劣等感コンプレックスを抱くのは、競争の世界に住んでいて“負けた”と感じるからです。私たちが競争の世界に住むのには、大きく分けて2つの目的があります。
その第1の目的は、自己価値の証明をする為です。第2の目的は、自分が駄目な(価値が低い)人間であることを感じる事や確認する事です。
それらの目的は、顕在意識下にあって気づいている場合もあれば、潜在意識下にあって気づいていない場合もあります。
劣等感コンプレックスを癒すためには、競争を手放す事が必要です。
その為には、自身の“認知パターン”を変化させる事が必要になります。
本文ではそのために必要な事柄をいくつか具体的に例示しています。
また、一歩下がってその競争している世界を客観的に眺めてみると、また違った世界観が得られて劣等感コンプレックスを癒すことができます。
◎リクエストを頂きました◎
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「学歴コンプレックス」と「外見コンプレックス」をどうすればいいのか 教えて下さい。
私は、偏差値50以下の公立高校を出ており、大学は偏差値55ぐらいの私立を卒業しました。
卒業してからもう15年以上も経つのに、いまだに相手の出身校をとても気にしてしまいます。相手がトップの高校の出身者だと聞くだけで、なんだか委縮してしまいます。会話をしていても、のびのび出来ないのです。
「この人は頭がいいから」とか「私は頭が悪いから」と、鬱々としてしまいます。
外見の良い同性も苦手です。「この人は綺麗で自分はみっともない」と思っていまいます。相手の目の前に立つこともできないのです。
こういうコンプレックスはどうすれば直るのでしょうか?
そもそも 直るものなのでしょうか?
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自分が劣っていると感じるのは、“誰か”と“何か”を競争していて、「負けている」と思うからですね。
いつもその“何か”を意識しながら競争の世界で暮らしている訳です。
これはとても辛い事ですね。
では、そもそも私たちは何のために優劣をつける競争の世界に生きるのでしょうか?
その目的は、大きくは2つに分ける事ができます。
先ず1つ目の目的は、自分が人より勝っている事を感じる事や確認する事です。
この目的を持つ人は、心のどこかで自信の無い、自己肯定感の少ない人です。
自分では自分の事が認められないので、人と競争して勝ったと実感し、その証を手に入れて、ようやく自身で自分の価値を認められる人達です。
ところが、人との何かの競争で勝ったとしても、心の奥底では満足感が得られません。
多くの場合は親なのですが、本当に自分の価値を認めて欲しかった誰かから認めてもらえなかった事、あるいは自分自身でその誰かの期待に沿っていないとして当然にその誰かからも認めてもらっていないに違いないと思い込んだ心の傷ついていて、自分が人より勝っている事をいくら証明したとしても、認めて欲しかった誰かから認められたいという欲求は満たされないからです。
従って多くの場合は、また次の勝負に挑んでいくという形になります。
2つ目の目的は、自分が駄目な人間であること、すなわち価値が低い人間であるという事を感じる事や確認する事です。
人間には誰しも自分を認めたい、認められたいという欲求があるのが一般的ですが、この場合の目的は逆の目的になります。
それは、自分は劣っていると感じる事で、「どうせ僕は劣っているから」と誰かに認めてもらえなくても、また、何かを失敗しても傷つかないような防衛ラインを作ったり、何かをやらなくて済む理由にする事が為などの目的です。
そして、自分を認めてくれなかった誰かに対して怒っていて「あなたの思う通りの人間でしょ」と自分をおとしめているのです。
しかし、この目的を達成したからといって、決して自分の人生がより良くなるわけでもなく、また、怒りが解消されるわけもありません。
本来は心が傷つかないように防衛する事が目的だったのですが、劣っていると感じるそのままの位置で立ち止まって、逆に心を傷つけているのですね。
目的から見れば、本末転倒という感じです。
さて、人によりますが、第1の目的も、第2の目的も、何となくという状態を含めて顕在意識でわかっている場合もあり、また、潜在意識の中にあってわからない場合もあります。
特に第2の目的は分からない場合が多いかと思います。
劣等感コンプレックスがあるのであれば、その目的が何なのか、そしてその目的に沿って今どんな事が得られているのかという事を「いい」「悪い」の判断をすることなく、客観的に自分の心に問いかけてみられてはいかがかと思います。
きっとそこにはそれなりの理由があるはずです。
そして、その理由を大人になった今の視点で見詰め直してみる事で、その呪縛から解き放たれるかもしれません。
さて、では劣等感コンプレックスを癒すためには具体的にどのようにすればいいのでしょうか?
根本的には、競争の世界から競争をしない世界へと移り住めば劣等感コンプレックスは無くなります。
しかし、理屈でそうわかっていてもなかなか難しいと感じるかもしれません。
それを難しいと感じるのは、自分が変化する、あるいはやり方を変えるという事に対する怖れから出てきているものです。それが“腑に落ちる”というところまで前進する事を阻んでいるのです。
この怖れを自身の力で克服するには、本当に耐えられなくなる苦しい状況にまでに至るか、「自分は変化して幸せになる」との強い決心をする事が必要です。
前者は、例えば病院嫌いの人が「お腹痛いけど医者に行くほどではない」とまだ言えている状態から「救急車呼んで」という状態になるようなものですね。後者は、病院嫌いの人が「医者へ行くぞ」と自身で決意して病院に行くようなものです。
変化をする為には、今までの物の見方や捉え方、考え方や感じ方など“認知”を変える必要があります。
その全てを変えようと思う必要はなく、どこか少しでも変える事ができれば、ご自身の“認知”のパターンがその部分を起点に変化していきます。
その変化を誘うためには、次のような事柄をやってみてください。
(1)競争している“何か”は視野を広げて客観的にどの程度影響があるかを考える。
(2)人の、「価値あると感じる部分」と、自分の、「価値が無いと感じる部分」を比較していないか見直してみる。
(3)自分の価値ある部分や、人や状況(例えば、住んでいる町、働いている職場、使っている物)の価値ある部分を言葉にして、価値の捉え方を広げる(見方を広げる)。
(4)小さい頃、誰に自分の価値を認めてもらいたかったのか、どうしてその人は価値を認められなかったか(あるいはそう感じたか)の理由を今の視点で見直してみる。
(5)今の自分を肯定し、許していない誰かがいればそれを許そうと思ってみる。人間を“神様”の如く扱わない
(6)人には様々な側面があることを認めてみる。完璧な人間はいない事を理解しようと思ってみる。
その渦中にいるときにはそうは思えないかもしれませんが、小さな世界にこだわってそこに目を奪われてしまうと、その世界が全てと感じてなかなか抜けられないものです。
一歩下がってその世界を客観的に眺めてみると、また違った世界観が得られるのではないかと思います。
(完)