こんにちは、平です。
彼女は二人姉妹の妹でした。
彼女のおかあさんはとても家庭的なタイプで、家事全般が得意で、お料理も相当な腕前だったようです。
彼女のおねえさんは彼女と4つ違い。お母さんに似たタイプで、彼女が中学生のころ、高校生になっていたおねえさんは家事全般をそつなくこなし、おかあさんの右腕になれるほどのレベルだったようです。
こんなおかあさんとおねえさんがいるわけですから、家庭では彼女の出る幕はなく、どころか、その二人におんぶに抱っこの状態で彼女は成長していったわけです。
おねえさんは、彼女が24歳のときに28歳で結婚。そして、「次は彼女の番」という目でまわりから見られるようになったころから、彼女の問題が起こりはじめたのです。
つまり、彼女には、自分が結婚できるとは、まったくもって思えなかったのです。
そして、カウンセリングを受けにおみえになったわけですが、彼女の心の奥にはこんな強い思い込みがあったわけです。
「女性というものは、おかあさんやおねえさんのように、家事が完ぺきにできるのがあたりまえで、もちろん、結婚したら、あのおかあさんやおねえさんのようにならなければならない。なのに、いまの自分ときたら、家事なんてなに一つまともにできない‥‥」
もちろん、彼女なりにチャレンジはしてきたわけですが、料理にしても掃除にしても洗濯にしても、やればやるほど、おかあさんやおねえさんとの違いがわかり、コンプレックスしか感じられないわけです。
そして、その家事について感じていたコンプレックスが、しだいに自分が女性としてすごく劣っているというコンプレックスにまで膨らんでいってしまったのです。
彼女はたしかに家事は苦手なのかもしれませんが、おかあさんやおねえさんから見れば、とてもかわいい娘であり妹でした。客観的に見ても、とてもチャーミングで、どちらかというとモテるタイプの女性で、コンプレックスを感じる必要などなに一つありません。
ところが、「自分はなにもできない」という思い込みがとにかく強いわけです。
カウンセリングの一般論いえば、きょうだいの末っ子というのは、大なり小なり、家族の中で「自分はなにもできない」というポジションにいるので、コンプレックスを感じることは非常に多いものです。
彼女はじつは、英語の検定資格とか、いい学歴とか、素晴らしいキャリアとか、いろいろなものをもっているのですが、そんなことよりも、「いちばん大事なのは家事の能力」ということで、それによってすべての自分の価値を決めてしまっていたのです。
彼女のお友だちは、みんな、こう言ったそうです。「だったら、家事ができる男子とつきあえばいいじゃん」。
しかし、彼女にとって、それはさらなる屈辱にしかならなかったようです。
大好きな彼のように家事ができるようになりたいとしたら、そのレベルアップをはかればよいわけですが、コンプレックスが強すぎていたために、それに向かい合う勇気もありませんでした。
彼女がこのコンプレックスを克服できたのは、たまたま町のペットショップで売れ残りの犬に出会ったのがきっかけでした。もともとは3万円だった値札が6,000円にまで値下げされていたその犬を、彼女は飼うことにしました。
この犬は、人になつくのではなく、人を恐がる犬でした。つまり、かわいげがなかったわけです。彼女はこの犬に自分を投影し、このなにもできない犬らしくない犬を好きになることにより、初めて、「こんな私でも好きになってくれる人がいるかも」という目で人生を見られるようになったのです。
結果、それからしばらく経って、いまのだんなさまに見初められたそうですが、そのだんなさまの「きみがそのワンちゃんを好きなように、ぼくがきみを好きになっちゃいけないのかい?」というセリフが彼女のハートに響いたのだそうです。
では、次回の恋愛心理学もお楽しみに!!