カウンセリングでは、仕事に関する相談をお受けすることも、良くあります。
ただ、仕事をもっと上手くやるにはどうしたらいいか、とか、売り上げを上げるためにはどうしたらいいか、営業成績を伸ばすためにはどうしたらいいか、というような、ビジネスの結果そのものを追求したい、という相談は、あまりありません。
もちろん、このようなビジネスそのもののご相談でもお受けしますので、ご相談されたい方は、ぜひカウンセリングも使ってみてくださいね。
さて、それでは、仕事に関する相談で多いものは、どのようなものかといいますと、仕事そのものというよりも、職場での人間関係に悩んでいます、というご相談が多いです。
上司や社長と上手くいきません、お局様がイジメをするんです、というような、ご本人だけでなく、相手があるご相談が良くあります。
また、人間関係の問題ではありますが、相手がない、つまり、ご本人だけの問題(ご本人が悪いという意味ではありません)という相談も実はかなり多いのです。さて、人間関係なのに、ご本人のだけの問題とは、いったいどういうことなのでしょうか。
今回は、この、人間関係の問題のように見える、実はご本人だけの問題というケースについて、書いてみたいと思います。
例えば、クライアントさんが、カウンセラーに、カウンセリングで次のように話してくれたとします。
「私は、のろいし、間違いも多いし、役に立っていないんです」
「上司や同僚は、私のことを、役に立たない、仕事が出来ない人間だと思っているに違いないんです。」
ポイントは、仕事が出来ない人間だと
「思っているに違いない」
というところです。
不思議と、「私は、上司に、あなたは役に立たない人間です、と、先日ハッキリと、面と向かって直接言われました。どうしたらいいでしょうか」というような、ハッキリとあなたはダメだと言われた、というご相談は、ほとんどないのです。
そのため、私は、クライアントさんが、
「仕事が出来ない人間だと思っているに違いないんです。」
と話されときに、
「あなたは仕事が出来ないですね、と、誰かに言われたのですか?」
と質問したりします。
もちろん、上司に直接ダメ出しをされました、という場合もありますが、その場合は、上司の自己否定(クライアントさんでなく、上司自身の自己否定)が原因で、部下に虚勢を張る必要があるので、威圧的な部下を攻撃する上司であった、というケースがほとんどです。
この場合は、クライアントさんだけでなく、周りの同僚も、同様に上司を嫌っていることが多いです。つまり、クライアントさんの問題ではなく、上司の問題ということになります。
さて、話しを元に戻します。「仕事が出来ない人間だと思っているに違いないんです。」とクライアントさんが話されたときに、私は、「あなたは仕事が出来ないですね、と、誰かに言われたのですか?」と質問したりします。
そうすると、その回答のほとんどが、
「いえ、実際には、仕事が出来ない人だと言われたことはありません。」
そして、私はこう話したりします。
「では、実際には、ちゃんと、しっかりと仕事をされているんじゃないですか?もし、本当に仕事が出来なくて迷惑を掛けているなら、上司から仕事のやり方について指導があるはずです。それがないということは、しっかりとお仕事されているということではないでしょうか」
我々人間は、「自己概念」というものを、みな持っています。そして、この「自己概念」は、我々人間の「思い込み」であって、それがそのまま、周りの評価となるわけではありません。
「私は仕事が出来ない」という「思い込み」を持っていると、自動的にそれが外の世界、つまり自分以外の周りの人間、上司や部下に「投影」されて、
上司や部下は、私のことを、仕事が出来ない人間だと
「思っているに違いない」
という「間違った判断」をしてしまうのです。
それでは、私、大塚の個人的体験をお伝えしますので、さらに理解を深めていただきたく思います。もう20年以上前になりますが、大学を卒業して初めて社会人として新卒で入った会社がありました。
大学生のときから、私は、強迫神経症という心の問題を抱えていまして、新卒で就職した頃は少し良くなってはいたのですが、それでもまだ完治していなかったので、私には、強烈な自己否定がありました。
その会社は、音楽関係の会社だったのですが、人気の音楽関係の会社で数百人に一人しか入社できないので、なんとかして就職したいと思って、私は、面接で「経理がやりたいです」とウソをついて、なんと内定をもらってしまいました。
入社前に、実は経理というのはウソでした、と正直に人事担当者に話したのですが、それでも来てほしいと言われたので、入社しましたが、新入社員で配属されたところは、そのまんま経理でした。
自分の心の病気による強烈な自己否定を抱えながら、とてもつまらない経理事務を毎日していましたので、私にとっては、地獄のような日々でした。当時は本当に辛かったです。
当然、こんな状態で上司や会社が評価してくれるなんて、夢にも思うことはできないわけです。
さて、当時の会社では、年に2回ボーナスが支給されていました。そして、ボーナスを支給する際に、「今回は、全社平均で、(基本給の)何か月分のボーナスを支給します」という発表が毎回ありました。
例えば、3か月分を支給します、という発表があったときに、3.3か月分もらえたら比較的評価されていて、2.7か月分だとしたら、少し評価が低いという感じです。
さて、私の評価はどうだったかというと、平均を下回ったことは一度もありませんでした。経理の部署内や、同期の間で「どうだった?何か月分だった?」などと話しをするのですが、明らかに当時の私の評価は高かったのです。
今から考えれば、経理の部長や、直接の上司である副部長からも、大塚君の評価は高いよ、というニュアンスのことを言われていました。しかし、自分としては、
「こんなダメな自分が評価されるはずがない」
という「自己概念(思い込み)」を持っていたため、当時は、部長や副部長のお言葉が耳に入ってこなかったのです。
本当は既に評価されているけれど、自己否定があるので、「自分は仕事が出来ないんです」と話してくださるクライアントさんのおかけで、私も、過去の自分の再評価がが出来たのです。
みなさんも、周りからは既に評価されているかもしれませんね。