人からアドバイスをもらった時に「自分が悪いと指摘された」と感じると、ちょっと嫌な気持ちを味わいます。
それでもそのアドバイスが自分の役に立ちそうだと納得できたり、一瞬の腹立ちだけで流すことができれば、尾を引かず問題にもなりません。ところが嫌な気持ちが消えずにずっと残ってしまうこともあります。そんな時の私たちの心理状態とはどんなものなのでしょうか。
表面的には漠然とした不安や怖れ、焦りなどを感じていることが多いのですが、心をよく観察してみると、そこには自分を責める気持ちが隠れている場合がほとんどです。そういう自分の気持ちをどう扱えば心が落ち着き、嫌な気持ちが消えていくのでしょうか。心の様子を把握した上で、自分のコンディションをよりよい方向へ向けてあげるために自分ができることを考えてみましょう。
◎リクエストを頂きました◎
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いつも読ませていただいてます。会社の同僚が、自分の仕事ぶりを見て、いろいろアドバイスしてくれたのですが、
その時の自分は心の余裕がなく、そのアドバイスを素直に受け取れませんでした。その結果、同僚からアドバイスされたことが
頭から離れられなくなり、不安を抱えながら仕事をしているような状態です。こういう風になってしまうのは、
どういう心理が働いているんでしょうか?アドバイスと書きましたが、自分の中では「指摘された」感覚でいて、
「指摘された」=悪いイメージになっているようです。
(一部編集させていただいております。)
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リクエストをいただきありがとうございます。
仕事に限らず、人からアドバイスをもらった時にそれをどう受け取るか、というのは案外難しいものです。
自分からアドバイスを求めた場合でも、そのアドバイスをそのまま実行できるかと言えばそうではないことも多いでしょう。また、自分から求めたわけではない場合には、リクエストの方が書いておられるように、アドバイスというより「自分が悪いと指摘された」と感じてしまうこともあります。
それでもその場限りで流せてしまえば問題にならないのかもしれませんが、嫌な感覚が頭から離れなくなり、気持ちが不安定になってしまうと自分がつらいですよね。そこに隠れている心理や、解消のためのヒントを探ってみたいと思います。
何かが頭にこびりついて嫌な気持ちが続いてしまう時というのは、実は心の中ではいくつもの感情がぐるぐるまわっています。
リクエストの方の場合はどんな感情があるのでしょうか。
可能性があるのは以下のようなものだと思います。
A.アドバイスしてくれたのに受け取らなかったのは悪いことをしたかもと不安
B.受け取らなかったことで相手が気分を害して人間関係を悪くしてしまうかもと不安
C.指摘された自分は無能なのかもと不安
D.余裕がないところにあれこれ言われて腹が立った
E.上から目線で「おまえはなっていない」と言われたような感じがして気分が悪い
人はこういったいろいろな感情を同時に感じるものです。一つ一つの感情も嫌な気持ちにつながりますし、これらを同時に感じるごちゃごちゃした感覚そのものもストレスになるので、全体としてはかなり重いものとして感じられます。
けれども少し整理してみると、A、B、Cは自分を責める気持ちが強いのですが、D、Eは相手を責めるような気持ちです。実は大きく分けると、自分を責める気持ちと、相手を責める気持ち、というように見ることもできます。
そして、自己攻撃と他者攻撃は表裏一体で、人は、自己攻撃をする度合いだけ他者攻撃をする、と心理的には見ることができます。また、どちらが先にくるかと言えば、自己攻撃です。自己攻撃がなければ、人は他者を攻撃するような気持ちにはならないものなのです。
自己をとことん攻撃してぎりぎりまで追い詰めた時、自分を防衛するために自己攻撃のエネルギーを他者攻撃に転嫁すると言われています。
リクエストの方の場合は、「悪いところを指摘された」と感じることで、無意識にたくさんの自己攻撃をしてしまって、結果的に他者攻撃も無意識の中で起こり、その混沌とした気持ちの状態から、心のコンディションが崩れている(不安が強くなっている)のかもしれないですね。
こういった状態を改善するためには、「自己攻撃を小さくする」ことが役に立ちます。
「心のコンディションが崩れる」というのはかなりつらいことで、自分もしんどいとは感じるのですが、一方で心は目に見えないために、自分がどれだけ追い詰められているかということはなかなかわからないものです。
でも、「心のコンディションが崩れる」というのは、「心が崖っぷちに立たされている状態」と言っても過言ではありません。崖っぷちに立たされている心をさらに責めたらどうなるでしょうか?心はラクになるでしょうか?それともいよいよ崖から転がり落ちていきそうになるでしょうか?
もちろんよけいに追い詰められ、転落しそうになりますよね。だとしたら自分を責めることは、自分をさらに苦しめるだけだということがおわかりいただけるかと思います。心のコンディションはもっと悪くなり、自分も苦しいし、仕事の上でも調子が上がりにくくなるでしょう。
ということは、自分のためにも、周りで一緒に仕事する人のためにも、自己攻撃、自分を責めること、をやめていく方がベターだと言えそうです。
例えば…
○アドバイスを受け取れなかった自分を「余裕がない時は誰でも受け取れない(実際そうなんです)のだからいいじゃないか」と許してあげる
○自分に指摘されるようなところがあるとしても、「まあいいじゃないか、一生懸命やっているのだし、そのうち余裕ができたら改善しよう(余裕ができれば実際改善できるものです)」と許してあげる
という感じですね。
こうやって自分を許してあげた方が、自然に余裕ができ、結果的には今後誰かからアドバイスがあったときに受け取りやすくなったり、そのアドバイスが本当に自分にとって役に立つものなのかどうか冷静に考えられるようになります。
また、「そうは言われても自分を許すなんてできない」と感じるようでしたら、そういうご自分を許してあげてください。「自分の心はそういうコンディションなのだな、それならそれで仕方がないな」と。
ひとつ自分を許すことができると、だんだんと自分に対する許しが広がり、心にいい作用を及ぼしていきますので、よかったら試してみてください。