自立の掟

こんにちは 平です。

人生経験がまだ少ないころの私たちは、親以外に「自分を満たしてくれる人がきっといるはずだ」と期待をしますが、その期待に裏切られると傷つきます。

そのときからだんだんと自立をはじめ、もう二度と傷つかないようにと、「信じられるのは自分だけだ」、「傷つかずに生きていくためには、人を信頼しないことだ」などと考え、人によっては、一人で生きていくという選択をします。

たしかに、一人で生きているかぎり、あなたは人に合わせたり、自分の時間を邪魔されたりということはないでしょう。そして、それが、あなたが考えるところの人に煩わされない生き方であるわけです。

それは一見、とても安全な生き方のように思えますが、じつは一つの問題点があるのです。

あなた自身の狭い範囲の中でのよろこびしか味わうことができないということです。

どういうことかというと、あなたにとっては不利益といえることかもしれないのですが、なにかすることで相手がよろこぶなら、心おきなくそれをしてあげる。すると、それがあなたのよろこびになるという生き方がそこにはないということです。

たとえば、私は月に1回ほど、東京で暮らす娘とデートをしますが、会えばウマいものを食べさせてやりたくなるわけです。

すると、私のお小遣いは減りますよね。が、そのデメリット以上に、ご馳走したいという気持ちが勝るわけです。娘のよろこぶ顔を見て、私もうれしくなるからです。

あるいは、あなたがペットを飼っているとします。ペットを飼えば、エサ代がいりますし、トイレ掃除もしてやらなければなりません。

病気になれば、人間以上に高額の医療費がかかることもありますし、そのペットのために、長期の旅行ができなくなったかもしれません。

でも、飼い主のあなたには、そのすべてが許容できるわけです。

デメリットと思えることがあっても、ペットがそれ以上に大きなよろこびを与えてくれるからこそ、飼っているわけですからね。

あなたが自立的なタイプであり、パートナーに自分一人のよろこびを壊されたくないと考えているとしたら、あなたはパートナーを「私を邪魔する人」という概念で捉えていることになります。

では、なぜ、そう思うのか? それは、まったく逆説的なのですが、じつはあなたの深層心理で、あなた自身が「自分は人をよろこばすことができない」と思っていることをあらわします。

自分が人をよろこばすことができないように、「この世の中には、オレ様をよろこばせられる人なんて、存在していない」と思っているわけです。

さらに踏み込んでみると、「オレ様がだれもよろこばせることができないのに、まわりの人がみなオレ様をよろこばせることができる」とは思いたくないとも思っています。

というのも、もしも、その通りだったら、「オレ様」はいったいどんな感情を抱くでしょうか? そう、コンプレックスです。

みんなに比べ、自分は劣っているという思いが湧いてきてしまいますよね。

そのコンプレックスを感じずにすむように、「オレ様と同じぐらい、まわりの人たちにも自分にとって役に立たずにいてもらわないと困る」ということになるわけです。

心理学には“自己重要性”という法則があります。私たちはたえずだれかの役に立ちたいと考えていて、それを実感することで自分の心を満たすことができるというものです。しかし、いま、「オレ様」はその実感をまったく感じることができずにいるわけです。

一見、自立タイプに見えて、だれともおつきあいしない人、だれにも私の世界には入ってきてもらいたくないと思っている人には、この「オレ様」のようなタイプが少なくありません。

そして、その深層心理には、「だれもよろこばせることができない自分は、だれからもよろこばせてもらう価値がない」という思いが潜んでいるようです。

もちろん、それは誤解なのですが、自立タイプの人の多くは、その誤解を真実だと思ってしまいがちなのです。

 

では、次回の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。