隠れた欲求

人の心とは不思議なもので、頭では「そんなバカな‥‥!」と思うことでも、心の世界ではものすごく素晴らしいアイデアに感じられ、そして、滑稽にもそれを実行しているということはよくあります。

「人を好きになりすぎると、ふられたときにものすごく傷つく。だから、あまり傷つかないですむように、それほど好きにはならない人とつきあおう」というのもその一つです。

考えてみれば、それほど好きにならない人とおつきあいして、楽しいのでしょうか? もっというならば、それはそもそも恋愛といえるのでしょうか?

男性がキャバクラなどに遊びにいったり、女性のみなさんがホストクラブに遊びにいったりするのも、これとちょっと似ています。

これは、いうなれば、「自分はお客さんである」という立場をお金で買い、「お客さんだから、ぜったい大事にしてね。ぜったい愛してね」と言っているようなものですよね。

きょうも銀座などでは、「悪徳商事の平です。はじめまして。これ、名刺代わりに100万円」などと札ビラを切って、女の子を口説いている人がいるやもしれません。

そして、「きみ、ニューフェイス? かわいいね。きみには特別に300万円。フフ」と、気前のよいところを見せた悪徳商事の平さん、そのあと、おもむろにこう言うわけです。

「そのかわり、きみも子どもじゃないんだから、わかってるよね。きょうはアフター、つきあってよね」

しかし、この平さんが嵐の松潤だったとしたら、女の子を口説くのに300万円も払うでしょうか‥‥?

払いませんよね。つまり、自分に自信がない度合いだけ、お金を積み上げているわけです。恐れと不安を、お金によってコントロールしようとしているようなものなのです。

ということは、お金を積み上げる時点で、もう、「私はタダではきっとだれにも愛してもらえないでしょう」と思っていることになります。

実際、私たち人間は、「自分はけっして誰にも愛されない」と思い込んでいる‥‥、いや、宗教のように信じ込んでいることがほんとうに多いのです。

ほかにも、人にはすっかり愛想がつきて、「ペットは私を裏切らない」と犬や猫にばかり愛情を注いでいる人もしばしばいます。

ペットを飼うのはもちろん悪いことではありません。が、「ペットしか私を愛してくれない。人間じゃ無理」と思い込んでいらっしゃるのだとしたら、それは淋しいことですね。

こと恋愛について、私たちは「深く人を愛しすぎると、傷つくことになる」という信念を持っているようです。

でも、違う角度から見てみると、「それほど好きな人に出会えるということは、ものすごく幸せなこと」であるはずです。

そして、それほど好きになれる相手が、あなたが思っているように、あなたのことを激しく傷つけるのでしょうか?

心理学で“好意の返報性”というのですが、人は自分を好きになってくれる相手に好意をもつと言われています。

たとえば、アイドル・グループが「いちばん大事なものはファンです」といい、「ファンのために」と自分の人生を捧げるほど、ファンを大事にしたりするのも同じ意味でしょう。

それは、もちろん、恋愛も同じです。

ただし、あなたはその大好きな人に対し、「私は人生を掛けて、あなたを愛している。だから、あなたも人生を掛けて、私を一生、面倒見なさいよ」などと思ったりはしていないでしょうか。

もし、そうだとしたら、パートナーはあなたに愛されているというよりも、強迫されているように感じてしまいます。

「奪うために愛する」という表現があります。「あなたにはどんなことでもしてあげるわ。もし、これさえくれるなら」というかんじの恋愛です。

この場合、「もらえないもの」ができた瞬間、あなたは激昂してしまうでしょう。「こんなにしてあげたのに、すべては無駄だったのね!」、と。

つまり、あなたが激しく傷つくようなことがあったとしたら、それは相手をコントロールしようという意図があり、思うようにいかなかったときなのかもしれません。

そして、傷つくような出来事はいつも、あなたの隠れた欲求がなんなのかを教えてくれるようですよ。

 

では、次回の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。