人が成長する、またはそれにともなって良い方向に変わっていく。
そのことについて、どんなイメージをお持ちでしょうか?右肩上がりにグングン成長していくイメージでしょうか?それとも、右肩上がりに成長しては停滞、時として下り坂を繰り返しながらいくつもの勾配を繰り返す山登りのようなイメージでしょうか?
身体の成長というのは、どちらかといえば前者のです。一定の年齢まではグングンと成長し、ある年齢を境に、体力も身体的な機能も緩やかに低下をしてきます。
いっぽう、私たちの心というのは、必ずしも年齢に比例して成長するとは限らないもの。それ故に、「なんだか成長が止まっている」「思うように変わっていない」と感じてしまうことも多いものです。「何年も取り組んできたのに、何も変わらない」と自信をなくしてしまいそうなときはないでしょうか?
そんな時、もしかしたら、「私たちの心が変わっていないのではなくて、変わり始めている証拠かもしれません」
◎リクエストを頂きました◎
===================================
人はどのくらいの時間を経て変化するのでしょうか。
最近長いこと解決できなかったことに、突然解決の糸口がもたらされました。
糸口をつかんだその日は、「われながらよくこんなに長い時間、諦めずに何とかしようと思い続けたなぁ」としみじみと開放感の中で思いました。ですが次の日には開放感は消え、無力感などの習慣性のあるものに、心理面も行動面もまだまだ影響を受けている古い自分に戻ってしまいました。
せっかくのチャンスなのに、すぐに大きくパッと変われないなんて、なんて駄目なのかしらと数日思っていました。でも、ふとしたときに、新しい自分に心理面も行動面も変化するのに1~2日で変われるものなの?ということに気付きました。
カウンセリングをしていらっしゃる皆様なら、相談にみえる方たちが、大体どれくらいの時間をかけて、どんなプロセスを経て新たな自分にステップアップするのか御存知かと思い、質問させていただきました。特に、時間は新しい道行の目安になるので知りたいです。(一部リクエストを編集させていただきました)
===================================
こんにちは。
ご相談を担当させていただきます、カウンセリングサービスの秋葉秀海です。よろしくお願いします。
書店をのぞくと、「一瞬で人生が変わる」といったタイトルの本が多く目に入ります。限られた時間の中でよりよい人生を生きようと願う時、少しでも早い変化を求める、それはとても自然なことでしょう。
でも、はたして私たちは本当に一瞬で古い自分を脱ぎ捨てて新しい自分に変わったりできるのでしょうか。
・心の成長イメージを見直す
人が成長する、またはそれにともなって良い方向に変わっていく。そのことについて、どんなイメージをお持ちでしょうか?
右肩上がりにグングン成長していくイメージでしょうか?それとも、右肩上がりに成長しては停滞、時として下り坂を繰り返しながらいくつもの勾配を繰り返す山登りのようなイメージでしょうか?
身体の成長というのは、どちらかといえば前者のです。一定の年齢まではグングンと成長し、ある年齢を境に、体力も身体的な機能も緩やかに低下をしてきます。
いっぽう、私たちの心というのは、必ずしも年齢に比例して成長するとは限らないもの。それ故に、「なんだか成長が止まっている」「思うように変わっていない」と感じてしまうことも多いものです。実際、カウンセリングを受けられる方の中には、「何年も取り組んできたのに、何も変わらないんです」と自信をなくされている方もいらっしゃいます。
そんな時、私はこんなお話をさせていただくんです。「変わっていないように感じるのは、心には慣れた場所が心地よいという習性があるからかもしれませんよ」と。
・心も慣れた場所が心地よい
「住めば都」といいますが、住み慣れた土地を離れて、新しい土地に引っ越すのは寂しいものです。そこがどんなに快適な場所であっても、しばらくは住み慣れた場所を懐かしく思い出したりすることもあります。
私たちの心も、永く付き合ってきた、住み慣れた環境が心地よいのです。心が成長する、ということはそれまで馴染んできた「見方」「考え方」が変わるということ。
新しい「見方」「考え方」の環境に慣れるまでは、知らず知らずのうちに慣れ親しんできた以前の考え方に戻ろうとしてしまうんですね。
だから、「永く取り組んできて、ようやく変化の兆しが見えたと思ったら、また戻ってしまった」と感じるときは、新しい心の環境にまだ慣れていないだけなのかもしれません。
私たちの心の成長は、一直線の右肩上がりではもちろんなく、停滞と上り下りを繰り返す登山でもなく、地上から空に向かって伸びていくラセン階段を登っていくイメージ。同じ場所をグルグルと回っているように感じても、実は着実に成長に向かって登っているのです。
ところが時として私たちは、登っている実感を得られないことで登ることをあきらめたり、途中で降りてしまったり。自ら成長のプロセスを止めてしまうこともあるのです。
「心も慣れ親しんだ環境が心地よい」まずは、そんな心の習性を理解しておくことが大切なのではないでしょうか。
・時間より、深さ
最後に、私たちが変化をするにはどのくらいの時間が必要か、というご質問にお答えしたいと思いますが、これはとっても難しいご質問なんですよね。
私自身が体験した心の変化でご紹介するならば、心の勉強を始めて、「変わったかも」と実感した時から、新しい心の環境に慣れるまでには、おおよそ1年くらいかかったでしょうか。
でもこれはあくまでも、私のケースですから、あまり参考にはなりません。
というのも、私たちの心には時間軸がありません。身体というのは年齢に比例して成長し、やがて加齢と共に緩やかに下降しますが、心の成長には年齢制限が無いばかりか、成長に必要な時間にも定量というのがないのです。
心の成長にもっとも関わりが深いのは、時間ではなく深さ。どれだけ深く自分の心と向き合うかによって、変化のスピードにも度合いにも大きな違いがあるようです。
そういう意味では、確かに「一瞬で変わる」こともできるのかもしれませんが、変化が大きいほど、「慣れた環境に戻ろう」とする心の働きも強くなるので、たとえ瞬間的な変化を経験することができたとしても、それを何度か繰り返しながら、私たちの心は新しい環境に馴染んでいくのではないでしょうか。
心に深く向き合う、ということは時として大きな負担となることもあります。焦らず、少しづつでも向き合っていくことが大切。
あきらめて途中で降りることをしなければ、着実に登っていくラセン階段なのですから。