心の旅路

こんにちは 平です。

ご主人が単身赴任しているご夫婦を対象としたちょっとおもしろいリサーチがあります。

それは、ご主人が週末に赴任先から帰ってきたり、お盆やお正月の休みに帰省したりしたとき、夫婦ゲンカをすることがあるとしたら、どんなタイミングが多いですか、というものです。

そのアンケートでいちばん多いお答えが、「ご主人が単身赴任先に帰る前の夜」というものです。

たとえば、金曜日の夜に帰宅して、月曜日の朝一番で赴任地に戻るという場合、日曜日の夜にケンカする確率がもっとも高いということですね。

あるいは、日曜日の夜に赴任地に戻る場合は、その日のお昼ごろにケンカすることが多いようです。また、年末年始に5日間帰宅していたとしたら、4日目の夜に大きな夫婦ゲンカが起こりやすいということもわかりました。

心理学的に見ると、このケンカのベースには、「一緒にいてラブラブな気分のまま、だんなさまが赴任地に戻ってしまうのは、切なくて、つらくてしょうがない」という奥さまの心情がありそうです。

つまり、ラブラブのままでは離れがたいので、ケンカでもして、「あんたみたいなどうしようもない男は、どこにでもとっとと行きなさいよ!」としなければならないのです。

ご主人を「つまらない男」にすることで、別れが淋しくないようにしようとしているようなのですね。

そして、じつは単身赴任のご夫婦にかぎらず、男女関係における“別れ”の場面で私たちはこの手をよく使います。

みなさんのなかにも、「あんなヤツ、男のクズ、女の敵よ!」、「最低の男だった!」などと、別れた彼氏のことをこき下ろした経験のある人は多いのではないでしょうか。

だって、最低にしなければいけないからです。あなたにとって、最高の男で最愛の人だったからこそ、最低のクズ男にしようとするのです。

最高のままでは手放すのがつらすぎますからね。

これと同じようなパターンは、私たちは反抗期にも経験してきました。

思春期、私たちは親に向かって「子ども扱いするなよ!」とか「もう、ガキじゃねえ!」などとつっぱって言ったりしますよね。

なぜなら、親を嫌い、遠ざけないと、ついつい甘えたり、頼ったりしてしまいそうだからです。すると、いつまでも自分は自立できないと感じるからこそ、反発し、離れようとするわけです。

なかには、親と二度と家に帰れないほどの大喧嘩をして、「こんな家、出ていってやる!」と実家を離れるケースもあるほどです。ここにも、二度と帰れないようにしておかないと、自分はいつまでたっても甘えてばかりで、この家から出られないという心理学的な力学が働いているわけです。

このとき、心が感じていることと、私たちがしていることはまったく違うわけです。

別れた彼であれ、両親であれ、ほんとうはとても執着があり、ずっと一緒にいたい、甘えていたいと思っています。が、自分の感情に嘘をつき、「最低の男!」だとか「こんな家、クソだ!」とか心にもないことを言っているのですね。

感じていることと、していることが分離しているわけです。それゆえ、そんなときのあなたは、とてもいやな気分になっています。

人は自分に自信もち、自立ができるようになると、ネガティブな感情と向きあい、その感情を受け止めることができるようになっていきます。

すると、自分に嘘をついたり、無理をするような場面も減り、自分が傷ついたり、人を傷つけたりすることもなくなっていきます。

心がほんとに感じていることに向き合うというのはとても難しいものです。

しかし、それらをごまかしながら生きていると、自分はいったい、ほんとうはなにを感じているのだろうということもわからなくなり、自分を見失い、迷子のようになってしまいます。

愛しているのか、憎んでいるのかさえ、さっぱりわからなくなってしまったりするのですね。そして、愛を拒絶することばかりしいると、この世界には愛がないように思えてしまったりするのです。

「じぶんが、いま、ほんとうに感じている感情はどんなものなのだろうか?」

そんな探究心をもつことができれば、その感情がどのようなものであれ、それを受け止めることができるようになってきます。

そして、そこからあなたの心の旅路がひもとかれ、もう一度、あなたのルーツへと‥‥愛があった場所へと、あなたはたどり着くことができるようです。

 

では、次回の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。