自分のコンプレックスは人から見ればそれほど大したことのないもののように思えます。ということは、逆に見れば、私たちは知らず知らずのうちに相手のコンプレックスを刺激してしまうこともありうるということ。
でも、そこに気を使うことも間違いなのかもしれません。
あなたの態度が相手のコンプレックスを解消するお手伝いをすることになるのです。
他人のコンプレックスを癒す方法
あなたのコンプレックスは多くの人にとって「大したことには思えないもの」と言ったら、嫌な気分になりますか?
前回までAさんからDさんまでのお話を読んで、どう思われたでしょうか?
本人はすごく深刻なのですが、思い切ってそれをコンプレックスを告白すると「え?そんなことで?」と思われたりするくらいなんです。
でも、そのことは逆に、あなたはそんなつもりはなくても相手のコンプレックスを刺激してしまうことがある、ということを表しています。
いわゆる「地雷を踏む」ということになりやすいのです。
例えば、こんなケースがありました。
ある奥さん、Eさんからのご相談でした。
共働きなのですが、奥さんの方が収入が少し高いんですね。
今年の春、ご主人がこれまでの頑張りが評価されて昇給したんですね。
奥さんは頑張ってる姿も知っていたからすごく嬉しくて、「おめでとう!よかったね!ほんと頑張ったかいがあったね!」と伝えたら、いきなり旦那はムスッとして黙ってしまったそうです。
奥さんはその反応を見て「せっかく褒めてるのに何その態度・・・」というイラッとしてしまったんですね。
それからしばらく何となくギクシャクした空気が二人の間に流れていたんです。
「ああ、それ、彼のコンプレックスに触れてしまったんだと思いますよ」と言うと、奥さんは目を丸くして驚かれてました。
ええーっ!?どうして?どうして?と。
彼、おそらく自分の収入が奥さんよりも低いことにコンプレックスがあるみたいなんです。
それは彼の競争心という問題なんです。
本来であれば、収入の多少で評価するのはおかしいのですが、彼の中には「妻より収入が少ないなんて、情けない夫だ」という思いがあるんです。
(こう思ってる方は意外と多いですね)
でも、奥さんは自分が収入が多いことに特にこだわりはなかったので、彼がそこまで気にしているとは思いもよらなかったんです。
そんな関係性の中で、昇給したことを無邪気に喜んでいる姿が、彼のコンプレックスを直撃してしまったわけです。
彼は嫌味を言われてるような、バカにされてるように受け取ってしまったみたいです。
もしかすると、そんなことでむかついている自分にも嫌気がさしているかもしれません。
奥さんが純粋に喜んでくれていることは伝わっていると思いますから。
そうするとダブルで自分を責めてる状態なんですよね。
(収入が少ない自分はダメだ+奥さんの純粋な思いを受け取れない自分はダメだ)
じゃあ、どう言えば良かったの?と思いますよね。
私として悪気があったわけじゃありませんから「奥さんの態度に問題はないと思いますよ。やっぱりそう言っちゃいますもんね」とお答えします。
嫌味があって言ったわけではないのですから、そこに罪はないと思うんです。
もし、彼のコンプレックスを理解した上でも、同じように表現していいと思います。
それは「私は収入が多いの少ないので夫婦で競争するのは同意しない」という態度にもなります。
でも、そのことで関係がぎくしゃくしてしまいますよね。
それを2人の課題、2人が乗り越えるべきテーマとして受け止めることが大切ではないでしょうか。
目を背けるのではなく、そのギクシャクは2人にとって必要なことと前向きに捉えたいのです。
それは彼のコンプレックスに同意しない(すなわち、私は収入が低いからと言ってあなたのことを見下したり、私の方が優れているなどの意識は持たない)ことにより、彼のコンプレックスを解消していくこともできるのです。
そのためにはふだんから、彼のコンプレックス解消のために「いかに彼が素晴らしいか」「彼のことを尊敬しているのか」「彼の仕事が世のためになっているのか」を今まで以上に伝えて行くことが大切だと思います。
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でも、ちょっとその部分を掘り下げていきましょう。
私はEさんにこんな質問をしてみたのです。
「ふだん、ご主人よりも収入が多いことで、引け目を感じていませんか?それってあまり良くないことだな、と少しでも思ったりすることありませんか?」
自分の収入が多いことに少しでも引け目を感じているのもやはり、ちょっとご主人のコンプレックスを助長してしまう可能性があるのです。
もし、奥さん自身の心の中に「男よりも稼いではいけない」「男を立てなければならない」「女は一歩引いていなければならない」みたいな観念が本当に無かったとしたら、きっとご主人はそのことでコンプレックスは抱き続けられないのです。
実際、彼女の中にそれは少しだけあったようです。
(これまた多く私たちの中にあるものですね)
それはやはり生まれ育った家庭の影響が多分に含まれました。
ならば、少しだけ残っているその観念を手放していくこともまた、ご主人のコンプレックスを解消してあげることになります。
自分の収入の有難みや恩恵を受け取ること。
自分の能力や才能を認めること。
仕事や会社に恵まれていることに感謝すること。
そして、
自分の成功がご主人の成功にもなること。
自分が豊かになれば、夫婦そろって豊かさを享受できること。
ご主人とのつながりを深めること。
「夫のコンプレックスだから」と彼任せにする必要はないのです。
自分自身の中にも、そのコンプレックスを通じて学び、気付き、癒し、手放し、許すものがあるのです。
ちょっと痛くない腹を探られる気持ち悪さはあるかもしれませんが、謙虚に向き合うことで自分自身の成長になり、また、2人の絆をさらに深めるものになるのです。
(了)