自立の依存の立場であるB氏は、トラブルを部下の責任に押し付けたり、手柄を独り占めしたり、尊敬できる要素がほとんどない状態になっていくでしょう。
そうすると部下達の心は離れていくわけですが、アテにできない上司を持つと、部下達は自然と自分で何とかしようと自立心が芽生えるんです。すなわち、勝手に「依存の自立」タイプが育っていくのです。そんなB氏にとっては自己承認そして他者承認を等しくやっていくことで改善してくことを提案しています。
●「自立の依存」について。
さて、B氏についても言及してみましょう。
「お前達、しっかりしてくれよ。俺の立場にもなってくれよ」
「俺だけが1人で頑張って、お前らも、少しは協力しろよ」
自立の立場でありながら、とても依存的な態度は部下達の心離れを招きやすいのは明白です。
よく「下のものには厳しく、上のものには弱い」というタイプのマネージャーがいますが、まさに「自立の依存」の典型と言えるでしょう。
さて、こういう上司に対しては、その「依存」の立場である部下達からも愚痴が出てきます。
「能力がないくせに、偉そうなことばかり言う」
「取締役にはへえこら、太鼓持ちばかりして、全然威厳がない」
こんな部下達の攻撃的な心理から、「早くこのプロジェクトを抜け出して自由になりたい」という逃避行動や、「あのマネージャーがいかに無能かを取締役に直訴してみる」という破壊行動に出てしまうこともあるんですね。
あるいは、前向きな部下は「早く独立して一人前に仕事ができるようになりたい」と独立志向が高まるでしょうし、「自分はああいうマネージャーにならないように、悪い手本とさせてもらう」と反面教師にすることもあるでしょう。
いわば、「自立の依存」の上司は、同時に部下の「自立心」を育てるのに一役買っているようです。
故に部下達は「依存」の中から自立しようとする「依存の自立」と言えるのです。
でも、そうするとB氏は、結果的に部下を成長させていることとなり、幸か不幸か、優秀なプロジェクトスタッフにめぐり合えることもあります。
とはいえ、部下が優秀になればなるほど、突き上げを食らうのは上司であるB氏。
常に下からの突き上げに戦々恐々としているので、部下達の能力を実は最も知っている存在でもあるのです。
となると、「依存」の部分を持つB氏は、自らの地位を守るために部下達の自立心を妨げる行動に出ることもあります。(手柄を独り占めにしたり、問題を部下の責任に押し付けたり)
自分よりも仕事のできる人間が部下にごろごろいるように感じるわけですから。
自らの立場が危ういと感じるんですよね。
また、実のところ、こうした「自立の依存」にハマるのは、元A氏タイプであることも少なくないんですね。
散々自立して頑張ったけれど、報われない、思うようにプロジェクトが進まないときに、それまでの自立心が一転、依存心となり、部下達に愚痴をこぼすようになったりします。
また、自信を失い、自分の能力の限界を悟れば保守的となり、今の位置を何とか守ろうという心理が働いて「自立の依存」になることもあります。
こうした立場に置かれると、どうしても不平不満が溜まり易くなります。
結果、依存心をぶつけてしまうことになるのですが、さて、どうしたらいいのでしょう?
こうした「自立の依存」の立場では、どうしても「我」が強くなります。依存が出てくるわけですから自己中心的になってしまうのです。
でも、そこで改めて自分がリーダーシップを取るべきマネージャーであること、そして、自分を頼るべき部下達が多数いることを自覚することが大切です。
そして、自分がやっていること、頑張ってきたことを振り返りつつ承認する作業(自己承認)をしていきます。
「俺なりに、よく頑張ってきたよな」と自分で自分を認めてあげるのです。
そして、次は部下達の成長や能力を勇気を持って認めてあげることが次の課題です(他者承認)。
1人で頑張るのではなく、彼らをより“適材適所”に活用していく道を探るのです。
これは相当勇気がいる選択でもありますが、あなたの人望を一気に押し上げる可能性を秘めることです。
>>『「自立の自立」と「自立の依存」~自立を手放して相互依存の世界へ~』につづく