パートナーとの金銭感覚の違いがトラブルの元になるのは、その違いをお互いに理解しにくく、しかも具体的に自分の生活に影響してくるため、ついどちらかが我慢を強いられることになりがちだからだと思われます。金銭感覚には、その人その人の「ニーズ」や自己価値に対する観念、将来に対して楽観的か悲観的か、人や自分への信頼度などの人生態度が影響します。
誰しも「ニーズ」や不安を抱えて生きているのですから、お互いの「ニーズ」をどう満たしあえるか、不安をどう支え合えるのかを話し合うのが、金銭感覚をすり合わせていく出発点になりそうです。ごまかしがきかない問題なので、厳しいですが、きちんとお互いに向き合って乗り越えられれば、二人の絆はより深まるはずです。
◎リクエストを頂きました◎
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結婚して4年になる夫婦ですが、夫との「貯蓄感覚」の差異で悩んでいます。親によって経済的に恵まれ続けてきた苦労知らずの夫と、元々自立心が強く、将来危機管理などの為にしっかり貯蓄もし続けて生きてきた私とではあまりにも温度差があり、私には、40歳になって貯蓄への真剣度が薄い夫の思考が理解できないし、夫も私の話を全く理解しません。金銭感覚の違いはどう考えてどう乗り越えたらいいのでしょう?
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リクエストをありがとうございました。
パートナーとの金銭感覚の違いを乗り越えるための考え方について解説してみたいと思います。
パートナーとの金銭感覚の違いがトラブルの元になるのは、その違いが理解しにくく、しかも具体的に自分の生活に影響してくるため、ついどちらかが我慢を強いられることになりがちだからだと思われます。ごまかしがきかない問題なので、厳しいですが、きちんとお互いに向き合って乗り越えられれば、二人の絆はより深まるはずです。
お金で何を手に入れているのか?
そもそも「お金」を使うということで、私たちはいったい何を手に入れようとしているのでしょうか。これを考えることで、自分の隠れた「ニーズ(欲求)」に気づくことができます。
食べ物を買うのは、単純に「お腹を満たす」という基本的な欲求のためかもしれないし、「おいしい」という快楽を得るためかもしれません。「親しい人と分かち合う」、という楽しさを求めていることもあります。本当は欲しくもなかった服を買い続けていたのは、感じのいい店員さんに褒めてもらいたかったからかもしれません。分の悪いパチンコに通い続けて大枚はたいてしまったのは、それだけ払っても「幸運」を探し当てたかったのかもしれません。
手に入れたそのモノが欲しいこともありますが、そのモノを買うことを通じて満たしている「ニーズ」を理解することが、お互いの金銭感覚を理解する第一歩になります。
現在か未来か?
「お金」を使うか、貯めるか、という綱引きは、今ここでニーズを満たすか、将来までその「ニーズを満たす力」をとっておくか、という選択です。
「お金」を気前よく使うということは、「現在」を生きることを大事にしていて、良くも悪くも「将来」をあまり考えていない、と言っていいでしょう。どんな状況でも「何とかなる」という自分や社会に対する信頼感のある人なのかもしれません。あるいは、逆にすてばちになっていて将来のことを考えられないのかもしれません。
一方、「お金」を貯めることが上手な人は、「現在」を楽しむことより「将来」どうなるかが大事な人と言えます。「子供ができたら」とか、「将来マイホームが欲しい」とか、将来の夢を描いてそこに向かって歩いている、という感じが好きなのかもしれません。逆に、将来をとても悲観的に見ていて、最悪の事態を想定して貯金をすることで自分の不安感を支えようとしているのかもしれません。
言いかえれば、パートナーとの「使いたい」と「貯めたい」の綱引きは、「現在を楽しみたい」と「将来の安心がほしい」という価値観のぶつかり合い、ということになります。
自立と依存の間の深い溝
「将来のことをあまり考えない」というのは、「何かあっても、きっと誰かが何とかしてくれるよ」ということになり、心理学では、「依存」していると見ます。普段、とても自律的に生きているのに、金銭感覚だけが緩い場合も、その人の依存的な側面が「お金」に表れていると考えられます。
一方で、「将来をきちんと計画しなくては」という発想は「何があっても自分で何とかしなければどうにもならないよ」という信念からきているので、心理学的には「自立」が強い、と考えます。
依存の人と自立の人が、同じ預金額と同じ収支を見ても、発想の出発点が違うので、話が噛み合わないのです。どうやって歩みよればいいでしょうか。
「信頼」と「ヴィジョン」で橋をかける
お互いの強みを取り込むことに努力してみる、という考え方があります。
心理的依存の人は、「誰かが何とかしてくれる」という人への「信頼感」(「頼りたい」)があることが強みです。これは、心理的自立の位置にいて、常に「自分で何とかしなければ」と考える人が、「人を頼ってはいけない」と自分を戒めているために、なかなか持てない感覚です。
心理的自立の位置にいる人には、自分が何とかしようという「責任感」の強さがあります。これは、心理的依存の位置にいる人が怖くてなかなか引き受けられずにいるものです。
自立の人は、「お金を貯めなければ」という気持ちを少しだけ横において、「きっと大丈夫」というパートナーのもっている「信頼感」を共有してみることで、「現在を楽しん」でみませんか。
依存の人は、「現在を楽しみたい」気持ちを少しだけ抑えて、「将来を楽しむ」ために自分ができることに「責任」を引き受けてみませんか。
それは、とても勇気のいることかもしれませんが、お互いにとって、「現在を楽しむ」ことが大切であること、「将来の安心を創る」ことが大切であることを十分に理解しあうためにも、相手のしていることをちょっとだけやってみる、のは役に立ちます。
少しずつ、相手の価値観に近づくことで、お互いへの信頼感を高めながら、将来のビジョンを一緒に作っていけたなら、パートナーシップの絆は一層深まることになるでしょう。