人の意見を聞かねばならぬと思うのは何故?~Noが言えない理由を探る~

相手のアドバイスを聞かねばならないと強く感じる場合、相手の意見に同意することで相手の感情を乱したくないという発想を持っているケースが考えられます。

ここで心が感じる感情は、相手が感情的になることへの恐れと同時に、人との間で感じる親密感を失ってしまうのではといった恐れであることが多いのです。
その恐れから逃れたいと感じる度合いだけ、人の意見を聞かねばならないという発想も生まれやすいですし、あなたが強くそう感じている度合いだけ、自分の思いとは逆の行動をとる人に対しては怒りがこみ上げ、許せなくなることがあるのです。

このような状況から抜け出すためには、まずは自分の感情のルーツ、過去を見つめ、自分がどのような恐れを感じているのか?を理解し、その感情を受け止めていくことが大切だと心理学では考えます。

◎リクエストを頂きました◎
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いつも心理学講座を参考にさせて頂いています。
心理学講座では、よく「気持ちを伝える」ことの重要さが書かれていますが、コミュニケーションそのものの意義について、時々考えてしまいます。

例えば、進路や恋愛のことで誰かに相談してアドバイスをもらった場合、相談したからには、そのアドバイスに従わなければいけないような気がしてしまいます。
また逆に、人に何かを相談されてアドバイスをしたのに、その人が私のアドバイスに従わないと「せっかくアドバイスしたのに!」とか「私の言っていることを理解していない」と怒りに近い感情を感じてしまいます。

年齢や経験を重ねるにつれ、このように考えることは減ってきたのですが、それでも自分が意識しない場面で、罪悪感を感じたり、怒ったり傷ついたりすることがあります。これが原因で、職場の人間関係やパートナーとの関係がこじれてしまったこともあると思います。

この、「アドバイスには従わなければならない」という心理について、心理学講座で取り上げて頂けたら幸いです。

(一部編集させていただいております)
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■いただいたリクエストのように相手のアドバイスを聞かねばならないと強く感じる場合、相手の意見に同意することで相手の感情を乱したくないという発想を持っているケースが考えられるんですね。

もちろん他にもいろいろな理由が考えられますが、どこかであなたが「相手の意見に従順である」=「相手の意思やコントロールに付き合うことで相手の感情が落ち着いたり、相手が楽になる」経験があり、自分がほっとした経験、危機を脱した経験があるのかもしれませんね。

その代表例として考えられるのが、私達の幼少期の経験。

例えば、何かしら理由があって両親に叱られる経験をするとします。そこで子供としては何とかその場を逃れたいと思うものですよね。「自分の何がいけなかったんだろう?」と冷静に自己分析し、両親の怒りを冷静に受け止めることができる小さな子はなかなかいないと思うんです。

「ごめんなさい・・・。」とっても悲しい気持ちになりますし、幼少期の私達にとって親は絶対であり、大好きな存在でもありますから「これ以上怒らないで・・・」と感じることもあったかもしれませんね。

ここで私たちが感じるのは、怒りに対する恐怖と、心理学では「分離感」という言葉を使いますが、常に一緒にい続けたいと願う両親に突き放されるような「恐れ」と言われています。

これは少し昔にあった家族の風景なのかもしれませんが、子供が悪戯をして怒られ、親に押入れの中に閉じ込められて泣いている、なんてことがありましたよね。
あの押入れの中の子供が感じているのは、閉所や暗闇への恐怖もあるでしょうが、どこか両親と分離してしまうという恐れも同時に感じているんですね。一人ぼっちだ、見捨てられる、といった恐れです。

子供時代の私達にとって「何故親が怒っているのか?」はあまり分かりません。ただ「怒っている」という感覚を持ちます。そして怒っている両親に対して「自分が悪い子だから自分を拒絶している」と感じることがあるんです。

なので、私達の中で「分離してしまう恐れ」と「親が感情的になっている現実」がダイレクトに結びつくと

「誰かが感情的になること、怒ること=親と分離してしまうのではないか?一人ぼっちになってしまうのではないか?」

という不安が生まれることがあるんです。つまり愛されないことを恐れるようになるのです。

子供にとって両親との分離は何よりも恐れを感じるものです。デパートで迷子になってしまい両親がいない不安で泣きじゃくる子供の心理と同じですね。

すると子供は、出来るだけ両親が感情的にならないように「よい子」や「手のかからない子」になろうとする場合があります。両親の言うことは素直に聞こうとしますし、親の意思を汲み取ろうとします。そして両親の意思が自分にとってどう感じるか?は別にして、ただ従うことが分離してしまう恐れから逃れられる手段の一つになるケースがあるわけです。

もちろん両親との関係だけではありません。友人関係、周囲の大人との関係で同じような拒絶されるような感覚を持つことも十分考えられます。また、そこに別の要素、例えば暴力であったり、自分に対して否定的な言動をされた経験などがあれば、その感覚は心の痛みとして残りますから、恐れがもっと強まると想像できます。

さて、このような幼少期の体験があると、今の自分が人間関係や親密さを作る時に「人の意見を聞かねばならない」という思いを抱きやすくなります。

これはかつてのあなたにとっての「人との繋がり」を確保する手段であるのですが、しかしその方法を未だ自分が採用し続けているのかもしれませんね。心理学ではこれを「心理パターン」と呼びます。

いただいたリクエストにある「人のアドバイスを聞かねばならない」という思いは、心理的に見てあなたの過去の経験と繋がっていることがとても多いのです。しかし、その感覚は意識的には全く捉えられず、「人の意見を聞かない選択=拒絶される漠然とした恐れ」といった感覚で感じることが多いと思います。

■ところで、現実に生活していく上で「NO」というコミュニケーションが必要になるケースがありますよね。いつも相手の意見を聞き続けているだけでは難しいですし、自分の感情も乱されやすくなるでしょう。

しかし、上に書いた心理パターンを持つ方が「NO」を表現するとなれば、大きな恐れを伴うことも事実でしょうから、「NO」を表現しようと思うまでに大変な勇気が必要になり、時には「相手を本当に否定し拒絶しなければならないぐらいの感覚」を持つことがあるかもしれません。

一方、自分がアドバイスをする立場になれば、それは自分の中のルールや常識「アドバイスは拒絶しない・できない」という発想のもとに行われます。その自分のルールを相手が簡単に破ったとすれば、心中穏やかではなくなることも容易に想像できそうです。

そんな時、どこか自分のやり方、ルールを真っ向から否定されたような感覚を感じることがありますから、何故か私達は相手をコントロール(自分の想定するような言動をさせよう)としたくなる心理が働きます。

そうなると、いただいたリクエストにあるように、あなたがNOを言うたびに人間関係で「自分が悪い」という罪悪感を感じやすくなりますよね。相手に対して怒りを感じたり実際に表現してしまうかもしれません。自分の中の善意から来ているアドバイスをしたにもかかわらず、どこか押し付けている意識や、何で分かってもらえないのか?というニーズを刺激することがありますからね。

■とはいえ、私達はいつも「親密感」を求めるものです。それはとても自然な心理です。

また、私達は成長するにつれ「求めることが悪いこと」であり、「与えることが良いこと」であるような観念を持ちやすくなります。それは私達は元々「愛したい」生き物だからなのですが、それ故に過剰にいい人になろうとしたり、愛せない自分、大人になれないを責めてしまうと、自分の心の余裕をドンドン失い、愛することが苦しくなったり、難しくなってしまいます。

このような状況から抜け出すためには、まずは自分の過去を見つめ、自分がどのような分離する恐れを感じているのか?を理解することが大切だと心理学では考えます。

そしてその恐れを自分が受容し、そして自分の過去にも「あなたに向けられていた愛情や親密感があった」ことを心で実感することが問題解決の1つのプロセスになりますね。いつも恐れにさらされ、自分に対してネガティブな思いを抱き続けることを止め、自分を許して認めていくことでもあります。

それはどこかで「自分は愛される存在」であり、「誰かを愛したい存在」であることを受け止めていくことに繋がっていくのです。

以上、皆さんの参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

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年間400件以上の面談カウンセリングを行う実践派。「男女関係向上・男性心理分析」「自信・自己価値向上」に独特の強みをもち、ビジネス・ライフワーク発見なども対応。明快・明晰かつ、ユーモアと温かさを忘れない屈託のないカウンセリングは「一度利用するとクセになる」と評され、お客様の笑顔が絶えない。