私たちの心は人間関係の中で必然的にバランスを取ろうとするようです。
例えば、とてもワンマン社長の下にはイエスマンしか残らないようになります。これは自立(社長)と依存(従業員)のバランスで、社長が自立すればするほど、従業員の依存を強める結果を招きます。また、浮気の心理においては浮気相手とバランスを取るように、浮気される側にも何らかの“浮気的要因”が隠れていることが多く、そのバランスを崩すことでこの問題を解決しようとしていきます。
さらに離婚や死別など、家族の中で当たり前に保たれていた関係が崩れると、その穴を埋めるために残りの家族が“兼務”してフォローするようになったりするのです。
今回はそうした事例を紹介しつつ、私たちの心がバランスを取る動きについて図解も含めて解説し、皆さんの人間関係に生かしていただこうという連載です。
カウンセリングの中で様々な問題を見ていくとき、私はそこにある“人間関係のバランス”を特に意識していることが多いんですね。
そこで今回は、私たちが無意識のうちに取る“心のバランス”について、4回シリーズにてご紹介したいと思います。
さて、家族、夫婦、ビジネス、対人関係など、私たちは人間関係において、知らず知らずのうちにバランスを取ろうとしています。
「2:6:2の法則」って聞いたことありませんか?
会社でどんな優秀な人材を集めたとしても、上位2割が優秀な社員となって会社を引っ張り、中間の6割がそれを支える普通の社員となり、残り2割が問題児となる、という法則です。そこで、下の2割をリストラしたとしても、その上の層から2割分が問題児となり、この2:6:2のバランスはずっと保たれるようなんですね。
また、皆さんも、「Aさんと一緒にいるときは私がいつもしゃべっているのに、Bさんといるときは何故か聞き役に回ってしまう」とか「前の会社にいるときは比較的自由に発言していたのに、今の会社に移ってからはなかなか自分の意見が言えなくなってしまった」という経験はありません?
その環境に原因があることもありますが、人間関係のバランスに基づいて、自分の態度が自然と変わってしまうこともあるんですね。
●心はバランスを取りたがるもの
「ワンマン社長の下にはイエスマンしか残らない」
「ヒステリックなお母さんには、もれなく大人しいお父さんが付いてくる」
そんな“格言(?)”が心理学の世界ではよく言われます。
家族や集団の中では、そのグループを構成するメンバーは「ヒーロー/ヒロイン」「チャーマー、マスコット」「殉教者、犠牲者」「傍観者」「問題児」といった5つの役割を分担し合っています。
※詳しくは下記の記事をご覧下さい
110.バランスの法則~パートナーシップの見えない繋がり~
138.家族の5つの役割(1)~家族を助けるために選ぶパターン~
211.バランスの法則2~ポジティブとネガティブの心理学~
私たちは人間関係の中で“無意識に”バランスを取り合うようなのです。
だから、「肉食系女子(男性性の強い女性)は、草食系男子(女性性の強い男性)に惹かれる」傾向にあり、「一方が自立すればするほど、他方は依存的になる」ように関係性が変化していきます。
もう少し具体的にお話しましょう。
自立的な男性は、バランスの法則により依存的な女性に惹かれます。彼は彼女にたくさん与えたいし、彼女はたくさんもらいたいと思っているので、その関係性はうまく行きます。そこで、彼女が「もっと欲しい」とより依存を強めると、彼はその期待に応えようと「もっとあげよう」とし、どんどん自立が強まっていきます。
しかし、その一方で、彼女が「私ばかりがしてもらっても申し訳がない。私だってしてあげたい」と思って自立し始めると、バランスの法則により彼は「受け取る側、してもらう側」になっていきます。しかし、あまりに自立的な彼がその変化を拒み、受け取らない態度を取ると、その関係性は壊れてしまうようになります。
そうすると別れの危機が訪れるようになります。
お互いのバランスが保てなくなるからです。
そんな風に私たちはお互いにバランスを取り合うようにしていて、そのバランスが崩れるときが関係性に変化が訪れるときなのです。
カウンセリングでは、そうしたバランスを注視しながら、時にはバランスを崩し、時にはその崩れを直すような方向にてお話を伺ったりするのです。
では、そうしたより具体的に、「会社」「男女関係」「家族」の3つのケースを通して、バランスの法則をご紹介していきたいと思います。
どうぞ、お楽しみ下さい。
>>>『バランスの法則3(2)~ワンマン社長とイエスマン~』につづく