パートナーシップ・コミュニケーション(2)~正しさの争い~

男女や価値観など、お互いの違いが明確になってくると、双方の主張がぶつかり合う“パワーストラグル”の段階に入ります。

その時期になると、相手に対する不満が強く出てきて、どちらが正しいか?という争いに突入します。ところが、どちらが正しいかを争っているとき、そこに幸せはないんですよね。そこでパートナーシップは対等であり、正しさよりも幸せを選ぶことを選ぶコミュニケーションについてお届けします。

●テーマ2:正しさの争い

お互いの違いが明確になってくると、それを受け入れる余裕があるうちはいいのですが、必ずしもそうはいかない場合もあります。

例えば、付き合っている間は気にならなかったことや受け入れられてたことが、一緒に暮らすようになったら我慢できなくなった、みたいなことありませんか?

「彼は結構お金に対してアバウトで、“いいな”と思ったものをホイホイ何でも買ってしまうんです。付き合ってる間は良かったんですけど、一緒に生活するようになったら気になるようになって。これから家計を一緒にするとなったら、それでは不安なんです」

きっと彼は「お金は天下の周りもの。何とかなるって」という考え方の持ち主で、だから「お財布に入ってるお金は全部使っちゃう」のかもしれません。
一方、彼女は「お金はちゃんと管理しておかないと、必要なときに無くなって困る」と思うタイプなのでしょう。

こういうとき、あなたが彼女の立場ならば「何とか彼の放蕩癖を直してもらわなければ」とか「もし彼と結婚するんだったら私がとにかくきちんとしなければいけない」と考えたりしませんか?
そして、きちんと小遣い制にして、家計は私が握ろうとしませんか?

しかし、その結果、どんな夫婦関係になるか想像できるでしょうか?
彼が大人しくそれに従ってくれているうちはいいのですが、お金をきちんと管理するということは「お金に対して自由な彼を束縛する」ということになりますよね。
「自由」を束縛された人間がどうするのか?どうなるのか?は分かりますよね。
何らかの反逆を企てるようになったり、隠れてこそこそ何かしようとしたりするでしょう。
思春期の頃、親に隠れて何かしたくなるのと似た心理ですね。

この問題で、「彼女」は無意識のうちに“私のやり方や考え方が正しい”と思い込んでいることにお気づきでしょうか?
「お金をホイホイ使ってしまう彼は間違っている」という前提に基づいて、彼のその行動や価値観を否定してしまっていることが分かりますでしょうか?

だから、彼女は無意識のうちに彼にこう言ってるわけです。
「あなたのお金の使い方や価値観は間違ってる。だから、それを直しなさい。」

さて、そんな風に自分を否定されたとしたら、相手はどんな気持ちになるでしょうか?というのがこの問題のポイントなんです。

特にこうした問題は“社会的に悪いとされていることをした場合”には更に顕著になります。

「夫、浮気したのに全く謝らないんですよ。『もう終わったこと』にしようとしてるんです。どれだけ私の気持ちを傷つけたのか、ネチネチ責めてしまうんですが、最近は、彼、『いい加減にしてくれよ』って逆切れするんですよ。そんな資格ないのに。本当に終わったのか信じられないので、毎日何をしてるかちゃんと確認しないと安心できないんです。」

こんな話をお伺いしながら、浮気の再発は近いかもなあ、と思ってしまうんです。

皆さんもそうだと思うのですが、“自分を否定する人”や“責める人”の近くにいたいと思う人はいませんから、きっと彼が今も奥さんと一緒にいるのは「彼女を傷つけた罪悪感から」が占める割合も高いと思うんですね。

だから、その否定から逃げたくて、また浮気をしるしかなくなるのかなあ、と思ってしまうわけです。

じゃあ、浮気していいのか?というと、それはまた別の話しなんですね。

「もし、彼を訴えて別れようと思うならばそれでいいと思うんですね。むしろ、証拠集めをもっとした方がいいです。でも、やり直そうと思うのならば、早めにそういうことはやめたほうがいいですよ。」

と提案します。

「その怒りや不信感、痛み、寂しさに悲しみ。悔しさに嫉妬。そうした気持ちを彼にぶつけて処理しようとしても無くなりません。むしろ、そうした瞬間から、今度はあなたが“加害者”になってしまいます。お互いに傷つけあうことにしかなりません。きっと本音は『私がどれだけあなたのことを愛してるのか分かって欲しい』んだろうと思いますし、『実は私にも落ち度があったかもしれない』という罪悪感が、一層彼を責めさせてしまっているのかもしれませんが、でも、それは二人の関係にとって辛くて痛いだけなんです」

そうして、この問題を前向きに解決していくために、
「どうして彼は浮気せざるを得なかったのでしょうか?」
「この浮気の問題からあなたは何を学び、どう成長しますか?」
というテーマとして向き合っていくことを提案するんですね。

確かに社会的にはあなたは正しいのかもしれません。
でも、それは、二人の関係性を必ずしも“幸せ”にしてくれるものではないかもしれないんです。

私たちが正しさを主張する裏側には、「本音を言うと、自分は変わりたくなくて、相手に変わってほしい」という依存心が隠れています。(これは“自立の依存”という問題ですね)

先ほどのお金の問題を解決するには、一旦、自分のやり方や正しさを横において、彼の「自由さ」という価値を認めてあげる必要があります。

むしろ、パートナーシップ・レベルで見れば、彼にはあなたのきっちりさが必要かもしれませんが、あなたも彼の自由さを取り入れる必要があるのかもしれません。
そうして、あなたの「きっちりさ」と彼の「自由さ」、その二人の価値観を“統合”していくことで、新しい二人だけのやり方が生まれてくるのです。

「普段の生活は私が管理することにして、彼には投資とか運用とかを考えてもらうことにしました。10万円利益が出るたびに、それはあなたが自由に使っていいお金だよって言ったら、彼、めっちゃやる気になってましたね。それに彼のお坊ちゃん的な考え方は、私の固い頭を柔らかくしてくれてることに気付いたんです。どうも私は長女気質が抜けなくて、しっかりしなきゃって思いすぎてたんですよね。今はもう少しゆったり考えようと思えるようになりました。」

つまり、パートナーシップはいかなる場合も対等なんですね。
一見、あなたにとっては“悪”だと思える要素も、違う角度から見れば“薬”になることもあるのです。

でも、言うは易し、で、それを実践するのはものすごく難しいですよね?
そんな対等性の難しさについて、次回はお話したいと思います。

>>『パートナーシップ・コミュニケーション(3)~話し合い(対等性)の難しさ~』につづく

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