怒りを手放す考え方のヒント③「あたりまえなのに!」と感じるとき

仕事をしていると、突発的な仕事を頼まれたり、クレームの対応に追われたりと不測の事態が起こるなどといったこともあると思います。そんなとき、主体的に判断して対応したり、調整力を発揮して事態に対応したりできればいいのですが、そうではなく、オロオロとするだけの同僚や、判断が遅れる上司の仕事ぶりを見て、「なぜ、そんなことをしているんだ!○○してあたりまえなのに!」とイラッとする、ということあるのではないでしょうか?

今日は、この「○○してあたりまえなのに・・できていない!」という怒りについて考えていきたいと思います。

 

◆こんなことはないでしょうか?

上司に対して
「上司のくせに部下の仕事を理解してくれない(上司なら理解すべきだ・理解できてあたりまえだ)」
「どうして的確な指示をあたえられないんだ…(上司なら的確に指示を出すのは当然だ))」
「なぜ助言や手助けをしようとしないんだ!(上司は部下をサポートすべきだ)」

部下に対して、
「どうして、締切を守れないんだ!!(締切を守るのはあたりまえだ)」
「もっと自分で判断しないんだ(社会人なんだから必要な自己判断はできるべきだ)」
「任せた仕事の経過報告はどうなっているんだ!(当然上司に報告するべきだ)」

このような場面で感じているのは、「○○してあたりまえ」「○○すべき」という観念に基づいた「怒り」です。わたしたちは心の中に「○○すべきだ」「○○して当然だ」といったルールをたくさん持っています。そして、このルールを破られたときに不満や怒りを感じるのです。(このルールは他人に対してだけでなく自分に対しても向けられるので、「やるべきことができていない」と自分を責める原因にもなっています。)

 

◆「あたりまえ」は本当にあたりまえなのか?

物事のとらえ方や出来事に対する考え方や感じ方は人によって違います。自分にとっての「あたりまえ」であっても、他人にとっては「あたりまえではない」こともありますよね。もわたしたちはこの「違い」を忘れてしまいます。特に仕事の場では、その職場での常識ややり方というルールもありますから、余計に「○○してあたりまえ」と感じやすくるのではないでしょうか?

けれども、もしかしたら、相手はそのルールが身についていないのかもしれないし、ルールはわかっているけれどうまくできないのかもしれないですよね。「なぜ、あたりまえのことなのにやらないんだろう?」と感じたときに「できない理由があるのかも?」という見方を取り入れることができると、瞬間的に沸き上がった「いらっ!」という気持ちを落ち着けることができます。

 

◆「○○してあたりまえ!」という怒りは「○○せねば!」と自分を律している度合いに比例する

「締め切り厳守」という職場で10年働いてきたAさん。実は忘れっぽい性格なので、人一倍意識して「厳守」してきたという場合。今年入ってきた新人が締め切りを忘れる、締め切りに遅れるという場面を目の当たりにすると、「自分はものすごく気を付けているのに、こいつはその努力を怠っている!けしからん!」と腹が立ちます。このように、自分が「守らねば!」と強く意識していることほど、そのルールを破る人に対して腹が立つのです。

こういった場合は、自分の努力を認めるとともに、ほんの少しでいいので、ルールを緩めることで怒りを感じる度合いが減っていきます。例えば、「締切は守らねばならない」を「締切に間に合うようにする」と緩めるだけでも、「いらっ」とする度合いが弱くなるのです。

 

◆上司への怒りは上司への期待の裏返し

上司と部下という関係で感じる感情は、親子関係で感じる感情と似ているといわれます。小さな子どもにとって親は「強くて、優しくて、なんでもできて、自分を守ってくれる存在」なのですが、無意識的に、これに似たことを上司に期待しやすくなるのです。すると、上司なら部下を理解すべき、上司なら部下を上手に育てるべきといった思いが生まれ、その期待を裏切られると「上司なのに・・」と失望し、それが怒りに変化していくのです。
こういった場合には、上司に対する期待に気づき、その期待を弱めたり手放したりすることで「いらっ!」とする気持ちも弱まります。

 

◆部下への怒りは過去の自分との比較や助けてほしい気持ちの表れ

部下に対して「○○しないんだ!」と感じるとき、自分がそのポジションにいたときの「あたりまえ」を基準にしやすくなります。自分は○○していたのに、どうしてそれをしないんだ!という感じです。また、そんな気分を感じているときは、その裏側に、「○○してくれないと、自分の仕事(部署内の運営等)にも影響が出るので困るという気持ちが隠れていることも少なくありません。

そういった場合、部下の力量を見極め、自分との比較ではなく、部下に見合った基準を作ったり、「○○してくれると、助かるんだ」ということを表現することで「いらっ!」という気持ちを和らげることができます。

 

◆「違う」という土台にたつ
「○○して当然なのに!」「○○するのがあたりまえなのに!」という怒りは、自分も相手も同じルールを同じ感覚で感じているはずという思い込みから生まれます。ですから、
「わたしのあたりまえ」と「隣のあの人のあたりまえ」は違う!と意識することが怒りを手放すコツ。
よろしければ試してみてくださいね。

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