私たちは常に、自分以外の誰かとの関わりあいの中で生活をしています。対人関係のトラブルは常に私たちの最大関心事といえるでしょう。とりわけ、パートナーとの問題は私たちをひどく傷つけます。
大切な人と心がつながっていない、コミュニケーションがうまくいかない、そして価値観そのものが違うのでは?と感じるとき、あなたはその人の前でどんな態度をとっているのでしょう?
本当はつながりたい、親密になりたいのにそんな気持ちが伝わらない、受け容れられないというのはとても辛く、苦しいもの。そんな時私たちは意図せず本心とは違う行動をとってしまうことも多いのです。
今回の心理学講座では、「価値観が違うのかも」そんな風に感じたとき、あきらめる前にチャレンジしてみたいコミュニケーション技術について考えてみたいと思います。
◎リクエストを頂きました◎
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こんにちは。いつも興味深く、拝読させて頂いております。
取り上げて頂きたいテーマは、男女の価値観の違いを埋めるー子供の育て方や、人生観の違いを乗り越えるーです。
一人で行きて来た価値観の枠を取り払い、新たに二人の価値観を築いていこうとするときの歩み寄りや、境界線の引き方、NOの言い方、そして子供の育て方などの大切な部分の擦り合わせなど、育って来た環境も両親も全く違う男女の価値観を理解し合えるには、どうしたらいいか、講義いただけたら大変嬉しいです。
よろしくお願い致します。
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「彼とは(彼女とは)価値観が違うんです」そんなご相談を受けることがあります。
時としてお別れの理由にもなる性格や価値観の違い。もし今あなたがパートナーとの間にそんな違いを感じ始めているとしたら。乗り越え難い壁、埋められない溝を前にどう対処していけばよいのでしょうか。
価値観がすれ違う時
仕事や育児、友達やお金との付き合い方、食べ物の趣味や好きな映画の種類。出会った頃は相性ぴったりで完璧に思えた相手でも、一緒に過ごす時間が増える程に違和感が芽生え、やがて価値観が違うのでは?と感じるようになってしまうことがあります。
一度は完璧と思った相手であるほどにそのギャップは大きく思え、ショックも大きいものです。
けれど、育った環境も違う、また感じ方も考え方も違うふたりがひとつの道を歩んでいくのがパートナーシップ。一番近い他人が夫婦であるとも言いますが、いつも順風満帆なんの問題もない方が珍しいのかもしれません。
パートナーとの間に違和感を感じたら、まずはその事実を受け止めることが大切。違って当たり前、と考えれば過ぎた不安を感じることもないはず。
そしてその違いをコミュニケーションするようにチャレンジしてみましょう。きっと思った以上に違いがあり過ぎて、「気が合うね」なんて思っていたのが嘘のように感じられるかもしれません。
違いをコミュニケーションする
感じ方や考え方、価値観の違いをコミュニケーションする最大のメリットは、問題解決のスピードが早くなるということです。
価値観というのは、何が大事で何が大事でないかという判断基準のことですが、もちろんそれは心の中に隠れて見えませんし、時には本人ですらハッキリとは認識していないことも多いのです。
だから何となく違うとは感じても、何が違うのかは分かりにくい。問題がはっきりしなければ当然解決策もハッキリしないからどう対策を打てばいいか分かりにくいというわけです。
例えば、「私は彼と一緒に過ごす時間が大切。でも彼は何より仕事が大切みたい。」と不安を感じている女性がいるとします。
不安は怖れを強化しますから、時間が経つほど「本当に仕事?」とか、「愛されてないんじゃないか」とかネガティブな感情はますます強くなっていきます。
けれど、もしかしたら彼は「彼女をもっと幸せにしたい」と考えていつも仕事に励んでいるのかもしれません。
私たちが何を大事だと考えていて、本当はどんな価値観を持っているか?ということはコミュニケーションしてみなければ分からないのです。
価値観をリンクする
価値観が違うかも?と感じる時、大切なことはそれをコミュニケーションすることですが、そもそも価値観が違うというのはどういうことなのでしょうか。
例えば、健康志向の高い人にとって、寝食を忘れて仕事に没頭するなんて睡眠不足と疲労が招く健康リスクを背負い込むようで信じられないかもしれません。その人と自分とでは価値観が違う、と感じるでしょう。
では、健康リスクも顧みず仕事に没頭している人というのは健康に価値を置いていないのでしょうか?
もちろんそうではないでしょう。
その人だって、健康が大切だとは考えているはず。ただ、仕事や目標達成の充実感、責任感の方に価値を置いているだけ。つまり、健康よりも仕事の方が優先順位が高いということなのです。(もちろんこの優先順位は年齢や環境によっても移り変わっていきます。)
一方、健康が大切だと考えている人だって仕事が大切ではないなんて思ってはいないでしょう。
このように価値観が違うというのは実のところ、価値を感じるもの大事だと考えているものの優先順位が違うということ。
こんな風に見方を少し変えてみると、価値観が違うから理解なんてできないと感じていた相手との距離も少し近づくのではないでしょうか。
以前、異文化コミュニケーションというキャッチコピーを謳った英会話スクールがありましたが、コミュニケーションの語源は違った文化や考えを分かち合うということです。
パートナーや近しい間柄の人たちと分かり合えないというのはとても寂しいものですが、そんな時こそコミュニケーション「分かち合う努力」が試されているのかもしれません。
仕事や育児、人生に大きく関わるような重要なことから、料理の味付けや趣味の世界に至るまで私たちはそれぞれ独自の価値観を持っています。
まずはあなた自身が大切だと考えていることの優先順位を、次にパートナーが大切だと考えているであろう優先順位を確かめてみましょう。この取り組みそのものをコミュニケーションにしても良いと思います。
価値観の優先順位を理解して、ふたりが価値を感じているものをリンクさせてみる。
それが新しいふたりだけの価値観の優先順位を創っている第一歩になるのではないでしょうか。
(完)