテーマに掲げ、30代女性の生き方、恋愛・婚活サポートを精力的に行っている。 高い共感力を活かした「共に考え、併走する」カウンセリングスタイルが好評。 

1件のコメント

  1. 素敵なお話ですね!
    私も学生時代のことですが、父に負担をかけたくなくて、安い下宿にしようとしたところ、見に来た父に「あまり惨めな思いはしなくていいから」と言われ、ワンルームマンションに決めたのを思い出しました。
    今は親として、子どもには遠慮はして欲しくない、満たされて幸せでいて欲しいと切に思います。
    自分自身も常に最良を選んでいきたいですね。