辛い気持ちを感じることも多い遠距離恋愛や障害のある恋愛。
その心理と対処方法をご紹介。
カウンセリングをしていると遠距離恋愛の難しさを痛感することが多いですね。
それが、結婚という形で成就しても、成就しなくても。
実際の距離が離れていなくても、障害があったりして、なかなかうまく行かないときには、心は遠恋モードになっています。
現実に遠距離恋愛をされていなくても、何か彼との心の距離を感じるときには、この講座を参考にしてみて下さいね。
●感情的な影響
元々近距離で付き合っていた二人が、仕事や家庭の都合で遠距離になってしまうケースは今の時代とても多いですよね。
また、ネットを通じて知り合って、そのまま遠距離恋愛が始まるケースも最近は多いようです。
うちの奥さんもかつては日米で遠距離恋愛をしていましたから、その辛さは以前から耳にしていました。
例えば、
寂しい気持ち。
甘えたいときに甘えられない、会いたいときに会えない不都合さ。
浮気しているんじゃないか?気持ちが冷めたんじゃないか?という不安。
誤解を解く難しさ。
ちょっとしたすれ違いが大きな溝を作ってしまう危険性。
だから、気持ちを抑えてしまうことも良くありますね。
そして、いつしか、電話やメールは毎日のように行き交っていても、彼が近くに居ないことが当たり前の生活になっていきます。
寂しいからちょっとつまみ食いをしてしまったり、逆にその危険性を感じて、異性を近づけないように禁欲的になってみたり。
特に性的な欲求については、色々な問題を生み出して来るようです。
感じないように感じないように無意識的に抑圧してしまう方もいれば、逆に色々な男性と関係を持ってしまったり、ステディなセクフレをキープしてしまったり。
男性も同じですね。風俗を使う人も多いみたいですけど。
そうして段々と二人の心理的な距離も実距離とイコールになっていくようです。
●成就しても・・・
そんな二人が晴れて結婚となったり、あるいは再び近い距離で付き合えるようになると、お互い意識的にはすごく嬉しいんですが、困ったことも出てきます。
なぜかというと「彼氏」=「なかなか会えない人」ですから、彼がいなくても元気に生活できるように頑張った結果、逆に毎日彼がいる生活に馴染めないようになってしまうんです。
すなわち、毎週土日は女の子の友達と遊んでいたり、習い事をしたり、趣味を楽しんだり、と彼に会わなくても寂しくないようにしてきたので、彼が近くに来ても、友達や趣味などをそう簡単に手放せない状況になってしまいますね。
だから、やっぱり土日のうちの片方は趣味や友達との時間に費やしたくなったりします。
これは平日、仕事が終わった後の過ごし方にしても同じですね。
時には友達と遊びに行ったり、また、家でゆっくり自分の好きなことをしながら過ごす癖がついていますから、なかなかそれを変えることがしんどかったりします。
この状況は、ちょうど彼氏がいないときと同じなんですけど、なかなか会えない寂しさなどを我慢しながら、頑張って頑張って見つけた楽しみの時間なわけですから、そこに執着のようなこだわりを感じてしまうんです。
同時に遠距離では誤解やすれ違いがあると埋めにくいから、自然とお互いの違いや欠点には目をつぶるようになって、表面的にうまく仲良くやることに意識を向けるようになりますね。
「せっかく久しぶりに会ったんだから楽しまなきゃ」という気持ち。
それがお互いの距離が近くと目を背けることが難しい状況になったり、ちょっとしたすれ違いが生じたときに、それを埋める術を知らなかったり、変に気を使うようになったり、束縛を感じたりするようにもなりますね。
今まで寂しさはあれど、自由があった分、そういった変化にすごく繊細になるんです。
先日も、遠距離恋愛を数年経て結婚された奥さんをカウンセリングしたのですが、結婚して、一緒に住み始めた途端、お互い居心地が悪くなって一緒にいられなくなって、しばらく別居するようになってしまった方もいらっしゃいました。
彼女いわく「なんだか、気持ち悪いというか、落ち着かない、というか。それでしばらく近くに住むことで慣らしていこう、ということになったんです」
●別れてしまったら・・・
残念ながら成就せずに別れることになってしまった場合は、今度はなかなか恋愛モードから抜け出せない現実を迎えることが多いようです。
つまり、彼と別れたとしても、メールや電話を毎日交わすことが無くなった以外は日常生活ではほとんど影響がないんですね。
会社に行けばいつもどおりだし、アフター5や週末の予定も、今までと変わりなく埋めることができます。
ケータイやPCのメールボックスを開いたり、彼といつも会う予定だった月イチの週末の予定を感じると、やるせなくて、寂しく、虚しい感じはするんですけど、それ以外は至って変化がないんですよね。
そうすると、別れたんだけど、心はまだお付き合いを続けているような感覚が残ってしまうわけです。
特に仕事が忙しくて、なかなか連絡を取り合ったり、会う機会が少なかったり、また、自分が彼以外に熱中できる何かを持っていたりした場合には尚更に。
そうすると、次の彼を見つけようと思うと何だか浮気相手を探しているような感覚に襲われたり、実際にお付き合いを始めても、別れた彼を裏切っているような感覚になったり、はたまた「本当は別れてなんかいなくて、すぐにでも電話してOK」のような気がしたり。
つまりは、なかなか別れたことを受け入れられなくなったりするんです。
だから、カウンセリングの場面でも、彼を手放すことがとっても難しくなります。
ある女性は「彼を忘れようと思えば思うほど、別れたような気持ちがしなくなる」とおっしゃって面談にいらっしゃいました。
だから、僕は彼と向き合い手放していくセッションをした後に、彼女にこう提案したんです。
「ちょっと遠い(京都~埼玉)けど、近いうちに彼のところに行って、そこで、思い切り振られて来てみたらどう?傷ついて帰ってきたら、とことん付き合うから、またここで思い切り泣けばいいしね」と。
そして、彼女は実際にその翌日に行ってくれました。
ただ振られるために。
その次の週に会ったとき、彼女はこんなことを話してくれました。
「彼も誠実に話をしてくれたし、私もそんな態度に心を打たれて感謝の気持ちを伝えることができて、すごく辛かったけれど、普通の失恋をしたような気持ちで新幹線に乗れたんです。そしたら、京都に着く頃にはすっきりしてしまったんですよ」と。
遠距離恋愛がちょっとだけ、普通の距離の恋愛に変わったみたいです。
●心理的な背景
遠距離恋愛が成就するとなぜ居心地が悪いのか?
遠距離恋愛が破局を迎えるとなぜ手放すことが難しいのか?
感情的な抑圧や、日常的な側面からお話をしてきたんですけど、もう一つ心理的に見逃せない大きな要因があります。
それは感情の抑圧や日常を楽しむためにも一役買っていた“心の中の彼氏”の存在なんです。
実際の彼は遠くにいます。
でも、いつも彼を感じていたいと思うものだから、自分の心の中にその彼氏をコピーするんですね。
笑顔とか、言葉遣いとか、声とか、セックスの癖とか。
そして、いつも、その心の中の彼と一緒にいるような感覚を作り上げるんです。
最初は思い出もリアルだから、彼の存在が丸ごと心の中にコピーされます。
でも、時間が経つに連れて、その姿は自分の理想的な姿にデフォルメされていくんです。
そして、その心の中の彼といつも一緒にいるようになります。
例えば、仕事で上司に小言を言われたとき、トイレで泣きながら、その心の中の彼氏に慰めてもらいます。
そして、夜、心の中の彼におやすみのキスをしてもらって安心して眠りに就きます。
性的な欲求が高まったときも、彼の愛し方を想像しながら一人エッチをしたりします。
まあ、実際はここまでリアルではないかもしれないけれどね。
そうすると、実際の彼が近くにいるようになると、その心の中の彼と、現実との彼の違いに戸惑うわけです。
会社で嫌なことがあって彼にそれを聞いてもらおうとすると、心の中の彼は優しく話を聴いてくれるのに、現実の彼は「あ、そう。そんなのお前が悪いじゃん」とか冷たくあしらったりします。
そしたら、現実の彼を指差して「違う!この人、私の彼氏なんかじゃない!」と言いたくなったりしてしまうかもしれません。
一方、残念ながら別れてしまったとしても、心の中の彼氏はそのまま残りますから、別れたような気がしないばかりか、新しい彼を作ることに罪悪感を覚えるようになったりするんです。
また、遠距離恋愛が進行中の場合にも、電話や実際会ったときの彼の態度に「何か違う」という違和感を感じることも少なくないかもしれません。
ただ、進行中の場合は、揉め事を起こしたら大切な時間が台無しになってしまいますから、気付かない振りをしてしまうものですけどね。
ですから、遠距離恋愛に関する問題をカウンセリングする場合は、僕自身、この心の中の彼の存在にとても注目していくんです。
だから、実際に別れた後は彼に会うことをお勧めしますし、進行中の場合や成就された場合には、現実の彼と、心の中の彼の姿をきちんと認識できるようにお話を進めていきます。
時には自分自身でも気付けないくらいに巧妙に作り上げた心の中の彼ですから、その存在に気付いたときには「うそ。今まで私は誰を愛してたんだろう?誰のために一生懸命頑張ってきたんだろう?」って頭が真っ白になられる方も少なくないですね。
●どうしたらもっとうまくいくのだろう?
遠距離恋愛を上手に乗り越えると、より強い絆を創ることに成功します。
離れていても心は繋がっているような存在ですから、強い信頼で結ばれます。
それは、本当に捜し求めていた存在に会えたような深い感動を強くもたらしてくれるものですね。
そんな状況を作るために基本となるのは、本当の気持ちを伝え合うコミュニケーションと「彼を愛する!」という強いコミットメントではないかと思うんです。
日常では我慢することも多いですから、会っているとき、電話やメールのやり取りで、お互いに本当の気持ちを伝え合う姿勢が何よりも大切です。
そして、彼に愛される自分に注目するのではなく、彼を愛する、という積極的な姿勢も求められるものです。
そして、もう一つは寂しさや不安を感じる自分と常に向き合い続けること。
これは自分をより強くするとてもいいトレーニングになるでしょう。
我慢している自分、寂しい自分、不安な自分をどう押さえ込むか?ではなく、
また、そんな感情をどう感じないようにするか?ではなく、
ただ、その当たり前の感情に向き合い続けることが大切です。
どんな感情も感じていれば変わって行きますし、ネガティブな感情も自分の心との繋がりを深めるにつれて、安心感や自信を手に入れることができるようになります。
そうした経験を面談などを通じて体験された方の中には、
「状況は全く変わってないのに、なぜか楽しいし、安心している自分がいるんです」
とおっしゃってくださる方がすごく多いんです。
僕はそのとき「感情ってね、そういうものなんですよ」ってお伝えするんですけどね。
我慢してしまうと先にお話したような状況になってしまうものですから、特に強調したいポイントです。
そうすると自分の心との付き合い方が本当に上手になっていきますから、これは人間的にすごく成長することができます。
普通の近距離での恋愛でも同じことが言えるんですけど、遠距離の場合はより自分と向き合う時間が長い分、その成長の度合いも大きいようです。
自分の心が感じていること、そして、現実の彼の存在。
どちらも大切にしながら、素敵な恋を楽しんでいただけたら、と思ってます。