躁鬱病からの社会復帰が怖くて

相談者名
はっしー
28歳男性です。
東京大学卒業後、大手メーカーで企業戦士をしていて2年前に躁鬱病を発病。
特に鬱状態がひどくてものすごく苦しみ、会社は退職し、8ヶ月もの入院を経験しました。現在は福岡県の実家でのんびりと通院療養中です。病状の方はだいぶ落ちついてきて、社会復帰をしたいと思えるところまで来ました。
ただ、一方で社会復帰をするのがとてもこわいのです。

僕は子供の頃からずっと、競争の中に身をおいて生きてきました。
中学、高校、大学と3回の受験に成功できたのは、人一倍の頑張りと負けん気のなせる業だと思っています。でも10歳から18歳までの受験戦士生活で、僕は人と自分を何かにつけて単一の次元(点数とか、偏差値)の上で比べてしまう癖がついたように思います。
社会人になってからも、それまでと同じような意識、周りの同僚たちと競争する意識で仕事に取り組んできました。結果、入社以来3年半で、仕事ぶりが評価されたのでしょうか、非常に負担の大きいポジションに異動になりました。僕の前任者は役員賞をもらうほどの逸材で、優秀さを認められて全社一の若さでオランダの支社へ赴任していきました。その後釜として迎えられたのが僕でした。
新しいポジションの仕事はとてもハードで、毎日深夜までの残業が続き、土日もありませんでした。僕は前任者に比べて劣っているとみられるのがイヤで、上司の過大な期待にも応えようと死ぬ気で頑張りました。でもいくら頑張っても、異動直後で慣れない僕は仕事をうまくこなすことができませんでした。上司に相談したり支援を仰いだりすればよかったのでしょうが、そうすることで評価が落ちるのがイヤでひとりで頑張りつづけました。焦り、余裕を失い、部下である新入社員の女性の相談に乗ってあげたり適切な指示をしてあげることもできず、いつしか彼女は僕と口をきいてくれなくなりました。向かいの席に座っている仕事上のパートナーが口もきいてくれないというのはものすごいストレスでした。そんなこんなでストレスが重なり、ついに発病したのです。

僕が発病時のエピソードから学ばなければならないのは、「人と自分を比べるな。自分は自分でいいじゃないか」ということだと思います。受験戦争の延長の価値観で前任者と自分を比べ、負けまいと頑張りすぎたことが発病の原因だと思うからです。しかしアタマではわかっているのですが、どうしても人と自分を比べる癖が治りません。特に自分より優れた人に会うと、相手のことがすごくまぶしく見えて、自分はなんて能のない、情けない人間なんだろうと思います。

社会復帰がこわいというのは、社会に戻れば発病時の前任者のような自分より優れた人に出会う機会がまたたくさんあるだろうと思うからです。優れた人に出会ったとき、また自分と比べて落ちこんだり、負けまいとして頑張りすぎるのが目に見えているのです。それに、負けん気は僕に高学歴という宝物を与えてくれたものでもあるので、簡単には捨てられないのです。

SMAPの「ナンバーワンになれなくてもいい、もともと特別なオンリーワン」という歌がはやっていますね。僕もナンバーワンじゃなくてオンリーワンを目指せればどんなに楽だろうと思います。でもなかなかそれができないのです。

長くなりました。。。よろしくお願い申し上げます。

カウンセラー
根本裕幸(退会)
はっしーさん、こんにちわ。根本です。
ご相談ありがとうございました。とてもわかりやすい文章を書かれていますね。
ただ、おっしゃいますように常に強い競争意識の中で生きてこられたために、今もまだなおその影響を強く残していらっしゃるようです。
改めて、ご自身でこの相談内容をごらんいただいて、そうした面が出ている個所をチェックなさってみてもいいかもしれません。

特に“戦士”という表現や、「~しなければならない」という強い断定調の言葉が気になりました。

男性は確かに社会の中では企業戦士ですし、会社も猛烈な競争社会を形成していたりします。
そして、その中で働く社員にもその強さや競争意識を植え付けようとする傾向は今もあるようです。

「人と比べるな、自分は自分でいい」とは頭ではわかりやすいものの、果たして、その言葉にどれくらい同意できているのか?というととても難しいところだと思います。
今まで何十年も競争の中で生きてきたとしたら、すぐに違う環境を選べといわれても難しいでしょう。

だから、まず僕がお勧めしたいのは「あせらないこと」です。
これが何よりも大切なことですし、僕が鬱や神経症でカウンセリングに来られる方に特に強くお願いしていることです。
特に男性は社会的な背景もあって、仕事をしてなんぼ、のところがありますから、療養をしていたり、無職でいつづけることに強いプレッシャーや嫌悪感を感じてしまうものだと思います。

でも、今までの無理がたたって、しんどい状況になってしまったとしたら、それをじっくりと癒していくことが今は大切なことだと思うのです。
特に考え方を変える場合には、本気で変わろうと思っても、3ヶ月~半年くらいは結果的にかかってしまうものです。
焦れば焦るほど、しんどくなって挫折してしまいます。
ですから、じっくりじっくりやっていこうと思ってください。

そこからが始まりです。

> 中学、高校、大学と3回の受験に成功できたのは、人一倍の頑張りと負けん気のなせる業だと思っています。でも10歳から18歳までの受験戦士生活で、僕は人と自分を何かにつけて単一の次元(点数とか、偏差値)の上で比べてしまう癖がついたように思います。

めちゃくちゃ頑張ってこられたんじゃないでしょうか?
必死になって、わき目も振らずに勉強なさってたのかな。
でも、そのお陰で高学歴をゲットできたのですから、それはすばらしいことですよね。

ただ、この後に書かれていた職場での奮闘ぶりを拝見しても思うのですが、はっしーさん自身、頑張った結果によって高い高いプライドを作ってしまったような感じがします。
異動後はそのプライドを守るために、夢中で頑張られたところがあるみたいですね。

受験のような短期決戦の場合には、そうした試みも成功する確率が高いのですが、ビジネスなどの場では、長期的な視野も必要ですよね。
しかも、一人で頑張ればいい勉強と違い、年を経るにしたがって、上司や同僚、部下などの人間関係も見据えながら進めていかなければならないと思うんです。
そこでは、自分の器を広げながら周りをリードしていく力も求められるのですが、なかなか、競争意識やプライドが邪魔して、周りとの壁を突き崩せなかったようにお見受けしました。

ですから、ここで改めて人との繋がりを軸に人生を見つめなおしていくことが大切ではないかと思うんです。

> 特に自分より優れた人に会うと、相手のことがすごくまぶしく見えて、自分はなんて能のない、情けない人間なんだろうと思います。

この感覚っていつもはっしーさんを追い詰めていましたよね。
だからこそ、頑張ることができたし、負けん気を発揮することができたんだと思うんです。
でも、これは「恐れ」という感情を作り出すものです。

はっしーさんにとって、能力の無い人間はどうなるべき、と思っていらっしゃるんでしょう?
社会から抹殺されるような、無用な人間に思われるような恐れを感じていらっしゃるのではないでしょうか。

じゃあ、「能力」というのは一体何をさすのでしょうか?

人それぞれに才能があって、魅力があるものですよね。
それを生かすのが仕事や趣味の場であると思うんです。

はっしーさんの本当の魅力や才能というのは何でしょうね?

> それに、負けん気は僕に高学歴という宝物を与えてくれたものでもあるので、簡単には捨てられないのです。

そうですね。ここがね、一番つらいところだと思うんです。

ただ、負けん気によって高学歴を手に入れられたのでしたら、もうそれを使って手に入れられるものは無いかもしれませんよね。
だとしたら、別のツールを手に入れて、それを使ってこれからの人生を見つめなおすことも大切ではないかと思うんです。

負けん気というのもね、悪いものではなく、むしろ、大切ないいものだと思います。
でも、今のはっしーさんにとっては、過去の成功の法則にしがみつく要因になってしまってるのかもしれません。

学歴というのは履歴書に書くものだけではないと思うんですね。
人への信頼を培うものですし、こういうちょっとした文章にもどこかしら反映されているものです。
どう生かしましょうね。

> SMAPの「ナンバーワンになれなくてもいい、もともと特別なオンリーワン」という歌がはやっていますね。僕もナンバーワンじゃなくてオンリーワンを目指せればどんなに楽だろうと思います。でもなかなかそれができないのです。

それは素敵なことですよ。
でも、焦らずにそれを目標にしてみてください。

男性も20代後半から30代前半にかけて、生き方を変える必要に迫られることが少なくありません。
だから、この世代とお話することは僕もすごく多いんです。

新しい自分、それはどんな自分だろうか?をまずは思い浮かべてみてください。
オンリーワンな自分、競争を手放せた自分。

そして、疲れてしまったとしたら、じっくりと自分を見つめなおして、そうした目標を設定するところからはじめましょう。
試験日なんてないですから、今の自分なりのペースが大事です。
そして、今の自分を知ることもとても大切なことです。

そうして、新しい人生を作っていきましょう。
僕も応援していますね。

ありがとうございました。

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