なかなかコミュニケーションが難しいセックスの問題。
今回は代表的な誤解の数々をご紹介いたします。
カウンセリングの中で、必ずと言っても良いほどめぐり合うテーマをそれぞれご紹介しています。
「価値観の違い」「男と女の違い」に続く3回目は『セックスの問題』です。
夫婦やカップルの間で、実は一番多いのがこのセックスの問題なのかもしれません。
セックスレスはもちろん、性の不一致や性癖など、あまり公にできない分だけ、悩みを抱え込みなのもセックスの話題です。
7月に出版した本でも、今度出版される本でもセックスの項目を独立させて作ったように、この問題についてはなかなか相談しにくいところでもあるようで、実は、多くの人が抱えている問題かもしれません。
●女性がよく抱く誤解
セックスの中で一番大きいと言ってもいい誤解を今回は紹介しましょう。
女性が男性にもっとも誤解しやすいのは「男性はセックスが好きだから、私が何度拒絶しても、したくなったら誘ってくるはず」というものです。
セックスレスのカウンセリングの中で、その直接的な要因として良く出てくるものです。
確かに男性はセックスが大好きな人が多いのですが、それを彼女に求めるときの心境というのは、大げさに言えば大好きな女の子に告白するようなものなんですね。
OKならば天にも昇る気持ちになるのですが、NGならば、それこそ、地獄にでも落ちんが如く傷ついたりします。
でも、NGのときでも恥ずかしくて悔しいものの表面上は強がらなければいけませんから、「それならいいよ、君を尊重するよ」なんて言ってみたりします。
それに、男性にとってセックスというのは、感情を解放する数少ない機会になりがちですから、それを拒絶されたということは、自分自身を否定されたように感じてしまうものです。
実際の男性の声を紹介すると
「俺ってやっぱり下手なんだ、と思った」
「魅力的じゃないんやな」
「俺のこと、嫌いになったんじゃないか?」
「他に好きな男でもできたんじゃないか?」
「やっぱ、俺って小さいからあかんのかな」
なんて、女性が聞いたら「え?違うって、そんなんじゃないって」と言いたくなるような受け取り方をしてしまっているものです。
実際は生理だったり、疲れていたり、あるいはたまたま気分が乗らないだけなのですが、男性は案外「地獄に落ちる」ような思いを抱くことも少なく無いんですよね。
だから、女性がセックスを拒むときは、そうした男性の思いに配慮してあげることが大切なんです。
「あなたのせいじゃなくて、こういう理由だからしたくないの」ということを、できるだけその時に伝えてみてください。
それだけで、男性は「あ、俺のせいじゃないんだな」と安心することができます。
これ以外でも「男性はセックスが好きだから・・・」と思って女性が取っている行動って結構多いみたいなんですね。
「え?そういうことで男性って傷つくんですか?」という声を良くお聞きします。
また、女性が思うほどに男性はセックスについての知識や経験が無いこともありますから、一緒に楽しむ姿勢が大切です。
特にセックスに関しては男性も女性も同じくらい繊細な部分を持ちますから、百戦錬磨の彼ならいざ知らず、普通の男性と付き合う場合には、そうした男性の内面にも注目してあげることがとても大切ですね。
●男性がよく抱く誤解
一方、男性が女性に抱く誤解は、「女性はみんなイクものであり、激しく声を出すものである」というものです。
これは明らかにアダルトビデオなどの影響なんですけどね。
ある女性がこんな話をしてくれました。
「わたし、すごくセックスが好きだと思うんですけど、実際エッチしているときって、あんまり声が出せないんですよね。イクときだけ、小さく出るんですけど、とっても気持ちよくてもなかなかビデオみたいな声って出ないんですよ。でも、なかなか彼は分かってくれなくて・・・」
また、別の女性はこんな話をしてくれます。
「わたしってイキにくい方だと思うんですよね。でも、大好きな彼に抱かれてるってだけで、すごく幸せだし、嬉しいの。でも、彼はイカないことをすごく気にしてるようで、早く一つになりたいのに、私がイクまでずっと前戯ばっかりなんです。だから、ときどきは演技してイッた振りしちゃうんです」
性格と同様、その人なりの感じ方、楽しみ方があるものです。
もちろん、感情を解放したり、深い繋がりを得る、という点では、声を出したり、激しく動く方がいいのかもしれませんが、それが普通と思って彼女や奥さんを見てしまうとすれ違いになってしまうことも少なくありません。
愛し方と同じように、あなたのパートナーの感じ方をきちんと見てあげることが大切ですね。
それから、誤解というわけではないのですが、男性は性的な欲求や願望を勝手に抑圧してしまうことも少なくないようです。
「本当はナース服とかコスプレしたいんだけど・・・こんなこと言ったら変態って思われるよなあ、嫌われるかもしれないし、軽蔑されるかも」なんて思ってしまうようです。
でも、色んな女性に調査してみましたんですけど、彼氏や旦那さんから頼まれたら「変態というより、私だって恥ずかしいけど、どうしてもって言われたら・・・ねえ?」なんて答えがほとんどでした。
もちろん、「それはいや!」という奥さんもいらっしゃるでしょうけれど、我慢してしまうくらいならば“頼んでみる”ことも大切では無いでしょうか。
特に性的なコミュニケーションは男性の場合はついつい軽蔑されることを恐れたり、恥ずかしくて我慢してしまうことも少なくないようですが、なかなか女性から切り出すことが難しいことでもありますから、自分から勇気を持ってコミュニケーションしてみると、二人の距離をより近くに感じられるようになりますね。
●どう繋がりを作るのか?
セックスって、秘めた世界であるが故になかなか理解しあえないものでもあるんです。
これにもお互いの形がありますね。
そして、マンネリに陥るとすぐにレスになっちゃうものでもありますし、性的な欲求は我慢すると大きな力になって不和の原因にもなるようですから、恥ずかしさを越えてセックスに関するコミュニケーションを心がける必要があるようです。
セックスレス以外にも、性の不一致や性的嗜好の違いなど、コミュニケーションでじっくり向き合い、解決していける問題も少なくありません。
「性格だから・・・、そういうものだから」と諦めてしまうとそこで関係性は止まってしまいますから、長い目を持って向き合っていきましょうね。
そこでは自分が気持ちいいポイントを伝え合うだけじゃなくて、相手に求めること、相手とのセックスで自分が感じることなども、ちょっと赤裸々なくらい伝えておくと良いでしょう。
そこでは、思い込みを手放して、お互いに理解し合おうという姿勢がとても大切ですね。
(この“思い込み”というのが特に多いですから要注意です!)
もちろん、自分がコミュニケーションをしようと思っても、相手が乗ってこないってこともあります。
セックスの話題はお互いに恥ずかしさが強いジャンルでもありますから尚更です。
そういうときはこういう風に思ってみてください。
「私が向き合うのが怖いのかしら?あるいは、彼が向き合う準備ができていないのかしら?」と。
たぶん、両方正解なんですけどね。
意識的にはOKでも、無意識的にはNGを出していることも日常茶飯事でおきてきます。
(これが、頭では分かっているのになかなかできないこと、です)
だから、まずは「向き合うのが怖いとしたら何でだろう?」って思い巡らせて見ることが大切ですね。
そこではすっかり忘れていたトラウマが引っかかっていることもあります。
(特にセックスに関するカウンセリングでは、バージンブレイク時の影響や、性的ないたずら、痴漢、両親のセックスなどの潜在的な影響が少なからずあるようです)
また、パートナーに向き合う準備ができていないとしたら、その時期を待ってあげることも大切ですよね。
ここでは“忍耐”を学ぶことができます。
自分はただ、大手を広げて待っている、そして、彼がその気になったらいつでもOKな状態にしてあげることです。
これはね、とても辛い感情を伴うことも少ないので、誰か(友達、家族、カウンセラー)のサポートを受けながらの方が安全かもしれませんね。
●まとめに
今回3回にわたってお送りしてきましたが、結婚というのは本格的なスタート地点で、お互い避けられない衝突がありますよ、というお話でした。
なかなか分かり合えなかったり、自分の思い込みが強すぎてすれ違ってしまうところがたくさんありますから、自分自身を見つめ、パートナーを見つめ、そして、二人で創り上げていく、という意識がとても大切では無いでしょうか。
「幸せなつもり」「コミュニケーションが取れているはず」「分かってくれていると思ってた」などの誤解や期待がたくさん出てくるところでもありますから、“つもり”を手放して、きちんと確信できるように常に二人の関係を見つめていこうと思ってみてください。
そういう意味では結婚というのは長い時間をかけて作り上げていく一つの芸術のようなものかもしれません。
よく離婚や浮気、セックスレスなどカウンセリングで扱うときには、少し厳しい言い方ですが、こういう表現を良くしています。
「望まなかったこととはいえ、これが二人で作り上げてきた一つの結果ですから、きちんとまずは受け入れていくことからはじめてみましょう」と。
パートナーシップというのはそういう意味では一つの“作品”なんて意識を持つとまた関わり方が新鮮かもしれないですね。
そして、その衝突を乗り越えたところにあるものは、本当に気持ちいいロマンスのステージがやってきます。
本当に信頼しあえて、分かり合える、そんなステージがやってくるものです。
「ああ、この人なんだな・・・」
と深く実感できることも少なくありません。
それは問題を乗り越えたところに初めて味わえる感動のようなものかもしれませんから、前向きにチャレンジしていきましょうね。
ですから、その一歩をまずは自分から踏み出してみようと思ってくださいね。