こんばんは、平です。
先々週、先週に続き、セックスレスの心理的側面についてお話していきましょう。
アダルトビデオの傾向を見ても、私たち男性というのは必ず、いっぱい感じてくれる女性が大好きといえます。
マニアックなタイトルはさまざまにありますが、『不感症の女』シリーズとか、『ぜったい感じてあげないもんね』などというのはありえないわけです。
では、なぜ、いっぱい感じる女性が愛されるのでしょうか?
それは、セックスにおいて、私たち男性は主導権を握っているように見えますが、じつはただの“奉仕者”に過ぎないからです。
私たち男性は、女性に感じてもらってようやく、「自分も感じていい」という許可がもらえるのです。
アダルトビデオを心理分析してみると、いっぱい感じている女性を、男性は「こんなに感じて、いやらしいやつだ」と責めます。でも、じつは、「だから、僕も感じちゃってもいいよね?」という構成になっていることがほとんどなのです。
言い換えれば、感じるということについて、男性は女性にものすごく依存的になっているわけです。これは、性的な場面にかぎらず、あらゆることに共通しているのですが。
結婚して何年か経った夫婦の奥さまから、「主人はまるで黙々と作業するようなセックスをする。“愛してる”なんて言ってくれたことがない」というご相談を受けたことがあります。
そこで、私は、「奥さまのほうから、どんどん“愛してる”と言ってください。そして、最後のほうで、ご主人の顔を見ながら“愛してる?”と聞いてみてください」とアドバイスしました。
男性の多くは、その問いかけに答えて「愛してる」と言った瞬間、つまり、愛が彼のハートに入ってきた瞬間、ほとんどの場合、不覚にもフィニッシュしてしまうようなのです。
愛にはそれほど、「がまんしている男性」をがまんできなくさせてしまうほどの力があるようなのです。
そして、もしも、おたがいに愛と感謝を感じながらセックスをすることができるようになったとしたら、「いとおしい」、「愛してる」と感じるたびに、ハートの奥がじわじわと気持ちよくなるようなセックスに変わってくるのです。
日本人は、セックスしている最中は目を閉じていることが多いようです。でも、こんなふうに、見つめ合い、感情を感じながらするセックスは、二人の愛をどんどん深めていきます。
江戸時代に“目交う”、“目合う”(ともに読みは“まぐわう”)という言葉があると、先週、お話しましたが、それもまさにこういうセックスのことなのです。
ある年配のご夫婦の奥さまは、子どもを4人も出産されたので、おなかには妊娠線がたくさんありました。
それは、肉体的にはけっして美しいものとはいえないわけですが、ご主人はこうおっしゃいました。
「うちの嫁は命がけで、私の子どもを4人も生んでくれた。この線は私にとっては、なにより美しく、なによりいとおしい」。
そして、セックスのときは、とりわけその妊娠線をいたわるように愛撫するそうです。
すると、奥さまもそんなご主人に深い愛を感じるからなのでしょう、不思議なことに、ふつうなら性的には感じないおなかのそのあたりが、なによりも敏感になってきたというのです。
女性の性感帯としては、脇の下、首、耳などがよく知られていますが、それらはもともと人間にとってのウィークポイントであり、触れられたりするのに恐れを感じる場所といえます。
そこに触れられるのを受け入れることにより、相手を敵ではなく、親密な相手とみなします。すると、恐れから解放され、触れられることが安らぎとなり、気持ちよくなったりするのだそうです。
また、男性にとって、セックスは、すべての緊張やストレスから解放されるときであり、唯一、感情とつながれる行為といえます。
だからこそ、どんな睡眠薬や安定剤よりも、大きな安らぎを作るとも言われているのです。
男性が女性の中でフィニッシュするというのは、心理的にはおちんちんが食べられてしまったというような感覚を作ります。それは、自分の男性的なペルソナ(仮面)が外れ、男としての責任や義務から解放されたような安らぎにもつながります。
男性の中には、セックスのあと、すぐに眠ってしまう人も多いのですが、それは、ほんとうの意味で心が裸になり、そして、“仮の死”を迎えるからだといわれています。
ほんとうに素晴らしいセックスというのは、あるいは、心を裸にすることから生まれるのかもしれませんね。
では、次回の恋愛心理学もお楽しみに!!