対人関係が苦手と言う人の中に、みんなと仲良くしたいのについケンカになってしまう、という方がおられます。
このような方の多くはとても繊細な心の持ち主で、他人のちょっとした言動に「心ない」ものを感じると、自分は大切にされていないのではないかと感じて憤ります。裏返せば、それほど「愛情」に敏感な、思いやりにあふれた世界を望む人なのですが、その繊細な心を守るために自分の「正しさ」にこだわってしまい、結果的に他人を裁いてしまうので、なかなか人と仲良くできません。みんなと仲良くしたいという本来の願いをかなえるためには、自分の臆病さを許して、傷つくかもしれないという怖さを越えて、自分の「正しさ」を手放すことが求められます。「正しさ」よりも「幸せ」や「仲良く」を選ぶ、という選択の力を意識してみるといいでしょう。
◎リクエストを頂きました◎
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私は人と関わるのが極端に苦手で、今までにたくさんの人とケンカをしてきました。家族、友達、学校の先生、職場の人たちと。みんなと仲良くしたいのですが、どうしてもケンカになってしまいます。どうすれば仲良くできるのか教えてください。
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リクエストをありがとうございます。今日は、ケンカせずにはいられない心理と人と仲良くするための心の整理の仕方を考えます。
●繊細であること、臆病であることはいけないことでしょうか?
対人関係が苦手と言う方には二通りいて、自分の意見や気持ちを言わずに黙っておとなしく引きこもる方と、今回のご相談のようにすぐケンカをしてしまう方がおられます。正反対に見えますが、つい他人と心理的距離をとるように行動してしまうという点ではいっしょです。では、なぜ人と距離をとらなければならないのでしょう?
多くの場合、このような方はとても繊細で、傷つきやすい純粋な心の持ち主です。言葉の端々やちょっとした仕草に「心ない」ものを感じると、「自分は愛されていない」とがっかりして強い不安を覚えます。自分が大切にされていないと感じるときだけではなく、自分以外の誰かが大切にされていないように見えればやはり強い憤りを感じます。逆に言えば、それだけ「愛情」に敏感で、愛ある思いやりにあふれた世界を求めている人だ、とも言えます。ところが、それが理想どおりに実現しないことに落胆し、絶望しているのです。その相手が、自分が親しくなりたい人であればあるほど、悲しく絶望的な気持ちになるので、その痛みを感じたくなくて怒りが噴出します。そして、仲良くなりたい人ほどケンカしては遠ざけてしまい寂しい想いをすることになります。
この繊細さは個性であり、才能とも言えるものですが、当人にしてみれば、なぜ他の人がこうも無神経なのかわからず、人と関わりたくても心理的距離が近くなると「心ない」言動に触れて傷つくことが増えるので怖いと感じます。それでも、よくケンカをしてしまう人は人とつながりたいという気持ちが強いので、人と関わることに臆病になる自分をダメだと思い、自分の怯えを抑えこんだり、切り離したりして心理的距離を縮めようと人に近づきます。でも、心の底ではすごく怖がっているので強い緊張感をもっていることが多いです。これが「近づきにくい」感じを作っていることがあります。このように、よくケンカをしてしまう人の心の奥には、愛を求めながらも、その繊細さゆえに傷つくのをとても怖がっている臆病なマインドがあります。
●攻撃は最大の防御、というけれど、、、
人と近づこうとするとき、傷つきやすい自分の繊細な心を守るために、こういう方はよく「正しさ」の鎧を着ます。自分が「正しく」振る舞い、他人も「正しく」あってくれれば傷つかずにすむと願って「正しい」ことをしようとしますが、みんながみんなそう考えるわけでもないので独り相撲になりがちです。一生懸命に「正しく」あろうとした分、他人が自分の「正しさ」を尊重してくれないと、やはり自尊感情が傷つくので、つい「正しさ」を盾に相手を攻撃してしまいます。攻撃は最大の防御ですが、「正しさ」を証明したとしても、それで相手を負かしてしまうと仲良くなりにくいです。「自分はダメだから愛されない」とは思わずにすみますが、仲良くしたい人と仲良くなれないことには変わりはありません。みんなと仲良くなるためには、とても怖いことではありますが、この「正しさ」の鎧を脱ぐ必要があります。「自分は正しい。だからあなたはこうでなくてはいけない」ではなくて「私はこう思うけれど、あなたは違うのね」と違いを許せるといいですね。
●「正しさより幸せ」、「痛みより愛」を選ぶ
「あなたは『正しい』。でも、『正しい』からといって『幸せ』になれるわけではない。『正しさ』より『幸せ』を選ぼう」。私が大切な人ともっと親密になりたいときに自分に言い聞かせる言葉です。自分がダメだから愛されないのではないかと不安だからこそ、自分の「正しさ」にしがみつきたくなりますが、自分の考える「正しさ」に固着すればするほど、相手を「正しくない」と判断することになり、一番仲良くなりたい人を遠ざけてしまいます。「正しい」ことより「仲良く」なること、「幸せ」になることの方を選びたいのだ、と自分の気持ちを再確認します。「正しさ」と手放すと「傷つく」のではないかととても怖いです。だから、今度は「痛み」より「愛」を選ぶ、と「仲良く」なること、相手を愛することを再度選びます。私たちは、無意識のうちにしてしまうことがとても多いですが、意識的に「選択」することもできます。この「選択」の力をもっと信頼して使っていきませんか。