ハードワークの心理

ハードワークに陥る人の心が感じているものの中に、ハードワークから抜け出せるヒントが隠れています。

「彼が仕事ばかりして会う時間がない、会えてもいつも疲れきっている」と、自分の大切な人がハードワークをしている方や、「忙しすぎて心も体もボロボロです」と、ハードワークをしている方からご相談をいただくことがあります。

そういった方のお話をお伺いしていくと、やりがいや充実感を感じながら仕事をして忙しいというよりも、「止めたいのに止められない」「やらずにはいられない」という忙しさであることが多い印象を受けます。

ハードワークというのは、「ワーカホリック(仕事中毒)」という言葉があるように、「仕事」にとても強い依存の状態であると言えます。
対人関係で自立の位置にいる人、その中でも特に、他に依存できる人やものがない状況にいる人が陥ってしまうことが多いようです。

中毒的にハードワークをしてしまう心理的背景を見ていくことで、ハードワークから抜け出すヒントを探してみましょう。

ハードワークに陥る人に共通しているのは、ハードワークの状態は苦しかったり辛かったりするのですが、そのデメリットを補って余りあるメリットを得ることができるために、ハードワークを続けてしまうということがあります。

そのメリットとは、ハードワークすることで、自分が感じたくない感情を避けることができることです。

それでは、具体的にはどんな感情を避けているのか、具体的に見てみましょう。

●スケジュールが埋まっていないと落ち着かない人が避ける感情

仕事の予定でも、プライベートの予定でも、とにかくスケジュール帳の空白が気になって、とにかく忙しくしていないと落ち着かないというタイプの人がいます。

このタイプの人は、何も予定のない空白の時間というのを嫌い、次々と予定を入れていったり、入れる予定がない時には自分でその予定を作り出したりします。

このタイプの人の心の中を見てみると、空白の時間ができた時に感じる感情を感じることを嫌って避けているということがあります。

その感情とは、「寂しさ」や「孤独感」や「空虚感」というものが多いようです。

「自分はひとりぼっち」「自分には何もない」というのを感じるのが、忙し過ぎることで感じる苦しみよりも辛いものになっているようです。

●義務や役割でハードワークをしている人が避ける感情

「家族のために」「会社のために」という、義務感や、役割をこなそうとハードワークに陥るタイプの人がいます。

このタイプの人は、「自分が誰かの役に立っていない」「自分が必要とされていない」という時に感じる「罪悪感」や「屈辱感」、「失敗感」や「無価値感」を避けるために、ハードワークをすることで自分の存在価値を証明しようとします。

自分の存在価値を証明しようとする動機を探っていくと、その人の心は「自分には存在価値がない」と感じていて、それを否定して隠すために証明しようとするのが動機になっています。

そういった動機でハードワークをすればするほど、表面上は人に感謝されたり評価されたり重宝がられたりして満たされるのですが、潜在意識の部分では、「『一生懸命働いたから』認められたんだ。じゃあ、一生懸命働かなかったとしたら、認められないのではないだろうか?」という不安や怖れが強くなってしまい、結果的には「そのままの自分では存在価値がない」という部分が強化されてしまうことになります。

そこで、さらなるハードワークをすることで自分の存在価値を証明しようとする… という悪循環に陥ってしまったりもします。

頑張っても頑張っても、それに見合う心理的報酬を得られずに消耗しきってしまう「燃え尽き症候群」というのは、このような心の動きから起こります。

このように、ハードワークの苦しみや辛さよりも感じたくない感情を避けるために、中毒的に忙しくしてしまうということがあります。

ハードワークの苦しみや辛さが痛み止めになっているのですが、痛み止めとして使っている感情も、それはそれで痛いものですし、あくまで痛み止めなので、止めている痛みが消えて無くなるわけでもありません。

●痛みのケアに必要なもの

痛みの部分をケアしていくには、ハードワークを使って避けている「寂しさ」や「無価値感」といった感情と、その下に隠れている「つながりや親密感」「自分の存在価値」などの「本当に欲しいもの」に気づくこと、そして本当に欲しいものを求めることが役に立ちます。

ハードワークをしてまで避けたい感情ですから、それは大きな痛みでしょう。
その大きな痛みと向き合うことや、本当に欲しいものを「欲しい」と言うのは勇気のいることです。

ご自身がハードワークに陥っている方は、あなたと、あなたのことを大切に思っている人達のために、ハードワークに費やす労力の一部を、その勇気に費やしてみてはいただけませんか?

自分の大切な人がハードワークに陥って要る方は、その人の代わりに、その人が避けている感情と、本当に欲しいものを探してあげてみてはいただけませんか?

本当に欲しいものを「欲しい」と言えた時、言わせてあげることができた時、それがハードワークからの解放の大きな一歩になるでしょう。

この記事を書いたカウンセラー

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