今の二人の関係が友達なのか、恋人なのかが分からなくなってしまうことがあります。
そんな時に自分自身や関係性を見つめていくための手ほどきです。
毎月開催している心理学ワークショップにて「男女関係のなぜ?」をテーマに扱ったことがありました。
そこで参加者の皆さんから頂いたなぜ?にお答えしたり、また、僕のプロフィールページのコーナー「男と女の心理学」でも一つ一つ回答を寄せたんですが、中でも好評を頂いたこのテーマを心理学講座として改めて纏めさせていただきました。
全て「女性」を対象としてますので、男性の方は「彼」を「彼女」、「私」を「俺」、「女」を「男」に読み替えていただけると、多少の調整は必要でも通りは良くなろうかと思います。
恋愛というのは、赤の他人だった異性と知り合い、徐々に距離を縮めて行く関係です。
そのプロセスでは、はっきり「付き合おう」とか「今日から二人は恋人ね」という意思確認がなく、何となく関係が始まったり、また、そうした意思確認があっても相手の態度から「遊ばれてる?」とか「友達以上、恋人未満?」とか「本当に彼氏?」なんて不安になってしまうこともよくあります。
今日はそんな友達と恋人の違いについてお話させていただこうと思います。
●カウンセリングの相談例
こうしたご相談はカウンセリングの中でも意外にあるんですよね。
具体的には次のような感じでのご相談パターンがあります。
A.“都合のいい女?”パターン
「好きな人がいるんですけど、付き合ってるのかどうかがよく分からないんです。
私は彼女だと思いたいんですけど、彼は友達のように思ってる節もあって・・・。
友達に相談したら『それって都合のいい女じゃない?』って言われて不安で」
B.“勘違い”パターン
「何か、友達だと思ってた男の子が、最近彼氏面してくるんですよね。
まるで『俺の女』みたいな態度取られてちょっとむかつくこともあって。
何でそんな風に思われるんでしょうか?」
C.“好きなの?”パターン
「最近、いい感じの彼がいるんですけど、はっきりとまだ付き合ってるとは言えないんです。
恋人と友達の境目ってどんなところにあるんでしょうか?
好きって言えるほどまだ気持ちが高まってないのですが、このままだと付き合うのかな?
という感じで。本当のところどうなんでしょうか?」
D.“これからは友達?”パターン
「付き合ってる彼から別れを切り出されて、これからは友達として付き合おうって言われたんです。
どういう意味なんでしょうか?私はこれからどうしたらいんでしょうか?」
※これらのご相談に対する回答例は最後にご紹介しています。
●心理学的に見ると?
「恋人と友達の違いは?」を心理学的に見るとしたら、アンケートを取ってみるんでしょうね。
皆さんから「その違いはどこにあるの?」って聞いてみて、例えば30%の方はエッチをしたら恋人、そうでなかったら友達、40%の人は気持ちを確かめあったら恋人、それまでは友達、などという風に答えられたら僕としては楽です。
ま、これは社会心理学的な見方でしょうか。
人それぞれ見方がありますから、一概に「これだ!」と決め付けることはできません。
(これは心理学全般に言えることですけど)
●カウンセラーの見方
じゃあ、カウンセラーとしてはどう答えるのか?といえば、
「あなたはどう思います?」
なんて逆に聞き返してみるかもしれません。
そうすると、
「私は、きちんと気持ちを確かめ合ったら恋人だと思うんですけど、彼の気持ちが分からないので、はっきり自信が持てないんです。あ、でも、もう体の関係は何度かあるんですけど」
なんて答えが返って来たりします。
そして、この「恋人なの?友達なの?」という疑問が出る背景を見てみることもカウンセリングではよくやります。
「どうしてその疑問が出てくるんだろう?」
この“そもそも論”的角度から見ていくと、いろんなことに気付けることが多いです。
恋人なのか?友達なのか?という疑問が出てくるということは、
・お互いに気持ちが通じ合えてないような気がする
・二人でいる時間やエッチはある
・周りからは恋人同士のように認識され始めてる
・私の中でちょっと「付き合ってるのかな?」という気持ちの変化が出てきた
などの背景が読み取れます。
●決められない私
でも、そこでは自分の中に自信がない部分があるのかもしれません。
つまりは「決められない」「選べない」私。
もし、決められないとしたら、そこでも「どうして決められないんだろう?」って考えてみるのも効果的ですね。
自分が選ぶことに自信が持てないのかもしれないし、選んで失敗することを恐れているのかもしれません。
そこでも「なぜ怖いんだろう?」「なんで自信がないんだろう?」と見ていくと、そのうち過去のトラウマや家族関係の問題が浮かび上がってくることもあります。
相手の態度を見て自分の態度を決めようとするのは“恋する怖れ”が隠れてる場合が多いですね。
恋して傷つくのが怖い(つまり、それだけ過去に傷ついた経験がある)としたら、何かしら確証がないとはっきりと恋人だと認識できなくなります。
しかも、一度だけでなく、何度も何度も確認したくなります。
そういう風に恋人なのか、友達なのか分からないとき、自分が決定権、選択権を放棄してしまってるのかもしれません。
「気持ちを確かめ合う」ためには、まず、自分がどうなのか?を見つめてみる必要があると思います。
恥ずかしかったり、うまく煙に巻いたりして、流されてしまうとその辺が曖昧なまま関係がスタートしてしまいますからね。
●競争意識の罠
また、競争意識やプライド、意地があると「惚れた方が負け」と思い、自分の気持ちを隠してしまうこともありますよね。
恋愛は勝ち負けじゃないんですけど『負ける=依存する=苦しい』という過去の痛みがそうした競争意識を作り出すことは少なくありません。
そうすると
「本当は大好きなのに、その気持ちが認められない」
とか
「好きになるのが怖くて、相手の言動を細かくチェックしてしまう」
とか
「相手が好きっていうまで、意地でも自分の気持ちは抑える」
とか
「恋人だろうと思ってて付き合っても相手がそのつもりじゃないと馬鹿みたい」
とか、心理的には苦しい状況になってしまいます。
1ヶ月くらいならば駆け引きを楽しむ余裕もありますけど、3ヶ月くらい経てば、むしろ嫌いになろうとしたり、距離を取ろうとしたりして、本当は大好きだったとしても、関係性を壊してしまうこともありますね。
これは20代後半から特に30代の恋愛には多いパターンかもしれません。
●素直な気持ちと選択する意志
だから「恋人なの?友達なの?」と思ったときには、はまずは「私はどうなんだろう?」って自分の気持ちを見つめていくことが大切です。
「素直になるってどういうことなんだろう?」
ってカウンセリングの中でも話題になることがあるんですけど、私たちの心は「好き」と「嫌い」が同居する世界です。
きちんと合意が取れる前から「100%好きなの!」ってのは盲目的な恋になっちゃってる可能性があるくらいで、実際は「80%くらいは好きだけど、あと20%はちょっと微妙」というのが本音であることが多いです。
後は付き合って色々知りながら、さらに好きになっていくことの方が多いでしょう。
しかも、この割合は日々、時々刻々変更します。
朝仕事に行くときは「結構好きかも!」が、昼休みには「うーん。でもなあ」と迷い、帰りの電車の中では「やっぱり付き合いたいかな」という風に変化することも良くあります。
だから、好きなのかどうか気持ちをひとつに決める必要はありません。
選ぶのは態度。
はっきりと付き合うのか、あるいは、友達としてもう少し関係を近づけてみるか。
例えば「今は好きって気持ちは100%ではないけれど、これから付き合っていく上で高めていけるかもしれない」
と思ったら、付き合う方向に進んでみていいと思います。
逆に「うーん。まだまだ自分の気持ちがはっきりしないなあ」という時には、もう少し友達的な付き合いをしてみて、その上で自分の気持ちの変化を見つめてみる方が安全でしょう。
つまり、自分の気持ちがはっきりするまで、もっと距離を縮めることです。
10代の頃やドラマのように「会ってすぐ恋に落ちる」ということはなかなかありません。
恋愛経験があっても無くても、大人になって視野が広がればなかなか新しい恋に踏み出すのは勇気がいるものです。
だから、自分の気持ちをベースにして、どうするのかを都度選んでいきましょう。
周りや相手に流されない勇気。
私がまず決めること、選ぶこと、ということを忘れないように。
そして、それをきちんと相手に伝えると、中途半端な関係にはなる可能性は低くなります。
「せっかく好きって言ってくれたんだから・・・」とか「体だけでも・・・」とか欲が出てくると、なおさら決められなくなりますね。
そうした欲求はなかなか抑えるのが難しいですし、いい雰囲気になったら態度をはっきり決める前に関係を持ってしまい、翌朝後悔することもあるでしょう。
お互い合意して(コンセンサスが取れて)はじめて付き合う、付き合わないになると思うんですね。
それまでははっきりと恋人なのか、友達なのかの区別は付けにくいものだと思います。
●カウンセラーからの答え(見本)
ちなみに先ほどの4つの仮想カウンセリングにお答えしていくとしたら、順にこんな感じになります。
(すべてがこの通りではなくて、実際の現場ではもう少し詳しく状況をお聞かせ願ってから、お答えするようにします)
あとお互い結婚してない場合を前提としてます。
A.
女性としての自分に自信が無かったり、コンプレックスを感じるところはありませんか?
そこをまずは見つめていきましょうね。
だから、仮にこんな風に考えてみて下さい。
「もし、あなたがとっても自信のある女性だったとしたら、彼に対してどんな態度を取るだろう?」と。
きっと、そのあなたなりの答えが今必要な態度、勇気なのかもしれませんね。
その彼に対しては、嫌われるのは怖いし、好きな人だからついつい流されてしまうかもしれないけれど、勇気を持って気持ちを確認してみるといいと思います。
こういうとき「俺も自分の気持ちがはっきりしないんだ。お前のことは嫌いじゃないけれど、はっきり好きって言いきれる自信もなかったりする」なんて曖昧な答えを返されて、なおさら路頭に迷いそうになることもありますが、「じゃあ、あなたの気持ちがはっきりするまで二人で会うのはいいけれど、それ以上の関係は持たないようにしましょう」と毅然と言ってみます。
そうすると彼があなたが選んだとおり誠実な人だったとしたら、今よりきちんとあなたを見ようとしますし、もし、体だけが目当てだったとしたら、あなたの元を去っていくだろうと思います。
あなたの元を去らないとしたら、あなたは今、やはりより女に磨きをかけて、ステップアップするチャンスが与えられたということです。
「もっといい女になるぞー!」って思いで毎日を過ごしてみると、それだけで輝きが出てきますから、是非、チャレンジしてみて下さい。
B.
どこかに思わせぶりな態度取ってないかなあ?
もちろん、自覚症状はないからかもしれないけれど、もし、何かしら自分にも原因があるとしたら、どうしてだと思う?
あなたの中にどこか恋に飽きてる、疲れてる、絶望してるところは無い?
男なんて・・・恋なんて・・・でも、一人でいるのは寂しいし・・・という葛藤はない?
そういうところにヒントが隠れてるかもしれない。
「あたしはあんたの女じゃない」ってはっきり言って見ましょうよ。
もし、そう言えるだけの勇気がないとしたら、どうしてだろう?
そこがポイントだと思うな。
もし、きちんと言ってるのに彼がそれを受け入れられない勘違い野郎だったとしたら、一人で頑張らなくて、友達にお願いしたりして、きちんと距離を置くように言ってもらいましょう。
C.
もう一歩近づくときだと思うよ。
自分の気持ちがはっきりするまで、あるいは、彼の気持ちがはっきり見えるまで、近づいて大丈夫。
メールとか、電話とか、二人でご飯食べに行ったり、自分から誘ってみるのもOK。
たぶん、今は一緒にいると楽しいときでしょう?
だから、もっと楽しんでいいと思います。
まだまだ不安に取り付かれるのは早いかも。
もし、不安になっちゃうところがあったりしたら、過去の恋愛を引きずってるところがあるかもしれないね。
あるいは、女としての自信が全然持てないとか。
あと体の関係はとりあえず待った方がいいと思うよ。
もうしちゃった?
そこでは後々後悔しやすいから。
寝てみないと分からないところもあるけれど。
ということで、とりあえず「楽しもう!」って思ってみて下さい。
そしたら、彼ももっとぐっと近づいてきてくれるんじゃないかな?
D.
付き合ってた期間や別れる理由、最近の二人の関係など、いろいろと状況によって違うけれど、まずは、とてもショックで、傷ついた自分がいるでしょう?
そんな自分に優しくしてあげることが今は一番かな。
痛みが大きいと彼への執着や依存心が強まってしまうこともあるから、しんどいけれど、今は色んな人に話を聞いてもらって、結論は先送りでも今はいいかもしれない。
彼とどうしたらいいのか?ばかりを考えてしまうかもしれないけれど、それはかえって傷に塩を塗ることにもなるから、まずは自分の気持ちを見つめてみよう。
辛いものは辛い。
苦しいのは苦しい。
しんどいのはしんどい、でOKだから。
これはちょっと痛いところだから、すぐには見なくてもいいけれど、彼から見たら、今のあなたではどこか足りないところがあるんだよね。
だから、別れを切り出すわけで、そこを勇気を持って見つめられるようになると、これから先成長する、もっといい女になるための糧に、チャンスになることだと思う。
別れる理由をはっきり伝えてくれなくても、今の自分を見つめていくいい機会にはなるよね。
●最後に
恋人か?友達か?という線は、お付き合いを始めていく上では、一番どきどきわくわくするロマンスの初期でもあります。
だから、この時期に無理をしたり、気持ちに嘘を付くと、後々の関係性に大きく影響を及ぼすものですので、一時の気持ちに流されないように、また、寂しさやプライド、周りの目に惑わされないように「私はこうする」という態度を決めることが大切です。
この辺は男性性の持つ“決断力”が求められる場面でもありますので、特に女性は怖れや迷い、不安を感じやすい状況かもしれません。
また、男性でも仕事や趣味など他のものに意識を取られると女性との関係を軽視しがちになりますので、そのつもりはなくても女性を傷つけてしまうこともあります。
自分の気持ちを見つめ、できるだけ素直になって、そして、自分の態度を都度決める。
その気持ちと態度をお互いに伝え合うことができたとしたら、付き合い始めても、その後結婚が決まっても、向き合い、話し合える関係性を築いていけるのではないでしょうか?
最初は相手を知りたい気持ちが強いですから、最初からこうしたコミュニケーションが取れると、後々本当に楽ですよね。