「ごめんなさい」「申し訳ない」「私のせいで…」と感じる罪悪感というのは、私達をとても苦しめる感情です。
罪悪感を感じている時、その罪を償うだけの罰を受けることによって心のバランスを取ろうとするために、苦しみが何倍にも増幅してしまうという、厄介な感情です。
そうした苦しみを感じないようにするために、私達は感情を抑圧して感じないようにします。
感情を抑圧して感じないようにすることでその感情を感じなくて済む反面、それが新たな問題を作り出すことがあります。
今回の心理学講座では、罪悪感を抑圧していることで表出する問題に目を向け、その隠れた罪悪感に気づき、その罪悪感を解放していくことで、表出している問題を解決していくというアプローチを紹介したいと思います。
●罪悪感の特質と感情の抑圧
誰かを傷つけてしまった時、嫌な思いをさせてしまった時。
「ごめんなさい」「申し訳ない」「私のせいで…」
こんな気持ちの時、私達の心が感じている感情を罪悪感と呼びます。
文字通り、罪を犯してしまったような、悪いことをしてしまったと感じる感情です。
そして、そんな悪いことをした自分を責める気持ちが出てくるのも、罪悪感の特徴といえるでしょう。
私達がこの罪悪感という感情を感じている時、その罪を償うだけの罰を受けることによって、心のバランスを取ろうとします。
罪滅ぼしとして、「悪い自分にふさわしくないものを受け取らない」という罰を自分に与えます。
すなわち、「幸せ」「喜び」「楽しみ」「自由」「開放感」といったものを受け取らないようにすることで、その罪を償おうとするのです。
だから、罪悪感を感じるような出来事があった時には、自分で自分のことを責めて苦しむだけでなく、上記のような罰を自分に与えることでその苦しみは何倍にも増幅します。
罪悪感というのはそれほど私達を苦しめる感情であり、私達はそれを感じることを好みません。
だから、できるだけ罪悪感を感じないように、その感情を抑圧して感じないようにします。
抑圧された感情というのは、散らかった部屋の荷物やゴミを無理矢理押入れに詰め込んで隠して「部屋がきれいになった」と言っているようなもので、表面上の意識では感じることはありませんが、その感情がなくなったわけではありません。
よって、抑圧した状態で罪悪感を持っていると、罪悪感を感じることはないかもしれませんが、その罪滅ぼしのための罰だけを受けるという事態が生じます。
そうすると、「何でこんなことが起こるんだろう?」「どうしてこんな目に遭っちゃうの?」というような、身に覚えのないことや理解できないようなことが問題という形で出てくるのです。
しかも、その問題や状況というのは、どちらかというと自分が被害者のような立場に感じることが多くなります。
罪悪感を感じる状況というのは、どちらかというと加害者の立場にいる時に感じる感情ですよね。
だから、罰を受けているような被害者の立場にいるような状況の時に、それが罪悪感の仕業だとは、なかなか気づきにくいのです。
それは、いわば抑圧された罪悪感が作り出す罠のようなものです。
今回の心理学講座では、抑圧された罪悪感が作り出す罠、すなわち、罪悪感を抑圧していることで表出する問題に目を向けることで、隠れた罪悪感に気づき、その罪悪感を解放していくことで、表出している問題を解決していくというアプローチを紹介したいと思います。
>>>『罪悪感が作り出す罠(2)~“責められる/責める”が増える~』へ続く