仲間意識を強要しないで!~会社と私の心理学~

会社勤めをしていると、業務以外にも様々な付き合いが出てくるものです。飲みにケーションなんて言葉はもはや死語かもしれませんが、社員同士の交流は業務を円滑にする上で欠かすことはできません。

けれど、そんな社員同士の交流や付き合いを業務命令みたいに強要されたとしたらどうでしょう?「一致団結!」「仲間意識を持て!」と言われたなら、きっとうんざりしてしまってむしろ逆効果なのではないでしょうか。

私たちは誰でも、他人に強要されたり命令されたことには自動的に否定的な感覚を持ち、抵抗したくなるのですから。けれど、どんなに嫌だからといって避けて通れない会社行事。嫌々参加しても楽しくないし、ストレスが溜まるいっぽうです。

今回のリクエスト特集はそんな「会社行事が大嫌い」というご相談に、外資系企業で管理職も勤めたカウンセラーがお答えします。

◎リクエストを頂きました◎
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会社行事が大嫌いです。全員団結!とかみんな仲間だ!みたいな意識を強制される感覚があります。

自分の会社の社長は「仲間」というのにこだわりがあるようで、会社行事で「仲間」をアピールする以外にも、社名の入ったグッズを全員に配布したりしています。社長の一致団結への願いがこめられているのはわかります、でも嬉しいと思ったことは1度もありません。手元に置いておくのも嫌で処分しています。
会社のHPでも、社員同士の仲の良さをアピールしていますが、全員が仲いいわけじゃないのに・・・と冷めた目で見ています。

ただ、業務を円滑にするために、周囲とうまく関わる事は大事だというのは理解できるので、面倒でも会社行事には出席しています。廊下ですれ違えば挨拶します。飲み会ではお酌もします。自部署の人とはうまくやっています。自部署の人とは仕事を通じてじっくり信頼関係を作って来た気がします。

でも一緒に仕事をしたこともない他部署の人と、仲間意識を育め、交流を持て、といわれても、すごく抵抗があるのです。社内で顔を売るためには、日頃から用事がなくても他部署に顔を出したりすべき、と上司には言われますが、とにかく面倒です。このどうしようもない気持ちに、なにかアドバイスがありましたら教えていただけますと嬉しいです。
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仲間意識を強要される

会社行事といえば、定番の飲み会・歓送迎会、力の入ったところだと社員旅行や運動会まで大小さまざまなイベントがあります。

そしてそんな多くのイベントの目的になっていると考えられるのが社員同士の仲間意識を育むこと。

会社がわざわざ経費の一部を負担してまで社員にお酒を飲ませたり旅行に連れていくのは、そうすることで業務が円滑に進んだり、社員同士の一体感が芽生えることを期待してのことでしょう。

以前、私が勤めていた会社でも年に2回社員を集めての懇親パーティというのがありました。確かに私の場合はそんなイベントを通して同僚への親近感は増したし、業務にも良い影響があったと思います。

けれどいっぽうでは、会社行事なんて面倒で「一致団結」や「仲間意識」を押し付けられるのはまっぴらだ、という声もあります。

それもそのはず。

そもそも、仲間意識というのは継続的な関わり合いの中で自然と育まれていくもの。飲み会や懇親会を企画して、さあどうぞ仲良くなってください。なんて言われてもそうそう意識が変わるものではありません。

まして、「仲間意識を持ちましょう」なんて業務命令のように言われたらそれは逆効果。むしろ抵抗したい気持ちが出てきてしまいます。

社員と社長の違い

同僚とはなるべくコミュニケーションをとった方がいいし、良好な関係を築ければなお良い。それは決して否定しないけれど、人は強く指示されたり強要されたりしたことはほとんどオートマチックに抵抗感が働いて否定的な気持ちを覚えるものです。私たちの心には他人にコントロールされたくないという意識が備わっているんですね。

いっぽう、心には人を思いのままに動かしたいという欲求も潜んでいます。それは自立と依存の関係性の中で特に現れやすい感覚であり、「自立の立場」にある親や上司は、「依存の立場」にある子どもや部下をほとんど無意識のうちに「コントロールしたい」と考えてしまうものなのです。

話は変わりますが、社長は孤独だとよく言われます。確かに企業のトップともなれば誰にも言えない苦悩というのがあるのでしょう。それは何となく想像できますよね。

では孤独な時、人は何を求めるでしょう?

そう、仲間ですよね。孤独感を感じると私たちは自分を理解してくれる相手が欲しくなります。もし今、あなたの会社の社長が一致団結や仲間意識の大切さを訴えていたなら、本当にそれを必要としているのは社長自身なのかもしれません。

社長と社員は自立と依存の関係にあるといいます。自立とは言うなれば親の立場で、依存は子ども。立場が変わるとそれぞれの考え方や感じ方、価値観を理解するのは容易ではありません。

たとえ社長が自身の孤独感から仲間意識の大切さを訴えていたとしても、依存側にいる社員の立場から見ればそれはただの命令としか捉えられないでしょう。また、どんなにあなたが本当は同僚との円滑な対人関係を大切にしていたとしても、自立側にある社長からみればどこか物足りなく感じてしまうのかもしれません。

このように物事の捉え方や価値観が対立する相手と一緒にいるのはとても疲れることです。相手に合わせようと頑張っても、流されないように踏ん張ってもどこかに無理か出てきてしまうものです。

けれど、相手の考え方や価値観を変えるのは簡単なことではありません。まして相手が上司ともなればそれは相当骨の折れるミッションになるでしょう。ではどうすれば職場をもっと快適に、気分のよい環境にすることができるのでしょうか?

半歩近づく工夫

私たちは誰でも、他人から強制されたり命令されることに対しては無条件に抵抗を感じて否定してしまいたくなるものです。けれど、職場で否定的な態度をとることはかなりリスキーだし大人げない。だからこそ嫌な気分を呑み込んで必死に耐えているのだけれど、それではストレスが溜まってどうしようもなくなってしまいます。

もし今あなたが、上司や価値観の合わない相手の要望や指示の矢面に立たされているとしたら、まずは半歩近づく工夫をしてみましょう。

要望や指示、命令を次の4択に分類してよく見直してみます。

それは、「受け容れなければならないこと」「受け容れた方がよいこと」「受け容れなくてもよいこと」「受け容れないこと」のどれに当てはまるでしょう?

例えば、センスの良くない会社グッズは捨てる=「受け入れない」。カワイイのなら使ってもいい=「受け入れてもよい」。懇親会は2回に一回は休んでOK=「受け入れても受け入れなくてもよい」。社長が参加しない時は基本不参加=「受け入れない」。こんな風にいくつか段階を作って、受け容れるか受け容れないかの二者択一にならないように工夫してみるのです。

受け容れ難い事を無理して受け容れようとするのは、嫌いな食べ物を我慢して呑み込むやうなものですから苦しくなってしまいます。けれど嫌いなものを良く見て味付けや調理方法を変えると意外と食べることができたりもします。

一致団結、仲間意識持てと強制されるのは嫌だけれど、どこまでなら受け入れられるか?あらかじめ目処をつけておくとイザという時に困らないのではないでしょうか。

(完)

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