権威との葛藤(3)~権威との関係が生み出す問題と癒し方~

権威に愛されるとあなたは社会の中でとても生き易さを感じるでしょう。しかし、そこに少しでも葛藤があれば、目上の者に対して反抗心、敵対心を感じ、孤立したり、争いを招いたりすることが増えていきます。

そうした権威との葛藤を癒すことは、さらに人として成熟していくことであり、リーダーとして多くの人望を集めるための大切な要素となるでしょう。そのために権威者と向き合い、受容し、理解することがとても大切となります。

権威との関係が生み出す問題と癒し方

さて、皆さんは思春期(小学校高学年~高校生くらいの間)に、家族との関係はいかがでしたか?
その中の権威的な存在の方とはどういう距離感を築いてきましたか?

思春期に皆さんがどんな風に家族の中の権威者(多くの場合、父親ですが、時に母親、あるいは祖父母が相当する場合もあります)と向き合ってきたかが権威との葛藤の大きなポイントになります。

権威に愛されると自信が付き、社会に出ても上から大変可愛がられる存在になります。
皆さんの職場でも、仕事の出来・不出来に関わらず上から可愛がられる社員がいるかと思いますし、また、上司から見ると何か面倒を見てあげたくなったり、重用したくなったりする存在がいるかと思います。
そういう彼を見ると、素直にうらやましいと感じてしまう方も少なくないかと思いますが、権威から愛された経験は、そうして社会の中で生き易さを生むのです。

しかし、一方で、その権威者との間に葛藤があると、社会の中で問題を多く抱えることになります。
一番典型的なのは上司(経営者、会社)に対して反発心を持ち、反抗したり、悪態を取ったりすることです。
これが手を変え品を変え様々なパターンで現れますが、権威との葛藤はすなわち、リーダーシップへの怖れとなり、前に出ること、上に立つこと、みんなを引っ張っていくこと、ヴィジョンを描くこと、夢を持つこと、注目されること、責任を取ることなどに強い抵抗を覚えます。

また、権威との葛藤は「頭打ち」という感覚になり、組織の中で出世していても、あるいは独立して事業を経営していても、どこか窮屈なような、先が見えないような感覚を持つようになります。
そもそも、その葛藤が強いほど出世することや独立していくことに怖れを抱きます(だから、そういうものに興味を持たなくなる方もいらっしゃいます)。

そして、常に下の立場から、上を攻撃し続けることになるのです。

この攻撃性故に、自分がリーダーになった際、部下から攻撃される恐れを抱くわけですね(これは投影の法則です)。

だから、この攻撃性を手放し、権威者と協力関係を築くのが、権威との葛藤を抜ける第一段階になります。
すなわち、権威者をサポートし、支え、与える存在になること(いわゆる“右腕”になること)なのですが、当然感情的な抵抗は避けられないでしょう。
故に、そもそもの要因となった権威者との心理的な関係をある程度癒しておく(許しておく)ことも効果的な場合が多くあります。

とはいえ、権威から100%愛される(愛を受け取れる)ことは稀なので、「お父さんは僕のことをすごく愛してくれた」という実感がある人でも、少なからずこの葛藤を持っているといえるでしょう。

また、そもそも、この「愛してくれた」という概念が実はとても難しく、親から溺愛されたり、甘やかされたりした場合は「愛してくれた」には入りません。
甘やかされた場合、依存の状態のまま社会に出ることになるので、上からは可愛がられますが、自立ができないので、部下を持つこと(=上の立場になること)や独立することに怖れを持つようになります。

「愛された」とは、思春期に自立を促す行動を取ってくれることも大切な要素。あなたの自立を応援してくれるような、そのために敢えて突き放すような態度も「愛」なんですね。
そのためには親自身の成熟性が求められるのは言うまでもありません。あえて子供を突き放したり、ケンカしたりするわけですから、その子の将来に対する覚悟とヴィジョンがないとできません。

さて、この問題を癒していく、すなわち、権威者からの愛情を受け取れるようになればなるほど、社会の中で生きやすくなり、人との距離感が縮まったり、つながりを築くことがうまくなります。

繰り返しになりますが、まずは家族内の権威者と向き合い、許していくことが、葛藤を手放し、自由を受け入れる基本的なプロセスになります。

これは当然、強い抵抗・葛藤を感じますし、怒りも強く出てくるでしょう。
「なんで親父に頭を下げなければならないんだ!」と訴えたくもなるかもしれません。

カウンセリングにおいては、カウンセラーも権威のシンボルとなるので、カウンセラーのやり方に反発を覚えることも出てくるでしょう。
(それ故に、カウンセラーとの信頼関係を築いていくことも、実はこの問題を解決するアプローチとなり得ます。)

でも、権威との葛藤がもたらす影響を学び、手放すことを選択していくと、怒りや恨みつらみ、嫉妬などの感情から解放されるので、どんどん楽に、軽くなっていきます。

権威との葛藤を癒すプロセスには、たとえば、こんなアプローチが効果的です。

・権威者(たとえば父)の価値を認める。与えてくれたものを受け取る。

・権威者の人生に思いを馳せ、理解し、共感しようとする。

・権威者に感謝の気持ちを持ち、何らかの形で伝える。

すぐにうまくできるものではないと思います。
むしろ、思わぬ強い抵抗に会い、引いてしまうかもしれません。
だから、じっくりと時間をかけて向き合っていくことをお勧めします。

怒りが出て、強い嫌悪感を感じたとして、それだけでもプロセスは一歩進んでいます。

そうして、その都度出てきた感情に素直になることも大事ですね。
怒りも悲しみも大切な感情です。

もし、権威と向き合って怒りが強く出てくるということは、それだけあなたの人生に大きな可能性があるということですから、前向きに捉えていただけたら幸いです。

その際にカギとなるのは、やはり女性性の感覚です。
権威との葛藤は男性性の痛みが生み出すものですから、女性的な懐の深さ、温かさ、優しさ、包容力、柔らかさはとても効果的にこの問題を癒してくれます。

その感覚は砂漠の中に見つけたオアシスのようなもので、心の葛藤、痛みを癒すように、この問題と向き合っていただければ幸いです。

故に、この葛藤を癒すためにパートナーからの愛を受け取ることがとても効果的ですし、旅などでのんびりした時間を過ごすことも有用です。

そうして権威との葛藤を癒すということは、男性性と女性性のバランスを取り、よりあなたが人として成熟していく、大人になっていくプロセスとなるのです。

権威との葛藤があるときは、窮屈で硬い感覚を持ちます。とげとげしかったり、冷たい感じがしたり、相手になぜか恐怖心や緊張を与えたりします。
そこが溶けていくと、あなたは厳しさの中にも優しさを持ち、冷静と情熱をバランスよく持ち合わせ、相手に穏やかさ、安心感と開放感を与えます。

そこでリーダーシップを取れば、多くの人の人望を集め、円滑に物事を進められることが想像できるでしょうか?

より成熟するための大切なプロセス、そのように捉えていただけたら幸いです。

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