嫉妬感情は、嫉妬する側も、される側もしんどいものです。特に、嫉妬の対象となる側は、受け身である分、その不快感と自分の問題とを結びつけにくいので、どう対処していいのかわからずにイライラします。
人にヤキモチを妬き、攻撃的な気持ちになったことがあれば、他人も自分に同じように攻撃的な気持ちになるだろうと怖くなりますし、嫉妬してはいけないと自分を戒めていれば、自分がやらないと決めている事をやる人に怒りを感じるものです。
また、嫉妬に隠れている「あなたになりたい」という欲求をまともに受けとめてしまうと、「一緒ではない」ことの罪悪感が刺激されてイライラすることがあります。「あなたはあなた、私は私」と心の境界線を大事にしながら、相手が自分の問題を乗り越えることを信頼できるといいですね。
◎リクエストを頂きました◎
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嫉妬されてイライラするのをどうしたらいいでしょうか。自分は相手を見下しているつもりはないのですが、嫉妬されていると感じると妙にイライラするのです。「競争」も嫉妬の一つではないかと思うのですが、何でも話の中心にいなければならない人や、対抗心を向けてくる人を不快だと感じます。相手にその自覚がないと指摘して傷つけたくなります。
嫉妬する側も苦しいのかもしれませんが、それを向けられる側がなぜ我慢しなくてはならないのか、と理不尽に感じます。嫉妬される側は不快感をどう対処したらいいのか。なぜこんなにイライラするのでしょうか。
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リクエストをありがとうございます。
嫉妬感情は、嫉妬する側も、される側もしんどいものです。
嫉妬する側は、自分「発」の感情なので、それは自分の問題だと自覚しやすいですが、嫉妬の対象となる側は、受け身である分、その不快感と自分の問題とを結びつけにくいので、どう対処していいのかわからず、ただイライラすることが多いかもしれません。ご相談の方の言うように、嫉妬している側が自分の焦れている気持ちに無自覚だと、嫉妬された側が余計にイライラするということもあります。
とはいえ、嫉妬の対象となりながら、どこ吹く風とばかりに涼しい顔でいられる人もいるので、今回は、どうして不快に思うのか、またそんな自分の気持ちとどう向き合えばいいのか、考えてみます。
嫉妬を向けられることへの怖れ
「嫉妬されるのが怖い」という方は少なくないでしょう。目立つとたたかれそうで怖い、というのはとても多くの方が持つ「成功する」ことへの怖れの一つです。世界で一番美しくなってしまった白雪姫のように毒殺されるのではないかと怖くなるのですね。
この怖れを見ると、まず、「投影」という心の働きがあることがわかります。
自分もヤキモチを妬いて、「キーッ、羨ましい!私ができないのにアヤツだけうまくいかせたくない。足を引っ張りたい、、、」と悶々とした経験があれば、自分が呪った分、他人も呪うに決まっていると思うから、嫉妬を向けられると居心地が悪くてしかたがなくなります。
また、「嫉妬してはいけない」と自分を戒めていると、自分が自分に禁止していることをそばでやられると腹立たしいものなので、嫉妬している人を見ると、自分がその対象でなくとも、「見苦しい」し、「恥ずかしい」と感じます。
さらにもう少し深く見ていくと、自分が天に吐いた唾が落ちてくるというだけではない、嫉妬する相手と「競争」せざるをえないような、絡まれる感じを「怖い」「不愉快」と感じていることがあります。
私たちは、全く関係のない人に嫉妬することはあまりありません。わずかでも関係性があるとき、もしくは同じ要素があるにもかかわらず「いっしょ」でないところにヤキモチを妬き、競り合いたくなります。そこに自覚はなくても、嫉妬感情は、「あなたのココが欲しい!」「あなたになりたい!」という想いが隠れています。
嫉妬の対象になると、嫉妬する人との距離感が意に反して近くなり、相手の「欲しい!」という気持ちが自分の中に入ってくるようで「気持ち悪い」し、「怖い」と感じるのではないでしょうか。
心の境界線をめぐる攻防
このように、嫉妬されるとまとわりつくような不快感を覚えるとしたら、あなたは自分の気持ちと他人の気持ちを切り分ける「心の境界線」が緩い人なのかもしれません。人の想いを自分のこととして感じられる思いやりにあふれた方なのですが、「嫉妬」のような苦しい感情や「あなたと一緒でいたい!」という相手の欲求を向けられると、つい「私が悪いの?」「一緒でなくてごめんなさい」といった罪悪感を感じる心のクセがありませんか。
「あなたの問題はあなたの問題、私は私」とスパッと切れないから、「いっしょでなくてごめんなさい」と罪悪感が出てくるのですが、これを感じたくないのでイライラします。もしも、思い当たる節があれば、優しさや思いやりは大事だけれども、相手の問題を乗り越える力を信頼して、「頑張ってね」と見守る強さを身につけることが次の課題かもしれません。
関係性のリーダーシップをとる
では、どう自分の心の境界線を守ったらいいのでしょうか。
嫉妬している時というのは、当人には自分の価値が見えていません。自分には価値がないと感じているので、誰か他の人にならなければならないと焦れて、嫉妬の対象である「あなた」になろうと競るのです。
逆に言えば、相手は、競争している「あなた」に大きな価値を見ています。その価値のある「あなた」から、「あなたはココがステキ(凄い)ね」など、いいところを見てもらえれば、気持ちが落ち着くでしょう。
不愉快な想いをしているところで相手の価値を見るのはなかなか難しいものですが、それこそが関係性のリーダーシップをとることに他なりません。もしも、そういう勇気がもてるようでしたら、チャレンジしてみて下さいね。きっとあなたの自信につながると思います。
(完)