人の目が気になるというのが問題になる時、実際にどのように見られているのか?という部分に加えて、どのように見られていると“感じるのか?”という部分が重要なポイントになり、それらが一致しないこともあります。
その謎を「投影」という心理学で使われる考え方を用いて解き明かしていきます。
人の目が気になるという問題を見ていく際、依存時代のパターンや痛みの他に、重要なポイントがもう1つあります。
それは、自分が「どのように見られていると感じているか?」と、まわりの人達が「実際にはどのように見ているのか?」というのが一致しないことがあるということです。
例えば、同じ電車に乗っていた男の人(Aさんとします)があなたを見る目が、嫌われているような視線に感じるということがあったとしますよね。
そうすると、Aさんの視線を感じるたびに嫌われているような感じがして嫌な気分になります。
ところが、あなたのことを見ているAさんがあなたのことを嫌っていなくても、まるで自分のことを嫌っているように感じることがあるのです。
では、どうしてそんなことが起こるのでしょうか?
投影が作り出す「人の目」
その謎を解く鍵は「投影」です。
投影とは、自分の心の状態や思考パターンを無意識のうちに他の人や物に映し出すという考え方です。
Aさんが実際にあなたのことを嫌っているかどうかは、Aさんにインタビューしてみないとわかりませんが、もしAさんがあなたのことを嫌っていないにもかかわらず、あなたが嫌われているように感じたとしたら、あなたがAさんに何かを投影して見ているというふうに見ることができます。
Aさんに何を投影しているかというと、大きく分けて3つのパターンが考えられます。
まず1つ目は、昔、別の男の人(Bさんとします)に嫌われた経験があって、Bさんを、一緒に電車に乗り合わせたAさんに投影していると考えられます。
一緒に電車に乗り合わせたAさんの表情や目つきや雰囲気などが、昔あなたのことを嫌ったBさんと似ていたのかもしれませんし、昔、Bさんに嫌われたことで作られた「男は私を嫌う生き物だ」という思い込みが、そのように感じさせるのかもしれません。
もう1つのパターンとして考えられるのは、自分で自分を嫌っている自己嫌悪を相手に投影しているということです。
嫌われていると感じる時に、「自分が自分を嫌っているのと同じように」という枕詞が隠れているのです。
そしてもう1つのパターンとして考えられるのが、あなたがAさんのことを嫌っているという、あなた自身が感じている感情をAさんに投影しているということです。
わかりやすく図式化すると、
・あなたの「Aさん嫌い」という気持ちが出てくる
↓
・その嫌う気持ちをAさんに投影
↓
・「Aさんは私のことを嫌っている」と感じる
では、どうしてこのような心の働きがあるのでしょうか?
ちょっと想像してみていただきたいのですが、「あなたがその人のことを嫌っているから、嫌われているように感じるんですよ」と言われると、どんな感じがしますか?
ムッとしたり、カチンときたり、「そんなことないよ!」と反論したくなるような気持ちになりませんか?
どうして怒りや反発の気持ちになるかというと、自分が誰かを嫌っている状態というのは気分が悪いからなのです。
自分が誰かを嫌っているという嫌な部分を自分から切り離して相手に投影をすることで、その気分の悪さを感じないようにするという防衛作用が、投影をする目的であり、投影のメカニズムなのです。
その他には、上記の3つのパターンの複合型というのもあり、実際のところは複様々な要素が複合に絡み合っているというのがほとんどです。
もちろんこれら全ては意識的にやろうと思ってやっているのではなく、無意識的にオートマチックに心が処理しています。
(余談になりますが、この投影という心の働きを見ていくと、心の処理能力ってすごい!と感心してしまいます。 そして、好きで人を責めたり嫌ったりする人もいなければ、責めたり嫌ったりしていい気分になる人というのもいないというのがわかり、「人は愛することが大好きで、愛したい生き物なんだな」って、何だかあったかい気持ちになります。)
このようにして、実際にどう見られているかどうかとは別に、人の目が気になってしまう状態が生じます。
そして同時に、この「投影」が、人の目が気になる問題を解消するのに役立つものにもなるのです。
>>>『人の目が気になる時(4)~与えることと「自分の目」~』へ続く