3月も終わりですね。
春という季節は、寒い冬から暖かくなってきて、うきうきと楽しいものでもありますが、年度が変わり、卒業、入学、引越しや異動など、とにかく変化があちこちで起こる、そんな季節でもあります。
すると、うきうきと楽しいばかりではない「春」を経験する方もみえるかもしれません。
また、これまで何度か過ごしてきた「春」の中には、苦いものもあるのは、珍しいことではないかもしれませんね。
私の過ごしてきた「春」の中にも、そんな思い出深い「春」があります。
それは、私自身に起こった変化ではありませんでした。
周りの変化についていけなかったというのが、本当のところでしょう。
就職して、2年目の春のことです。
私の会社にも新入社員がたくさん入社してきました。
例年よりも多かったようです。
更衣室は、新入社員でいっぱいになりました。
社会に出たばかりで、テンションの高い彼女たちが、普通にお喋りしているだけで大音量です。
もともといた社員が小さくなって着替えるような感じでした。
会社の雰囲気も、なんだか全然違いました。
浮足立つようで、ざわざわと落ち着きません。
通勤電車も、4月は、すごい混みようです。
慣れない新入社員や学生でいっぱい。これもまた、落ち着かないものでした。
月曜日のことをブルーマンデーなどと言いますが、その頃の私は、ブルーどころではないくらい、週末が明けた月曜日は気が重いものでした。
思うことはひとつ。
「ああ、またあの混沌とした中で過ごすのか。」
月曜日が、雨だと必ず起こることがありました。
電車で貧血が起こってしまうのです。
ふた駅前から乗ってくる友達が、いつも私の前に座っていて、彼女によく席を譲ってもらったものでした。
病院に行くと、自律神経失調症と言われました。
「何か、生活が大きく変化したこととか、ありますか?」
と先生に聞かれて、はたと気づいた、その「春」のさまざまな変化。
私自身が異動になったわけでも、入社したわけでもなかったんです。
それなのに、まるで当事者のように、変化の波に飲み込まれてしまい、心も身体も対処できなかったようでした。
変化というのは、自らが起こすものもあれば、この時の私のように、周りからの影響を受けるという場合もあって、知らず知らずのうちに大きなダメージになっていたりするもののようです。
私自身、周りから影響を受けるタイプどころか、大雑把なタイプでしたし、だいたいのことは、大丈夫ぅーと受け止めるようなところがありました。
ですので、この時のことは、わたしの中では、非常に衝撃的な出来事でした。
そんな私はというと、その後、そういった症状はすぐ治まっていったのですが、その時の心理が、なかなか興味深いのでご紹介しておこうと思います。
いち個人の体験談としてお読みいただけたらと思います。
病院では、雨の月曜の朝に、電車で倒れる私にお薬が出されました。
白い薬の袋を眺めながら、私は、先生の「変化」という言葉を思い出しました。
新入生がたくさん入ってきて雰囲気が変化しただけなのに、
4月の電車がとっても混んでいるというだけなのに、
月曜日というだけなのに、
雨が降っているだけなのに、
私はこんなにも、ダメージを受けていたなんて。
倒れちゃうほど。
なんでもないとやり過ごしてきたつもりでいた自分が、なんだか可笑しくなってきました。
自分のことを「可哀想」と思うことも、「ダメなやつだ」と思うこともできたかもしれませんが、その時の私は、いろんなあたりまえのものから、ものすごく影響を受けていて、それを「なんでもないこと」だと、なんとかやり過ごそうとしていた自分のことを、「なんて一生懸命で、健気なんだ」と思い至ったのでした。
「こんなにがんばってたんだ、私」と、がんばっていた自分をみつけてあげたら、気が済んだような気分になったのです。
その後、朝の電車は5月のゴールデンウィーク辺りになると、学生が減り、空いてきました。
賑わっていた新入社員も、だんだん落ち着いてきたのと、私自身も慣れてきたことで、新しい風景ではなくなりました。
なんだかわからない塊のようになっていた新入社員ですが、そのひとりひとりと知り合っていくことで、未知の塊ではなくなっていきました。
新しい知らないものから、知っている慣れたものへと「変化」したようです。
この春、いろんな「変化」を体験される方もたくさんいらっしゃると思います。
多かれ少なかれ私たちは、絶えずお互いに、影響を与えたり、受けたりして生きています。
よい影響もあれば、ダメージになることもあるでしょう。
疲れてしまったり、放り出したくなる時もあるかもしれません。
いきなり身体に症状が出て、びっくりすることもあるでしょう。
周りのいろんなものに、折り合いをつけようとしていた自分を褒めてあげるところです。
お休みや、ご褒美をあげてください。
次には、よい「変化」がやってきますよ。
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