自分の子どもが「悲しい」「つらい」「寂しい」など、ネガティブな気持ちを感じている時、親としてはもちろん少し心配になりますが、それだけならそれなりに冷静でいられると思います。でも、自分自身が強く感情移入してとても苦しくなってしまうとしたら、ちょっと考えてみた方がよさそうです。
普段は感じていなくても、心の中で「つらいよ~」と言っているチャイルドが隠れているのかもしれません。そのチャイルドに向き合い、何がつらいのか耳を傾けてあげ、よしよししてあげて、その上でチャイルドが抱えている誤解(自分は愛されない、という思い込みなど)を解除することができたら、子どもに対しての感情移入が軽くなってきます。
◎リクエストを頂きました◎
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メルマガ「すぐに役立つ心理学」を拝見している者です。とても有意義なメールをいつもありがとうございます。是非お聞きしたいことがあり投稿させていただきます。
私には二人の子供(小1,年中)がいます。今朝、4月から小1の息子がお友達と通学中、息子が名札を忘れた事に気付き、二人で引き返す途中、お友達が転んで額にケガをしてしまいました。(そこそこ出血していました。)私が出勤しようと自転車をこぎ始めた時、正面から、大声で泣き叫びながら片方脱げた靴を持ち、息子が戻って来ました。その姿や「僕が悪いんだ、名札を忘れたから!!」と自分を責める彼の気持ちがすごく辛いです。
自分に移り過ぎている自分にふと気付きました。でも、思い出すと胸がぎゅーっと締め付けられ涙がでそうでたまりません。子供の寂しい感情には、度々感情移入しすぎると思っています。やはり自分が幼少時の影響があるでしょうか?どうしたら気持ちを静め落ち着けるでしょうか?
(一部編集させていただいております。)
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リクエストをいただきありがとうございます。
我が子がネガティブな感情を感じているように思える時、親の自分が感情移入し過ぎてしまうとしたら、そこにはどんな背景があるのでしょうか?
子どもがネガティブな感情を感じている時、親としては心が揺さぶられますよね。それは当たり前の「我が子を心配する気持ち」ですが、実はそれだけならひどく苦しくはならないんです。
リクエストの方の場合、「我が子を心配する気持ち」と同時に、「過去の自分の未消化の気持ち」を感じてしまうためにとても苦しいのでないかと思います。二つの感情が同時に表れると、大きな感情のように感じられ、自分でも驚くほど心が揺れるのです。
我が子のことでなくても、「過去の自分の未消化の気持ち」は、きっかけがあれば噴き出してきますので、もしかしたらテレビや映画を見ると涙がよく出てしまうとか、お友達の話にも心が動きやすい、という傾向があるかもしれません。
いずれにしても、「過去の未消化の気持ち」がどんなものであるか理解することがまず第一歩となります。
さてでは、どんな気持ちが未消化になっているのでしょうか?
それはやはり、「ネガティブな気持ち」ですよね。
「悲しかった」「つらかった」「寂しかった」など、子ども時代に感じていたネガティブな感情を出さないように封印(抑圧)していなかっただろうか?と振り返ってみてください。
「悲しかった私」「つらかった私」「寂しかった私」などのイメージが心の中に浮かんできたら、まずは、「そうだったんだね」と優しく落ち着いて受け止めてあげてください。この時、大人の自分がチャイルドの自分を受け止めてあげる、と考えてください。
それができたら、この子はどうしてこれらの感情を封印していたのかな?と考えてみましょう。
忙しい両親に心配をかけたくなかった、とか、親に言ってもダメだと思っていた、などという事情があるはずです。これは一見あきらめのよい「いい子」のように見えます。
でも、実は…ここにヒミツがあるのです。
「親にはこの気持ちを言えない」と思いつつ、その一方で、かなり怒りを感じていたりするんですね。「親なら察してよ!」とか、「もっと私に気持ちを向けてよ!」とか。でもその気持ちもまた封印し、「ガマンする私」でやってきているのです。
そして…、「こんなにガマンしてきたのは親のせいだ」と思っている自分がいるんです。「だから私はこんなに悲しい気持ちを抱えたままなのよ、親ならなんとかしてよ!」と、本当に知らず知らず、思っていたりするんですね。
しかも、です。
「親ならなんとかしてよ!」という気持ちを持っていると、我が子に対してもそう思われているような気がします。「お母さん、親ならこの状況何とかしてよ!」って。
そうすると「我が子を心配する感情」+「過去の未消化の感情」+「我が子に責められている感覚」を同時に感じてしまうので、どこに焦点を当ててよいのかわからなくなり、心がパニック状態になってしまいます。
さてさて、ここで、「ガマンしてきたのは本当に親のせいかどうか?」なのですが…
私自身が、長年「親のせい」と思ってきました。いろいろ事情はあったにせよ、親が未熟であった、と。ただ、これでは完全には気持ちがすっきりしなかったのです。
ですから、「さらにその先」に考えを伸ばしていくことが重要だと思っています。
「その先」とは。
子どもって、未熟ですよね。だから保護者が必要です。成熟していないんです。
「親のせい」と怒った自分は子どもでした。だとしたら、自分の見方が未熟だったのかもしれません。子どもは親に完璧を求めます。そして、「私の求めた愛し方じゃない」とへそを曲げたりします。「私の思い通りに愛してくれない親は未熟だ」と。そして、愛を受け取らない、という態度をとったりするのですが…
このやり方そのものが未熟、ではないでしょうか。
子どもの時は未熟で当たり前なので、それはそれでいいんですね。それが悪いということでは全然ありません。ただ、大人になった今なら、かつての自分の姿を冷静に見ることができますよね。
親が未熟だったのではなくて、自分が未熟だったのだ、ということがわかると、「親のやり方が悪かったから私はガマンした、つらかった」という土台がくずれ、思わず笑いが出てきたり、脱力してしまったりします。
ここまで来ると、我が子がネガティブな感情を感じている時にも、親としての自然な心配はありつつも、冷静でいられるようになるでしょう。
とはいえ、ここまで一気に、というのは難しいものです。まずは、「ガマンしてたんだもん~」という心の中のチャイルドをよしよししてあげてください。それだけでも少し気持ちを静める効果があります。それに慣れてきたら次の段階を考えてみてください。
やり方がよくわからない場合は必要に応じてカウンセリングもご利用してみてください。
(完)