長年、いろいろな方の恋愛相談をおうかがいしていますが、私どもにご相談にいらっしゃる機会がもっとも少ないのが、「恋愛についてはもうあきらめていますから、ほうっておいてください」というタイプの方々です。
それぞれの理由があって、パートナーシップをあきらめていらっしゃるわけですが、独身で過ごしながらも、家族の代わりにペットに囲まれていたり、素晴らしい友情を感じあえる仲間とともに人生を楽しんでいたりと、心豊かに過ごしている人たちもたくさんいらっしゃいます。
そこにはなんの問題もありませんし、もちろん、パートナーシップだけがこの世の中で素晴らしいものであると言うつもりもまったくありません。
しかし、もしも、本人の心はパートナーシップを求めていながらも、なんらかの思い違いや誤解から、「自分にはパートナーなぞ必要ない」と思い込み、パートナーシップに背を向けているのだとしたら、それは悲劇かもしれません。
昔、4人兄妹の末っ子で、ぽっちゃりとしていて、性格がかわいらしいお嬢さんがいらっしゃいました。
いちばん上がおにいさんで、下の3人が女性という兄妹でした。
彼女は末っ子ということもあり、とてもかわいがられて育ったそうです。
その彼女がつねに思っていたのが、「おにいちゃんやおねえちゃんに比べ、私はなにもできない」ということでした。そして、いつしか、「おにいちゃん、おねえちゃんは優秀なのに、私にはなんの取り柄もない」と自分のことを評価するようになっていたのです。
その思い込みが強まるにつれ、彼女は自信もどんどん失っていき、人といっしょにいると、ひどく緊張してしまうようになってしまいました。
その相手が男性で、まして、カッコよかったりしたら、もうたいへん。
アガッてしまい、会話もどもってうまくできなくなるほどでした。
もともと、女友だちといっしょにいるときは、陽気にはしゃぐ彼女なのです。が、そこに一人でも年ごろの男性が入ると、ものすごく緊張してしまい、彼女曰く、「暗くて、陰気で、まったく楽しそうでなくて、“いないほうがマシ”というかんじの自分になっちゃう」そうなのです。
さらに彼女は自分のぽっちゃりとした体型にもコンプレックスをもっていました。そして、そんな自分が男性から愛されるなどとは、彼女にはまったく思えなかったのです。
それで、もういっそ、恋愛や結婚というものはあきらめることにしようと彼女は決めたのです。
パートナーがいたら‥‥ということはつい考えてしまいますし、考えれば考えるほど苦しくなってしまうからです。
というわけで、そのとおりでいけば、彼女は結婚することなく、一生を終えたのかもしれません。
が、ことのきっかけは、彼女がよく行っていた近所のスーパーのおばさんでした。
店に来るときはいつも陽気で明るい彼女に、「お見合いでもすすめてみたいわ」とおばさんは思っていました。
そこへ、彼女同様、すごくシャイな息子をもつおばさんの友だちが、「うちの息子に、だれか陽気で明るいお嫁さんはいないかしら?」と相談をもちかけたのです。
もちろん、おばさんの頭にいの一番に浮かんだお嫁さん候補が、彼女でした。
おばさんから話をもちかけられた彼女は、まったくその気がなかったので体よくお断りしました。
しかしながら、ちょっぴりうれしかったこともあり、お友だちにその話をしてみたのです。
すると、なんと、そのお友だちは彼女が断った相手の知り合いだったのです。そして、その相手の人がとても残念がっていたという話を聞いていたので、彼女にそれを話してくれました。
びっくりしたのは彼女のほうで、「なぜ、私のような者のことで、そんなに残念がってくれるんだろう?」とよくわからなかったそうです。
前述の通り、彼女は男性の前だとアガッてしまい、まったくもってダメなのですが、女性どうし、とりわけ年上のおばさんと話すときは、とても陽気で明るくて、評判もすごくいいわけです。
そして、それが男女関係において、どれほどポイントの高いことなのかを彼女はまったく理解していなかったのです。
簡単にいえば、彼女は“おばさんうけ”がすごくいい女性であり、今回の場合は、お見合い相手の“おかあさんうけ”がとてもよかったわけです。
ともあれ、お友だちのすすめもあり、彼女は「いったんは断ったけど、そんなに私のことを評価してくれるのなら、一度ぐらい会ってみてもいいかな‥‥」と、お見合いをすることになりました。
その結果、誠実な彼に彼女も恋をし、もともと恋愛経験がなかった彼女は彼にどんどんのめりこんでいき、ハッピーエンドを迎えたわけです。
人間、自分の評価というのは意外とできないものです。
だから、自分の評価は自分ではせず、人に委ねることがとても大事といえそうですよ。
では、次回の恋愛心理学もお楽しみに!!