実らぬ恋愛と切れない関係~助けたい症候群~

パートナーを助けてあげたいと思うことは、とてもよいことなんですが、 その思いがあまりにも強くなりすぎてしまうと、苦しい恋愛になってしまいます。 その裏に潜む影の心理をご紹介します。

恋愛がいつも苦しい恋愛になるというご相談を受けて、お話を聞いていると、
恋愛対象として心引かれる相手が、なぜかいつも、なんらかの問題を持ってい
るという方がいます。

心引かれて好きになった人が、
人を信じられないとか、自分が愛されていると感じられないとか、
自分のことを大嫌いだったりとか、ワーカーホリックだとか、浮気性だとか、
孤独を愛する人でパートナーをほったらかしにする人だとか、
なんらかの問題を持っている相手を好きになっちゃうんですね。

なんらかの問題が恋愛に影響して、苦労する恋愛になることがあるんですね。

例えば、浮気性の彼とお付き合いをしていて、
彼は何度も何度も浮気をするんです。
浮気の度にケンカして、もう一回だけと思い、やり直すんですが、
彼は、また浮気をするんですね、そんな彼と付き合っていると、
心はズタボロに傷ついてしまうし、女性としての自信も傷ついてしまいます。
そんな苦労する恋愛をしている人がいました。

また、ワーカーホリックの彼とお付き合いしていた女性のお話なんですが、
その彼は仕事がとても忙しく、なかなか会う機会がないんですね。

彼は仕事以外の時間は、なるべく自分の休みの為に使いたいというタイプの彼
でした。
じゃあ、デートは、いつしているのかというと、彼から、その女性に
「会いたいから、僕の家にこない?」って電話がかかってくるんです。
そして、彼の家に行ってエッチをすると、バイバイって言われるんです。
都合のいい時に呼び出されて、エッチだけして帰るというのを繰り返すと、
『私は、いったいなんなの?』という惨めさに襲われたり、まるで彼の性処理の
道具のように扱われているように感じがしてしまい、すごく傷ついていました。

なんらかの問題が恋愛が影響して、苦労する恋愛になっていたんですね。

なんらかの問題を持っている人を好きになること事態は、悪いことではないん
ですが、そんな人ばかりを好きになってしまう方の傾向として、苦労する恋愛、
傷つく恋愛になっても、別れられないという人が少なくないんですね。

傷ついて、ボロボロになっても、自尊心を傷つけられても、到底幸せとは思え
ない恋愛になっても別れられないんです。

そんな恋愛になるタイプの方達に、
「なぜ、そんなに傷ついても、彼がいいんでしょうね?
もし、別れられない理由があったとしたらなんだと思いますか?」
そんな質問を投げかけさせてもらうと、

「彼(彼女)を助けてあげたいと思うんです。」
「彼(彼女)も傷ついていると思うんです。 私がここで見捨てると益々傷つ
く と思うと思うんです。だから、頑張ってみようと思います。」

相手が傷ついていることを見抜いていたり、その相手を助けてあげたいと思っ
ている人が結構いらっしゃるんです。
それは、慈愛深さであり、その反面、別れてしまったら見捨ててしまうよう
な強迫観念めいた思いからだったりします。

助けてあげたいというのは、愛や、思いやりからの時は、いいんですが、
そこに、「私が見捨ててしまうと・・・」という強迫観念めいたものが、
はいってしまうと苦しくなってしまいます。

自分を犠牲にしても、相手を助けることを優先してしまうからなんです。
苦しくても、別れられないということは、そういうことなんですね。

僕は、これを助けたい症候群と読んでいます。

では、助けたいと思う人ばかり好きになってしまう傾向は、なぜでてくるんで
しょう?
そして、もっと楽な恋愛もあるのに、苦しい恋愛ばかり選んでしまうのは、
なぜなんでしょう?

●失敗感・罪悪感の補償●

「助けたい」という思いが強くなっている恋愛。
でも、現状はとっても苦しい。そして、自分からは別れられない。
そんな葛藤をされているクライアントさんに、

「もし、彼(彼女)を助けることができたら、その後はどうするんですか?」

と質問させてもらうと、

「彼(彼女)が助かったらですか?・・・嬉しいですね。
そしたら、もういいかもって、安心して別れられるかも」

そういうような思いをもたれている方は、少なからずいらっしゃいます。

それは、彼が好きだからということで、彼と一緒にいるというよりも、
“助ける”“救いたい”ということが目的になってしまっているんです。
まるで、心のレスキュー隊員のように救うことが目的になってしまっているん
です。

彼(彼女)が助かったら(人を信じるようになった、愛を信じるようになった、
自分の幸せを大切に考えれるようになった、一人のパートナーと向かい合える
ようになった、等)今までの苦労が報われて、これから、楽な恋愛、幸せな恋
愛、自分達の幸せに向かって歩き出すスタートにつけそうなものなんですが、
そのスタートの権利を放棄してしまうんですね。

なぜならば、助け終わってしまうと、目的は達成されてしまうので、
別れてしまうんです。
そして、次のレスキュー活動にはいります。

カウンセリングなんかで、その裏の心理を探っていくと、
過去の助けられなかった失敗感や、罪悪感が、その思いを作っていることがあ
ります。

例えば、肉親を病気や、自殺で亡くされたことがあって、生きている間に助け
になってやれなかったという罪悪感や、助けになろうとしたけど、失敗してし
まったという失敗感などがあると、その罪悪感や、失敗感を補償する為に、
弱っている人、悩んでいる人を、助けたいという思いが強く出てくることがあ
ります。

他に例をあげると、仕事が忙しく家族の中で浮いていた父親の寂しそうな背中
を見て、可哀相と思いつつも、仕事ばかりで家族をほっておいた父への怒りか
ら、可哀相と思いつつも父親のことを無視していた方のケースなんですが、
本当は、可哀そう、助けてあげたいと思いつつも、何もしなかった罪悪感を
心の奥に持ってしまい、その罪悪感を補償する為に、寂しさを抱えている男性
をほっておけなくなってしまうというケースがありました。

でも、助けても、助けても、次のレスキューが待っているんですね。
また、新しく助ける人を探しちゃうんです。

なぜならば、助けたかった人を助けてない罪悪感や、失敗感は、そのまま
だからなんですね。
助けようとしているパートナーは、その罪悪感や、失敗感の元になった人の
代替品になってしまっているんで、その罪悪感や、失敗感が埋まらないんです。

そして、助けることに失敗してしまった時は、「また・・・」という挫折感の
ように、人の2倍も、3倍も、罪悪感や、失敗感を強烈に感じてしまうんです
ね。これは苦しいです。

カウンセリングでは、誰に失敗感や、罪悪感を持っているかを探していき、
失敗感を持たなくてもよいこと、失敗では無かったこと、と納得できるように
サポートしていきます。
また、罪悪感の場合は、罪悪感を手放すこと、自分を許すことをサポートして
いきます。

そうすることで、助けなければいけない恋愛から卒業できるようにサポートし
ていきます。

失敗感や、罪悪感から、解放されると、パートナーを助けたいと思ったとして
も、それは愛や、思いやりからくるもので、失敗感や・罪悪感からくる脅迫観
念めいたものではなくなります。

パートナーが助かった時は、ただ良かったと喜べて、そして、次は二人が、
より幸せになれるプロセスをスタートさせようと、そのサポートを頑張った成
果を受け取れるんですね。

そして、失敗感や、罪悪感から、解放されると、その思いを補償しなければな
らないという思いがなくなるので、苦しい恋愛で自分が幸せでないと思った時
に別れる選択を持てるようになります。
この選択肢を持っておくことは、恋愛をするにおいて、とても大切です。

●救われたい自分を写す鏡●

自分の心の中に、寂しさや、悲しさ、心の傷があり、
誰かに助けてもらいたかった、気付いて欲しかった、愛して欲しかったという
思いがあると、その思いをパートナーに投影することがあります。

パートナーに、助けてもらいたい自分を見てしまうんですね。

例えば、子供時代に、お姉ちゃんだから、お兄ちゃんだから、しっかりしなさ
いなんて言われ、幼い頃からしっかりしないといけないことを求めらるケース
があります。

妹や、弟の年が1、2歳違うだけだと、本当に幼い頃から、しっかり
することを求められるんですね。

そうはいっても、まだ子供、甘えたいこともあれば、妹、弟に親の目がいくこ
とで寂しさを募らせることもあります。
その寂しさに気付いて欲しい、もっと注目して欲しいという心の傷や、満たさ
れぬ思いなどがあると、寂しそうなパートナーを見るとほって置けなくなるん
ですね。

幼い頃、寂しさに気付いてほしかった分だけ、パートナーの寂しさに気付いて
あげたいという気持ちになるし、気付いている人がいることをわからせたいと
欲求がでてくるんですね。
両親に注目されたかったという思いがある分だけ、パートナーにあなたのこと
を見ている人がいるんだよということをわからせたくなるんですね。

それは、パートナーの中に、助けてあげたい幼い自分を見てしまっているんで
す。

助けてもらいたかった、幼い頃の寂しさは抑圧されてしまっていることが多い
ですから、本人が意識せずパートナーにやってしまっていることも少なくありま
せん。

そうなると、パートナーと自分との区別が付きにくくなってしまい、
パートナーとしては、少し一人にしてほしい、ほおっておいて欲しいと思っても、
その気持ちが見えなくなってしまい、自分のニーズ(ここの例えで言うと、わ
かって欲しかった、注目して欲しかったの部分)を相手に押し付けてしまうん
ですね。

すると相手にとっては助けてくれる人どころか、ニーズを押し付けてくる、
しんどい人にしかならなくなってしまうんですよね。
相手の為にと頑張って、しんどい人と思われるのは悲しいことです。

カウンセリングでは、パートナーの中に、救いをもとめている自分、助けたい自
分がいることに気付いてみるとこから始めて、傷ついた思い、助けられたい思
いをサポートしていきます。

そうすると、パートナーと自分の区別がつけれるようになり、
パートナーに自分のニーズを押しつけず、相手をサポートできるようになります。

助けたい自分、助けられたかった自分を癒すことで、
助けたい症候群から解放され、適切な距離で相手と接することができるように
なれるので、恋愛が上手く行くことが多くなります。
なによりも、自分が楽になります。

●最後に●

好きになった人を助けてあげたいと思う気持ち、
それは、愛です。善意です。思いやりです。やさしさです。
それは、とってもいいことです。

これに罪悪感や、失敗感、助けられたい自分を投影してしまう、ことが絡んで
きて助けることに盲目になってしまうことが問題なんですね。

自分の幸せを二の次にして、助けることを目的にしてしまうと問題になって
しまうと思うんです。
そういう時は、自分の幸せを一番にまずおいた上で、相手を助けてあげること
を考えてみてもらいたいなぁと思います。

罪悪感や、失敗感、助けられたい自分がいるという心理と、
純粋に愛や、善意や、思いやり、優しさから、助けたいと思っている心理が、
平行して存在している場合があります。

その時は、自分は罪悪感や、失敗感、助けられたい自分がいるから、
パートナーを助けたいと思っているのか、善意や、思いやり、優しさから、
助けたいと思っているのか分からなくなってしまう人も多いです。

そんな時は、両方の思いがあるんだなぁと思ってみてください。
その上で、失敗感や、罪悪感を解放していくこと、助けてあげたい自分を
助けてあげることにチャレンジしてみてくださいね。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

若年層から熟年層まで、幅広い層に支持されている、人気カウンセラー。 家族関係、恋愛、結婚、離婚、職場関係の問題などの対人関係の分野に高い支持を得る。 東京・名古屋・大阪の各地でカウンセリングや心理学ワークショップを開催。また、カウンセラー育成のトレーナーもしている。