結婚したい相手がなかなか現れない女性、ハードワークをして倒れてしまった男性。この二人の実例を元に、「復讐心」について学んでいきます。
自分自身を傷つけることで、誰かに「お前のせいだ」と訴えるのが復讐心。それもまた望む人生を手に入れない理由の一つなのです。
感情を解放することで、そして、子ども時代の思いに気付くことで、その原因となった親を許し、幸せや安心感、喜びを手に入れることができるようになります。
手に入れてしまったら困る・・・意識とは逆の復讐の物語。
私たちのマインドで意外とよく起きているパターンの一つに復讐心があります。
復讐というと相手に対して何かの腹いせに攻撃することを思い浮かべるかもしれませんが、心理学的には、自分自身を傷つけることで自分を愛してくれなかった人を攻撃しようとする心理のことを指します。
幸せにならずに、自分を傷つけることによって、「お前のせいだ」と主張するわけです。
だから、欲しいものが手に入らない裏にはそんな心理が隠れていることも少なくないのです。
かつて、こんな方をカウンセリングしたことがあります。
「私、結婚式って絶対したくないんですよね。だって、ふつう結婚式にはお母さんを呼ぶでしょう?お母さんが喜ぶ顔なんて絶対見たくないんです。」
そう、お母さんに対しての恨み辛み、怒り満載の彼女でした。
でも、彼女の問題は「結婚したい相手が現れないこと」でした。
彼氏はできるし、プロポーズもされたこともあるけれど、結婚には踏み切れませんでした。
「結婚=不幸せ」という思い込みも満載でしたし、そこまでしてもお母さんを喜ばせたくないのかもしれません。
「なんでうちの子は結婚しないのかしら」と嘆くお母さんを見て、ザマアミロ、と思っていたそうです。
しかし、そんな彼女も徐々に自分を解放し始めます。
子ども時代には花嫁さんになることが夢だったこと(でも、その夢をお母さんに否定されたこと)、お母さんが選ぶ、女の子らしいかわいい服が好きだったこと(でも、今は真逆のかっこいいお姉さん)、好きな人ができたけど笑われるのが怖くて誰も言わずにずっと我慢していた小学生時代・・・。
たくさんの恨み辛みを解放し、ようやく結婚したい人と巡り合いました(というか、ずっと彼女のそばで仕事をサポートし、2回ほど告白してくれた彼)。
そして、彼の強い勧めもあって結婚式も挙げました。その数日前、泣きながらお母さんへの手紙を一緒に作りました。
ただ、彼女のように意識でちゃんと復讐心を理解できればいいのですが、案外、私たちは「誰かを喜ばせないために」無意識に欲しいものを手に入れないようにしてしまうこともあるのです。
そんな一つの事例を紹介しましょう。
30代の男性の仕事に関するご相談です。彼はいつもハードワークをしてしまいます。
自分の仕事も山積みなのに、周りの人たちも助けているので、常に残業&休日出勤。
そして、無理がたたって倒れてしまいました。
人の役に立つ好きな仕事だけに、もっと頑張りたいのに・・・という思いを抱えていらっしゃいました。
そこで、カウンセリングの中で家族のお話を伺っていました。どうして倒れるまで働かなければいけなかったのかな?と、その原因を知りたくて。
でも、彼曰く「両親は仲が良く、とても愛されて、愛情深い家庭に育った」とのことでした。
「心理学講座で言われるように、家族との関係も自分なりに考えてみたんですが、あまり思い当たらないんですよね」とのこと。
じゃあ、違う可能性があるのかなあ、と思いながらも、子ども時代の様子を含め、さらに詳しくお伺いしていくことにしたんです。
すると「お父さんもとても忙しい人で、ふだんあまり接点が無かった」という過去が浮かび上がってきました。
彼は「家族の幸せのために一生懸命働いてくれたわけで、とても尊敬できる父親です。」という話をしてくれました。
しかし、これは大人になるにつれて身に着けた“考え”のような感じがしたんですね。
「寂しくなかったですか?もっと遊んで欲しいと思いませんでした?」
そうすると彼は少し考えてから
「確かに昔は土曜日も仕事でしたから、父親が家にいるのは日曜日だけでした。でも、日曜もゴルフやら釣りやらで家を出てしまっていて、あまり遊んでもらえた記憶はありません。」
それを聞いてずいぶんと彼は我慢してきたんじゃないかなあ?と思いました。
だから、敢えて、こんな話をしました。
「そんな倒れるまで仕事するのは、お父さんへの復讐とも言えますよ。」と言うと彼は「え?」とびっくりした顔をされました。
ハードワークをして自分を傷つけることで、自分を愛してくれなかったお父さんに復讐するのです。
「こんなにしんどいのはお父さんのせいだ。僕がこうなったのはお父さんのせいだ」と全身を使ってアピールしているような感じです。
もちろん、ご自身にそんな意志はありません。
でも、逆にこういう目線で見て行くと、それだけ子供時代の彼はお父さんに愛してほしかった、認めてほしかった、という願望が強かったことが分かりますよね。
だから彼はその後の人生で寂しくて愛してくれないお父さんに対し、家族のために頑張って働いてくれるいいお父さんという思い込みを作ったんです。
それだけ嫌いになりたくなかったのでしょう。
彼が周りを助けてまで仕事をするのも、本当はお父さんを助けてあげたい気持ちから生まれたのかもしれないですね。
そうすると彼は愛でいっぱいな人、と見直すこともできるんです。
その復讐心の奥にあるお父さんへの愛に気付くことで、このハードワークのパターンを手放すことができます。
彼にはちょっとした宿題を出しました。
お父さんとサシで話をすること。そして、子ども時代にもっと遊んで欲しかったことを伝えること。さらには、一緒に釣りに行きたい、と伝えること。
後日、近くの池で釣り糸を垂れている間、父親とはほとんど何も話さず一日を過ごしたけれど、不思議とすごく安心感があったそうです。
お父さんからの愛をちゃんと受け取れた彼はきっとハードワークの度合いは減っていくでしょう。